はな

すみはし

はな


「きいてきいて、おはながはえたの」

 そうかちゃんが言いました。そうかちゃんはにこにこと笑って、能勢さんの手を引いていきます。そうかちゃんは能勢さんの働く幼稚園に通っている女の子です。「何のお花が咲いたのかな」と聞いても、そうかちゃんは「おはな!」としか言いません。見てのお楽しみなのでしょう。


 しかし、そうかちゃんが嬉しそうに胸をはって指さしているのはどう見ても土からはえた鼻なのです。


「おはな!」とそうかちゃんはキャッキャと笑っています。


確かにおはなです。横から見ても、上から見ても、どう見ても鼻なのです。鼻をつまんでみるとフゴフゴと鼻が鳴りました。どうやら生きた鼻のようです。その鼻は少し大きくて、わし鼻で、男の人の鼻のようです。


「このおはな、どうやったらおおきくなるかな1?」


そうかちゃんは頭を抱えてウンウンと考えています。もちろん能勢さんもそんなことは初めてなので、どうすればいいのかわかりません。お水をあげてもいいのかもわからないので、困ってしまいました。


「おおきくなるかな」とそうかちゃんは能勢さんが考えているあいだにじょうろでお水をかけてしまいました。

鼻はもぞもぞと動いたあと、ズルルと鼻をすすっていました。


そうかちゃんはまだまだたくさんのお水をあげようとしていたので「あんまりおみずをあげすぎてもよくないからね」と能勢さんはそういうと「そっかぁ」と少しだけ不満そうなそうかちゃんからじょうろを受け取ると鼻を軽くティッシュで拭きました。

ズルルと音が鳴って、ティッシュには鼻水のようなものがついていました。


「やぁ、そうかちゃん。どうしたんだい、何かいいことでもあったのかな」園長先生の声がしました。


「おはな!」とそうかちゃんのうれしそうな声が聞こえてきます。

きっと園長先生にもこの鼻を見せたいのでしょう。


園長先生もびっくりするのではないかと心配して振り向くと園長先生の鼻の位置にはきれいなお花がさいていました。


「どうやら鼻がむずむずするんだ、かぜかもしれないな」

園長先生が鼻をすすると、土の鼻がズルルと音をたてました。


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はな すみはし @sumikko0020

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