勇者に蘇るって言って死んだら本当に蘇った件

五平太

第1話勇者に蘇るって言ったら本当に蘇った馬鹿


 とある血で赤く染まった草原で2つの影が激闘を繰り広げていた


「ぐうっ……」


 その内の1つの狼の様な意匠が施された東風の狼のを着た何かが2メートル近くにある大剣を地面に突き刺し膝を着いていた


「…これで終わりだ!刃狼バルカンッ!!!」


 もう一方の好青年が輝く剣をその鎧男…いや…魔王の右腕であるバルカン目掛け振り下ろす


「ほざけッ!!!私に勝てるとでも思うかっ!!」


「勝てるさっ!」


 瞬時に大剣を地面から引き抜き少年の剣を受け止めるが余りに強い一撃なのか地面が没む


「グラァァァアァァァ!!!」


 少年の足から黒いドロリとしたモノが現れ勇者を包み込もうとする


「俺には仲間がいるッ!!!」


勇者は素早く足元を輝く剣…聖剣で斬り裂くとバルカンはその隙を狙い大剣を振り下ろす

 勇者は大剣を受け流しカウンターでバルカンを袈裟に斬り裂き追撃するように背後に回り聖剣で心臓を貫く


「ガッ…ハッ…」


「バルカン…強かったよお前は…」


勇者は独り呟くそれに反応するように荒い呼吸をしながら勇者に


「だ、たが…私に此処まで苦戦するようでは…魔王様に勝とうなど夢のまた夢だ…」


「……今は勝てなくても…俺には仲間がいる…だから勝てるさ…」


 勇者は聖剣をバルカンから引き抜くと

バルカンの身体はそのまま地面に崩れ落ちる


「私は滅びん…魔王様が其処にある限り……再び私は蘇る…覚えておけ…勇者…」


そして魔王の右腕…バルカンの身体は粒子となり消滅した……



◆◆◆



(負けた…負けたのか…私は…)


 バルカンは体が粒子となり消えて行く中心の中でそう呟く


(……魔王様………)


バルカンは自身が敬愛する偉大なる主を想う


(すみません……魔王様…貴方様が創る新世界を見ることは出来ない様です…どうか……)


バルカンは主との出会いを思い出していた。


それは…100年前…先の大戦で敗れバラバラとなった魔族との抗争に巻き込まれその場にいた魔族を鏖殺し死体の山を築き一息をついていた時


『ほぉーコレ?お前がやったのか?』


突然死体の山をつつくフード男がいた


『……誰だ』


『ん?オレか?』


男はすっとぼけた顔で自分を指差す


『お前以外に誰がいる…』


バルカンはため息を吐きながら目の前の男を殺す為に自身の獲物の大剣を構える


『まぁまぁ落ち着け…』


気が付けば肩を触れられていた


(いつの間に!!?)


 接近された事に気がつけなかったバルカンは男へ恐怖を覚える、バルカンは自身の力には自信を持っていた生まれてこのかた一度も敗れた事は無かったからだ


『バルカンか!良い名前だな!』


『!!?!?』


『なんで名前を知っているのか知りたいのか?』


男は愉快そうにカラカラと笑う


『んーなんだろうな…そういう能力?』


『……相手の情報を覗くとでも?』


『おお!良くわかったな!百点やる!』


『嘘はよせ…そのような能力がある筈が『まさか

絶滅した筈の鎧狼が生き残ってるなんてな』っ!?』


名前は知られていても可笑しくは無い、調べれば分かるからだ、だか自分が今まで口外したことの無い情報を男はさも当たり前の様に話した


『…何が目的だ…』


『いやいや脅そうなんて考えないよ、スカウトしに来たんだ』


『は?』


まさかの発言に脳が混乱する


『オレはこの乱れ切った魔族共を統一させる。そしてどんな種族も手を取り合い暮らせる世界を作るんだ』


バルカンは理解出来なかった、全ての種族が手を取り合う等世界征服よりもふざけている


『人間ともか?』


バルカンは聞きたかった、魔族を追い詰めた元凶の人間とも手を取り合うのかと


『当たり前だろ?』


男はそう平然と言った


『ふざけているのか?』


『ふざけてないさ』


『………』


男は少し遠くを眺めてから言葉を紡いだ


『オレも人間は嫌いだ…あいつ等は平気で奪い尽くす』


『なら何故?』


『俺達も似たようなもんだろ?それに…』


『……』


『お前も分かってるだろ?復讐が産むのは復讐だけだって』


『……お前に私の何が分かる…』


 バルカンは男の言葉に酷く腹がたった、人間達に体の鎧が高く売れると言う理由だけで狩り尽くされた同胞をバカにされたような気がしたからだ


『知らねよ』


『!』


男は何も躊躇せず吐き捨てる


『ダサいって言ってんの昔の事に囚われたままで

復讐復讐とか言って逃げてるんだよ責任から』


『き、貴様ッ!!!』


男の胸元を思いきり掴み上げる


『いつかお前が復讐の最中に死ぬ時それを同胞のせいにするのか?あーお前達の為に戦って死にましたーオレは悪くないです〜ー族全滅したけど許してーって?』


『っ!!!!』


『図星か?なんでお前が生き残れたのか…解ってんだろ?』


『っ……』


 知っていた同胞は村で一番才の有った私を逃がし再興してもらう為に…村の人は隠していたようだったが能力を使えば簡単に分かった。親も友達も祖父母も隣人も私を逃がす為に戦った。

 正体を隠している内に1つの考えが私の中で生まれた"何故同胞を殺した奴等はのうのうと生きている?"のだと


『…ならばこの想いはっ!このっ!行き場の無い怒りをどうしろと言うのだ!!!』

 

『オレにぶつけろよ、全部受け止めてやる、代わりにオレの部下になれよ』


『……意味が分からん』


『……意味なんていらねよ』


顔をそむけながら間が悪そうな男は言う


『いや…要るだろう』


と私は心の底からそう思った


そんな出会いだった…何処までも不思議で人使いが荒かった…たが何処までも優しく強いお方だった


(もし…もう一度会えるのであれば…あの時私を救ってくれた事の感謝を…………)


意識は薄れ思考が混濁し何を考えていたか有耶無耶になるなかバルカンは意識を手放した


◆◆◆


何がが囀る音が聞こえる、風が吹き花の匂いがする、草木が揺れる音がする、何処で私を呼ぶ声がする。私は朦朧とした頭で静かに起き上がる


「……?」


周囲を見渡すと私は草原で何処までもを澄んだ青空の下にいた


「此処は……」


見たことも無い様な所だった草原にはポツポツと木が生え緑が広がっている


「……私は確か…死んだ筈では…」


間違いなく勇者に心臓を貫かれた、それも聖剣で生きている筈が無い


「走馬灯か?」


生物は死に目に走馬灯を見ると言うたが私の記憶にこの様な場所は無い


「……まさか…蘇ったのか?」


これは有りえない仮説だ、一度死んだ者を蘇らせる等かつて勇者パーティーに属していたあの聖女ですら無理だ


「……まさか…あの言葉が誓われたのか?」


 誓いと言う魔術の1つに存在する。いわゆる等価交換だ、誓いは神に誓う為破れば死よりも恐ろしい天罰が下る。

何らかの理由で私が死に目に吐いた言葉が誓われてしまい蘇ったのかもしれない。

 今の所この誓いにどの様な意味があるのか分からない魔王様が生きてるのかさえ分からないそれに…


「……これ以上考えるのは無駄か…」


 バルカンは少し離れた場所に地面に突き刺さっていた愛剣ケバブを引き抜き背に納刀し歩き出した

感謝の言葉を魔王に伝える為に

 





















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勇者に蘇るって言って死んだら本当に蘇った件 五平太 @sukemaru225

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