空前絶後のサプライズつぶやき

アーカーシャチャンネル

彼に届いたメールの中身とは?

 とある日の出来事である。


 VTuberである彼は、パソコンでメールのチェックをしていた際に、あるメールが届いていたのを目にした。


 その内容を見て、困惑をしたのは言うまでもない。


【守秘義務がありますので、内容の拡散は解禁日までご遠慮ください】


 メールのあて名を見ると、自分が所属しているわけではないのだが、大手のVTuber事務所である。


 いわゆるなりすましメールの路線も疑ったが、アドレスに間違いはない。


 ちなみに自分は一度、この事務所に応募したこともあるのだが……不採用だったこともあり、個人勢として活動をしているが。


「内容的に違うVTuberあてなのは明らかなのに、どうするべきか」


 彼は、このメールの内容を見て困惑する。


 下手に事務所へ迷惑をかけるわけにはいかないのだが……このメールを「違う人に送られているのでは?」と指摘するだけでも、守秘義務に引っかかる可能性はありそうだ。



 次の日、世間は丁度ホワイトデーだった。


 それを踏まえて、彼はホワイトデーにまつわるつぶやきを行う。これによって、ある程度のバズを得ているのは分かるが……。


(やはり、あの内容が気になりすぎて……)


 下手に匂わせるのも炎上の原因になるだろうし、解禁日まで配信を行わずに様子を見るのも、逆に不審がられるだろう。


 話したら機密情報を漏らしたとして炎上し、それこそ企業からも炎上系と言う烙印を押される。


 話さなかったら、逆に配信をさぼっているのでは……という事で炎上しかねない。


 自分の場合は、配信以外では大きな案件と言うものもないので、そういう事にはなるだろうが。


 やはり、あのメールを事務所に返すべきなのか……と。



 ホワイトデーの午後、彼は結局……メールの内容を見て、悩み続けていた。


 この話題を解禁日まで周囲に話してはいけないのか、と。ある意味でも地獄と言えるかもしれない。


 その彼が考えたこと、それは……。



【4月1日にサプライズ告知をします】


 あの内容を若干外しての、つぶやきを投稿することだった。


 そのままの内容を流したら、それこそアウトだが……これ位だったら大丈夫だろう、と。


 いわゆる匂わせなつぶやきかもしれないが、それでも……。



 最終的に、このサプライズつぶやきは瞬く間に拡散し、予想外のバズを生み出していた。


 さすがに4月1日はエイプリルフールなので、そこに向けてサプライズを準備している企業などは多いだろう。


 それを踏まえて、彼が懸念していた炎上は避けられた。



 実際、彼のもとに届いたメールには以下の事がざっくりと書かれていた。


【このメールの内容は4月1日になるまで、告知をしないように】


【近日中に新番組の予告を流します。ある意味でもVTuberの皆様も驚くような内容です】


【一方で、下手をすれば炎上もあり得ますので、詳細ははなさないように】


 はなさないように、そうひらがなで書かれていた。そして、彼は「話さないように」と解釈し、守秘義務があると思っていた。


 確かに守秘義務はあるだろうが、それは事務所の所属VTuberの話であり、彼には発生しないことは……最初から分かっていたのである。

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