【黒歴史放出祭】文化祭の当日、私は一人寂しく空き教室で寝て過ごしました。

猫とホウキ

オチまでついてるプチ黒歴史エピソード

 これは私が高校三年生のときの実体験です。アオくもないハルでもない、ただ薄暗いだけの話。



【①私と友人たちのこと】



 そのときの私は、どこにでもいるような『斜に構えた』高校生でした。否定的なことを言ったり、真面目にやっている人を小馬鹿にしたり、手を抜いたり、逆張りしたり、そういうことをするのが格好良いと思ってしまうような痛々しいだけの子どもクソガキでした。授業中に寝ていたり、怒らない先生の授業だと堂々と小説を読んでいたり──


 そんな私でしたが、一応、友人と呼べるくらいに仲の良いクラスメイトがいました。正確な人数は書かないでおきますが、2〜4名の範囲内です。またこんな私とつるんでいた連中なので、多少なりとも私と似通ったところのある人たちでした。


 友人たちは全員が同じ趣味というわけではなかったのですが、漫画やゲームに詳しい者もいて雑談の話題に事欠くことはなく、一緒にいて楽しいメンバーでした。そして学校行事には極めて参加意欲が低い、好きなことしかやらないから得意科目の成績は良いが苦手科目は赤点を取ったりするなどと、共通点もありました。



【②クラスのこと】



 学校行事に対して参加意欲が低いのは私と友人たちだけではなく、クラス全体がそうでした。


 担任教師は仕事に関して『最低限の職務以外のことには米粒一つ分のエネルギーも使わない』タイプの人間で、クラスをまとめる気がありませんでした。


 クラス内には問題児はいない一方、帰属意識のない自分勝手ばかりが揃っていて(でもみんな性格そのものは悪くなく)、いじめはないが団結もない、教室という箱の中でいくつかの小さなグループがなんとなく過ごしているような、そんなクラスでした。なお二年生から三年生に進級する際にあまりクラスメイトの顔ぶれが変わってなく、その状況は二年生時点から続いているものでした。


 そのようなクラスであっても──秋には文化祭という学校行事に。漫画やアニメの世界では一大ビッグイベントである文化祭ですが、当時の私たちにとっては面倒なだけのイベントでした。


 もちろん私たちが例外なだけで、学校全体としてはしっかりと盛り上がっていました。喫茶店をしてみたり、たこ焼き屋さんをやってみたりと、他クラスの生徒たちは頑張っていました。一方、我がクラスはというと、誰もなにもやりたくないから、やることが決まらない。


 そして実際になにをしたのかも覚えていません。二年生のときも三年生のときも、たぶん展示……なにを展示したのでしょうかね。一人一つずつ展示物を作るとかそんな話だったと思いますが、私には作った記憶がないので不参加だったのでしょう。


 言うまでもなく、中途半端に不真面目なだけの陰キャな私は、白にも黒にもなれない地味な灰色のようなもので、そのクラスの中でも目立たない存在でした。



【③文化祭当日に経緯いきさつ



 自分のクラスでは(実質的に)なにもしていないわけで、そうなると文化祭当日は他クラスや部活動の企画を見て回るしかすることがないわけです。まあ、文化祭の日に友人たちと校内を巡るのは、そう悪い一日ではないでしょう。二年生のときはおそらく、私もそうやって一日を過ごしたのだと思います(覚えていませんけど)。


 しかし三年生のときは事情が違いました。同じクラスの友人たちが全員「こんなくだらないことのために学校に来るくらいなら、家で受験勉強をするか、寝ていた方がマシじゃない?」と言っていて、そして当日、本当にその全員が休んでしまったのです。


 さて、私はというと、当然ながら『文化祭の盛り上がりをめた目で見ている私って格好良いカッケー!』と思っていたわけですが、そう思いつつも小心者のせいか学校をサボることができず、当日は憂鬱ながらも学校に行きました。



【④文化祭当日】



 文化祭当日の朝、生徒たちはまず自クラスの教室に集まります。担任教師から注意事項の説明などがあったのかもしれません(覚えていません)。それが終わると自由行動となります。


 クラスメイトたちは各々いつものメンバーで集まって行動を始めます。しかし私はその『いつものメンバー』が全員欠席したため、一人ぽつんと取り残されてしまいます。


 他のクラスにも知り合いはいました。主に一年生のときのクラスメイトです。それを頼ろうと校内を彷徨さまよってみますが、たとえ知り合いを見つけて話しかけてみても、長くは相手にしてもらえません。みんな自クラスのイベントで忙しいですし、それぞれ一番仲の良い人たち──私の知らない人たちと一緒に行動していますし、そこに割って入る勇気は私にはないですし、そもそも私は客観的に見ればただひねくれているだけの(しかもそれ以外に特徴のないような)人間です。積極的に相手にしてもらえるほど好かれてはいません。


 というわけで早々にすることがなくなり、一人きりでどうやって時間を過ごすかを考えなければなりませんでした。周囲から一人でいるところを見られるのも嫌で、そうなるとどこかに隠れて文化祭が終わるのを待つしかありません。


 そんなときに都合良く見つけたその教室が、厳密に『空き教室』だったのかどうかは覚えていません。もしかしたら自分のクラスだったのかもしれませんね。記憶にあるのは『電気がいていなくて、カーテンも閉まっていて、薄暗かったこと』『壁沿いに椅子が並べてあったこと』『その椅子の位置が教室の入り口から死角になっていたこと』『教室の中には誰もいなかったこと』だけです。


 私は早速、その壁沿いに並んだ椅子に横たわりました。校内の賑わいから取り残されたような薄暗い教室で、耳に届く楽しげな声に胸をざわつかせながら、負けてない負けてないと自分に言い聞かせてながら、ただひたすらに時間が過ぎるのを待ちました。



【⑤途中で起こされたこと】



 一度、体を揺すって起こされました。


 私を起こしたのは、普段ほとんど話すことのない、校則違反のヤンチャな髪色や服装をしたクラスメイトさんたちでした。笑われたのか、心配されたのか、両方だったのか、よく覚えていません。ただただ気まずくて、恥ずかしくて、でもそれを誤魔化すように平静を装って。


 そして見つかってしまったからといって他に居場所はなく、クラスメイトたちが去ると、私はまた並んだ椅子に寝転がって、天井を眺め始めました。



【⑥文化祭が終わったあとのこと】



 その日はもうなにも起こりませんでした。文化祭は終わり、苦痛の時間は過ぎ去り、解散となりました。


 この後日談は、文化祭が終わってからかなり日にちがったあとの出来事です。


 クラスメイトの友人に一名、よく学校をサボる人がいました。その友人を仮にAさんとします。なお文化祭をサボろうと言い始めたのもAさんでした。そしてある日、Aさんは出席日数が足りているかを確認するため、教卓から出欠簿を取り出しました。


 それが発覚のきっかけでした。


 文化祭当日、私だけが学校に来ていたことは、友人たちも知っていました。しかしAさんが出欠簿を確認したところ──


 その日、そして私の代わりに、になっていたのです。


 文化祭当日の朝、これもよく覚えていないのですが、たぶん名前を呼んで出欠を取っていなかったのだと思います。そしてモブキャラでしかない私の顔を見て名前を思い出すことは、半年程度の付き合いしかない担任教師には荷が重かった。きっと彼は「こいつ誰だっけ」と思いながら、出欠簿(の私じゃない人の行)にななめ線を書き込んだのでしょう。


 つまり私は文化祭の日、学校内に存在すらもしていなかったわけです。良かった、薄暗い教室で寝ながら文化祭を過ごした私はいなかったんだ!



【⑦最後に】



 当日の行動やクラスの状況など、記憶が曖昧なため事実誤認はあるかもしれませんが、意図的に改変したり脚色したりはしていないつもりです。コミュ障で没個性なくせにプライドだけは高いモブキャラの、真っ黒なノートの1ページでした。

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【黒歴史放出祭】文化祭の当日、私は一人寂しく空き教室で寝て過ごしました。 猫とホウキ @tsu9neko

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