身ぐるみはがされパンツ1丁で追放されたオレ、魔王を倒してハッピーエンドを迎えた幸せ絶頂の勇者に復讐して地獄に落とす
たけしば
戦士は激怒した
冒険者達が集う酒場。
オレは戦士。
名前は『ああああ』。
今、勇者のパーティーに参加したばかりだ。
「えっと、戦士ああああ・・・呼びにくいな・・・戦士でいいか」
「勇者。これから仲良くやって行く仲間だ。好きに呼んでくれ」
オレの言葉を聞いた勇者は鼻で笑った。
「なあ戦士。これから俺達は1つのパーティーとして、財産を共有すると決めているんだ。今、金は何ゴルデン持っている?」
「あ、ああ、金ね。12ゴルデン持っているぞ」
勇者はオレの金を取り上げた。
「それと、装備品だが、今、何を持っている?」
「装備品はこん棒と、今着ている服だけさ」
「一旦、装備品も整理しようと思う。装備品をオレによこせ」
オレはこん棒を勇者に渡した。
「これだけじゃないだろ?その着ているものもだよ」
その時のオレは、何故だか逆らう事をせず、服を脱いで勇者に渡したのだ。
「なあ、パンツ1丁じゃ恥ずかしいぜ・・・早く服を返してくれよ・・・」
すると勇者は酒場の受付に行って、そして俺をパーティーから除外した。
勇者の行動は何をしているのか意味がわからなかった。
そう、オレは単純に、勇者の金稼ぎの為のいけにえに過ぎなかったのだ。
その後、勇者は美女盗賊、美女魔法使い、美女僧侶をパーティーに入れたのだ。
「勇者!オレはどうすればいいんだ!?」
しかし、勇者はオレを無視して、美女達に囲まれて、意気揚々と酒場を出て行ってしまった。
無一文でパンツ1丁のまま、酒場に残されたオレは、途方に暮れた。
オレは何もできない。
一生、このまま、この酒場の片隅で、まるで存在しないものとして生きるのか・・・?
オレは嘆いた。
激しく嘆いた。
すると、酒場の受付のやつがオレにこう言ったのだ。
「あなたの登録、勇者が消しました。あなたはこの酒場にいられません」
オレは酒場に居座る事も出来ず、パンツ1丁のまま、町の中に放り出された。
町ではパンツ1丁のオレはやはり不審者にしかならず、オレは町からも追い出された。
町の外は魔物達が沢山いる。
下手に出くわしたらそれこそ殺されてしまう・・・
「ぐあ~」
警戒していたら、スライムが飛び出してきた。
オレは殺されまいとスライムと殴り合う。
こんな雑魚モンスター1匹だが、装備もない為、少々苦戦した。
なんとかスライムを倒したオレは、やくそうと2ゴルデンを拾った。
少々体力は削られたが、これから何が起こるかわからない。
だから、もっと危機的状況に陥った時に使おうと思ったのだ。
戦いで乱れた呼吸を少し息を整えていた時だった。
「あ、モンスター見っけ!」
その声は勇者だった。
「誰がモンスターだ!」
ビュン
オレが振り向き言い返した瞬間、オレの目の前を剣の刃が通過した。
「ちぇ!外れちったぁ~」
勇者は本当にオレをモンスターだと思っているのかどうかはわからないが、本当に殺す気でいるのだけはよくわかった。
「魔法使い!炎魔法だ!」
「は~い、勇者様!私の魔法でそんな変なモンスター、一撃で葬ってしまいますわー!」
ゴオオオ!
美女魔法使いの放った火の弾がオレに直撃する。
全身を焼かれるように熱い。
「うがあああああああああっ」
オレは地面に転がり、体についた火を消した。
ザクッ!
オレの背中に何かが突き刺さった。
「こいつ、体力あるな~」
美女盗賊がオレの背中をナイフで刺したのだ。
あまりの痛みと苦しみに、オレはその場でのたうち回った。
このままでは殺される。
オレは残った体力を使い、全力で走った。
そして、森の中に入って振り向いた時、もう勇者達は後を追って来なかったのだ。
体中の痛み、苦しみ、そして、惨めなオレ自身に自然と涙があふれ出し、しばらくその場で伏せて、動けなくなってしまった。
悔しい。
オレはどうしてこんな目にあわねばならぬのだ・・・
悔しい。
あの勇者が憎い!
オレは薬草を使い、体の怪我を治し、体力を回復させた。
そして、勇者に復讐をすることを強く決めた。
それからオレは、森の中のモンスターと戦い、薬草と金をひろい、戦いで失った体力を回復させ、再びモンスターと戦い、自分を鍛えながら金を稼ぎ、それを繰り返した。
日が沈み、月が昇り、日が昇り、暮れ、日没し、不眠不休でオレはモンスターと戦い続けた。
オレは貯めた金を持って、町の武器屋へ向かった。
「お、お客様・・・」
武器屋は全身傷だらけのパンツ1丁のオレにびびっていたようだったが、稼いだ金を払って、安い鎧と安い剣、安い盾を購入した。
「い、いますぐ装備、していくかい・・?」
武器屋のセリフにオレはうなずいて、購入した装備品を装備して、再び町の外へ出た。
オレは強くなる為、さらに強い敵を求め、町を離れ、旅に出た。
行く先々で勇者の話を耳にした。
ある者は家の家財を盗まれたと話していた。
ある者は鍵をしめていたドアを開けて入って来て、タンスなどをあさられた。
どれもいい話では無かった。
オレはさらに良い装備をそろえる時以外はモンスターと戦い続けた。
不思議と眠らずに生き続けて、戦い続けていられた。
そして、ついに、自分の成長の限界にたどり着いてしまった。
あらゆるダンジョンを巡っても、宝はすべて勇者が取って行った後であった。
残されていたものは呪いの装備。
オレは自信への反動が強いが、強力な破壊力を持つ呪いの装備達、破滅の剣、暗黒の鎧、終末の兜を装備した。
これらは装備すれば、二度と外れる事は無い。
全てはそろったのだ。
そして、ちょうどその頃、立ち寄った町の人々の話で、勇者は魔王を倒し、世界で一番国力の高い王国の王になる事を聞いた。
オレはその王国へ向かった。
今まで戦い続け、オレを鍛えさせてくれたモンスター達はどれも、恐れる事は無い。
オレにとっては片手であしらうだけで絶命してしまう、か弱き生き物と化した。
オレは王国の門についた。
番兵達がオレが入る事を止めようとするも、オレの覇気の前で微動だに出来ず、ただ、怯えて震えるだけだった。
王国に入ると、街はお祭り騒ぎだった。
魔王を倒した勇者が王になる事を歓迎しているのだ。
オレはあの糞野郎が王になれば、国はあの糞野郎の食い物と化する未来がわかった。
腸が煮えたくるような激しい怒りがこみ上げる。
愚かな民は破滅の未来を知らずに喚起しているこの光景も、オレの怒りを増すだけだった。
ただ、魔王を倒した勇者が相手だ。
伝説の装備で身を固めている。
同行する勇者の仲間達も侮れない程、成長しているはずだ。
冷静に立ち向かわねばならぬと思い、オレは精神統一の為、街の教会に立ち寄った。
「誰です!?」
教会の祭壇の前に、勇者の仲間の美女僧侶がいた。
1人で祈りを捧げていたようだ。
これは好都合だ。
集団でまとめてかかられるより、1人1人倒せるなら確実にやれる。
「あなたは・・・ああああさん?!」
「オレの覚えていたのか?」
事を
「はい・・・生きていたのですね・・・」
「生きていた。勇者に復讐をする為にな」
すると、僧侶はオレに抱き着いてきたのだ。
「助けてください・・・勇者は最悪な人間です。勇者が王になれば人々は不幸になるでしょう」
僧侶は勇者がこれまで行った悪事、勇者の特権を悪用して民家のみならず、異国の城の高価なものでさえ平気で奪ってしまう事を、美女魔法使いと美女盗賊を手籠めにし、嫌がる僧侶も何度も無理やり夜の付き合いを強制された事を、全てオレに話してくれた。
「魔王を倒す為に私は我慢を続けていました。しかし今、魔王は消え、そして勇者が新たなる魔王と化しはじめているのです。私1人では、勇者にとって都合のいい女である魔法使いと盗賊は倒せません・・・勇者と1対1の状況で、刺し違えるつもりでいました・・・どうか、ご協力をお願いします!」
「頼まれずともオレは殺すつもりだ。それに、刺し違える役目はオレが引き受ける」
オレは教会を出た。
すると、教会の前に兵士達が槍を構えていた。
「勇者様を狙う不届き者がいると聞いた!この場で処刑する!」
兵士達が一斉に槍をオレに突き刺した。
しかし、どれもオレの体に傷1つ、付ける事は無かった。
「魔王に立ち向かおうという意志が無かった連中の力はこんなもんか・・・」
オレは片手で槍を振り払うと、兵士達は全員吹き飛ばされ、地べたを転がった。
「ああああさん。私がサポートします。今のああああさんなら、勇者と互角以上に戦えるはずです!」
オレ達は広場へ向かった。
異変に気付いた人々は皆、どこかに逃げ隠れてしまったようだ。
広場の真ん中には勇者と、魔法使い、盗賊の3人と、王国の兵士達がいた。
「勇者ぁぁ!オレを覚えているかぁぁ!!」
「あ?誰だか知らねえけど、オレを誰だと思っているんだ?」
勇者は自分の持つ伝説の剣を抜き、オレに斬りかかって来た。
ガキン!
オレは勇者の伝説の剣を呪いの剣で弾き返した。
単純な装備の性能では、勇者の伝説の装備達とオレの呪いの装備達、互角に戦える事が感覚でわかった。
「生意気な!魔法攻撃をやれ!」
「勇者様!やっちゃいまーす!」
魔法使いが強力な炎の玉を放った。
しかし、炎の弾は見えない壁によって塞がれた。
「今のは・・・聖結界!」
僧侶が結界を使ってオレを守ってくれた。
「僧侶・・・うらぎったな!このオレ、偉大なる勇者を!!」
「勇者、私もあなたを許さない!」
「2人共、元の姿がわからぬ程に激しくぶっ殺してやる!」
勇者、盗賊の激しい連続攻撃!
オレは2人の攻撃に対応し、剣で防ぎまくる!
魔法使いの上級魔法が連発され、僧侶はさらに強い結界で魔法を弾き飛ばす。
周囲の民家や城壁、城さえも、俺達の戦いの衝撃に耐えきれずに破壊されて行く。
やわな兵士達は戦いに巻き込まれ、木の葉のように吹き飛ばされて散って行く。
止まらない激しい攻撃の間に、スキが見えた。
オレが振り下ろした剣は盗賊の体を二つに斬り裂いた。
「なにぃ!盗賊が死んだっ!」
勇者はオレの力に恐れおののいたようだ。
一連の動きでよく理解が出来た。
今のオレは勇者よりも遥かに強い事が。
ひるんだ勇者に止めの一撃を刺そうとした時だった。
激しい体の痛みに襲われる。
呪いの装備達の副作用が出たのだ。
その隙に、勇者は崩れかけた城へ向かって逃げて行く。
魔法使いが物陰に隠れた兵士2人を捕まえて、俺達に立ち向かうように言う。
しかし、一般人の兵士達は恐れて動けない。
「ナルドラゴ!!」
魔法使いが2人の兵士に魔法をかけると、兵士達はドラゴンに姿を変えた。
魔法使いも勇者を追って、城へ逃げ込んだ。
「ああああさん!大丈夫ですか!」
「ああ、力を使った呪いの装備達がオレの寿命を吸い取りやがった・・・」
「ヨクナール・・・」
僧侶が回復魔法を唱え、オレの体から痛みが消え、動けるようになった。
「ありがとう・・・仲間から回復魔法をかけられるって、いい気持になれるんだな・・・」
オレは魔法使いが残した2匹のドラゴンに立ち向かう。
ドラゴンの吐き出す灼熱の炎を剣で振り払い、オレはドラゴンの頭を叩き割った。
もう1匹のドラゴンもオレに向かって炎を吐く。
オレは炎を全身に浴びながらも一歩も下がることなく、むしろ全速力で駆け抜けて、ドラゴンの足を切断した。
地面に倒れたドラゴンの首を斬って止めを刺す。
「ああああさん!そんな捨て身な戦い方・・・体が持ちませんよ!」
「いい・・・そんなもの、捨てたようなものだ」
城に入ると、魔法使いが呪文の詠唱を行っていて、その後ろに勇者が隠れていた。
「最大出力!最強魔法!クエタバーン!!!」
激しい魔法エネルギーが森羅万象を破壊する波動となって、オレに向かって放たれる!
僧侶がすばやく結界を張り巡らせるも、50枚の結界を簡単に破壊して、破壊の波動はオレを飲み込んだ!
体が引き裂かれそうになる。
内臓の全てがつぶれそうだ。
全身から血が噴き出した。
呪いの装備達すべてが破壊され、塵となった。
もう、ここで終わりか・・・
いや、まだだ!
オレはここでは死なない!
破壊の波動は長く続く1本の道を作った。
その先の山は形を変えてしまった。
恐ろしい破壊魔法だった。
だが、オレという人間を破壊する事は出来なかった。
装備は全て破壊され、吹き飛ばされ、オレに残ったのはパンツだけだった。
「そ・・・そんな・・・・最強魔法が・・・・・」
魔力を使い果たした魔法使いは膝から崩れ落ちる。
オレはその顔面を蹴り上げると、魔法使いの首はありえない方向へ曲がり、絶命した。
「ひっ・・・お、おまえは・・・」
怯える勇者。
「思い出したぞ!お前は、お前はっ!」
「そうだ。オレは『ああああ』だ」
オレの拳が勇者の胸を貫通した。
勇者は恐怖におびえた顔のまま、絶命した。
「終わった・・・すべてが終わった・・・・」
全力を出し切ったオレは、その場で倒れ込んでしまった。
目を覚ませば教会にいた。
僧侶がオレを運んで、回復魔法をかけつづけてくれたのだ。
「ありがとう。動けるようになったよ」
「お礼を言うのは私です・・・悪しき勇者を倒して頂き、ありがとうございます」
オレは立ち上がり、教会を出ようとした。
「どこへ行くのですか?」
「オレはもう、目的を果たしてしまった。この後は何も考えていない・・・だから、歩きながら考えようと思う」
「私も、一緒について行っていいですか?」
「ああ、好きにしていい」
俺達は廃墟と化した王国の街を後にした。
パンツ一丁のオレの、人間として生きる為の旅がはじまったのだ。
【ぼうけんのしょ】
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物語を旅する読み主様、この物語はいかがでしたでしょうか?
お楽しみ頂けましたら、下の星の力を入れていただけると幸いです。
また、巡り合えた思い出に、ブックマークをしてはいかがでしょうか?
この物語が気に入って頂けた方には、下記の連載中の物語をおすすめしております。
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ぜひ、ご覧くださいませ。
では、読み主様が良い物語と出会えることをお祈りいたします。
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身ぐるみはがされパンツ1丁で追放されたオレ、魔王を倒してハッピーエンドを迎えた幸せ絶頂の勇者に復讐して地獄に落とす たけしば @TKSV
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