新しい感覚

砂糖鹿目

新しい感覚

多分これは私に限った話ではないのだろう。

私は自分だけの特別な力が欲しかった。

高校を卒業した後特に目標もなく、近くの飲食店でパートをしている。

今日は休日でやることはいつも通りない、パートの休憩時間の延長線みたいな物だった。


(スゥー)


「ペットボトルよ!浮かべ!」


何か特別な力でも持ってたらなぁ、例えば超能力とか霊能力とかその他の能力でもいいけど。

やっぱり憧れるもんじゃん、暇人は。


ゴッ


ペットボトルが倒れたその瞬間私は今までに経験したこともない感覚に襲われた。

明らかに五感とは違う、超能力でも霊能力でもない。


「な、なんだこれぇ?!」


私が今声を発したのかも正確にはわからない、そんな状態が数分続いた後やっと慣れてきた。

自分の五感がしっかり認識できるようになったのだ。


「な、なんだこれぇ?!」


次は明らかに声を出した。

さっきは混乱して気づかなかったが、この感で認識できる世界は、、何というか、、、奇妙?、汚い??、、それとも美しい???

というかこの感で認識できる世界を従来の五感の感性で表現していい物なのか?


「え?、なに?」


[な、なんだこれぇ?!]と言って、驚くのにも飽きた。

次は段々元々あった五感が何というか範囲が広がっている(?)のだ。


車のクラクション、パトカーのサイレン、コンビニの入店音、喧嘩をするチンピラ、金を貰う警察、誰かがご飯を食べる、ホモが自慰をする、葬式で人が泣く、ゲームに負けてイラつく、花に水をやる、偉そうに椅子に座る、子供を命の危機から救う、トラックに撥ねられる、歯医者で歯を抜かれる、トイレットペーパーが切れる、考古学者が新発見を果たす、ロケットが打ち上がる、太陽が降りていく、月が登っていく•••


全て感じる、この五感とプラスαで。

そして私の家の前にはガタイのいい警察が


ピンポーン


「私さん!警察です!あなたに殺人と麻薬所持の疑いがかけられています!開けてください!」


部屋の周りを見渡すと、散らかった部屋の上に落書きのように血がべっとりと塗られていた。

目の前にはウジとハエが群がる芸術作品。

ペットボトルの中には盛り塩。

ベランダには鉄の刃と白い骨が群がってカラスが巣を作っている。

そうか、これでいいのか。

これでいいのだ、だって私は目覚めたのだから。

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新しい感覚 砂糖鹿目 @satoukaname

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