挑戦その二
榊 薫
第1話
新たに開発した、「中身の優れた"あっ"と驚く商品」に興味を示した会社に行って説明を始めました。
「そんなことあらすか?」
説明の会話で、アラスカが出てくれば、名古屋弁だと気づきます。
「ずっこい東京じんが、いらんことしい、とろくせぁ。」
こうなると、「ほかすことになる」のですが、
地元の人にバトンタッチして売り込んでもらわないと中身が伝わらないようです。
ところが、地元の人が説明しても同席した現場担当者が説明書をろくに読まないことに気づきました。
説明文が長いとうんざりして読まないようです。最近は新聞もとらない人が増えているため、文字に接する機会が減っているためかもしれません。
そこで、文章を短くなるようにしてみました。
主語、動詞、修飾語をできるだけ短くしても、
手順や注意事項が何項目にも及ぶと読まないで、すぐに横を向いてしまいます。
項目数を減らすと、新規な内容が伝わりません。
何処かの祭典ガイドブックや記録集を手掛けた出版社会長のように、おもてなしの仕方を心得ていれば便宜を図ってもらえるのかもしれません。
しかし、おもてなしの小判の手土産なしでは、お手上げでスゴスゴと退散するしかありません。
「人に七癖我が身に八癖」と申しますが、とっつきにくい人の典型は、不愛想、高飛車、自尊心の高い人。誰しも、自分の人生では自分こそが正しいと信じているものです。
もちろん企画部長の場合も同様で、部下に愛想が悪く、高慢ちきでブライドを鼻にかけ、自分の価値観を他人に押し付けるような近寄りがたい人でした。
従業員の多くは、仕事の不満を口にせず日常的な流れに従順に黙々と対応しているだけした。
品質管理部長は仕事を右から左に聞き流すことのうまい人でした。
一方、上司の決定事項どおり実行すべき現場担当者は、今までやってきた手順を急に変更するよう指示を出した企画部長の議論のトーンやアプローチにカチンときて、その奥にある肝心要のメッセージや課題に応えることなく、企画部長に感情的に反発することだけを考えていました。
そのため、企画部長の議論のトーンが過激なときだけ反応し、しぶしぶ作業していました。
数ヶ月経って、話を持ち込んだ企画部長が退職し、新たな企画部長に交代しました。
前の企画部長から「後をよろしく頼む」という知らせを受けてその会社に商品説明に伺いした。
するとどうでしょう、品質管理部長が「話が面白いので聞かせてくれ。」とやって来ました。
今までとは異なり、新規な商品の効果が安価に発揮できる方法を提案してきたではありませんか。
どうやら、品質管理部長と現場担当者が現場で今までやって来た苦労を前任企画部長はろくに聞かず、頭ごなしに指図していたことに反発して振舞っていたようでした。
品質管理部長が乗り気になったことから、現場担当者の商品に向かう態度が一変し、細かな手順に質問するようになりました。
模擬的な導入試験を行い、本番にこぎつけた結果、経費が半減し、作業時間も短縮出来ました。
「どえりゃーもんだガャ」。
挑戦その二 榊 薫 @kawagutiMTT
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