女神候補生とヤバい相棒4(KAC2024)

ファスナー

女神候補生とヤバい相棒4

ここは神や女神が住まう世界、神界。

時刻は夜の6時、恒星もすっかり落ちて世界が夜の顔を覗かせた頃。

とある野外ドームは熱気に包まれていた。


「諸君、よく集まってくれた。

 ただいまより女神候補生達の最終選考会を開催するぅぅぅ。」

司会者の男がテンション高めの開催宣言を行った。


「「「「ふぅぅぅぅぅっ」」」」

ドームに詰めかけた観客もまた、司会者に負けず劣らずのテンションで応える。


今始まったイベント、それは女神選考会。

選りすぐりの女神候補生達の中から新たな女神を選考するという趣旨のもので、それの最終選考会が本会場で行われるものだ。


「いいぜ、観客オーディエンス

 お前たちの熱いビートがこっちまで伝わってくるぜ。

 サイコーかよお前ら。」

観客の反応の良さに、司会者の言葉にも熱は入る。


「「「「Yhaaaaa!!」」」」

そして司会者の言葉に反応するように観客のボルテージも高まりをみせていた。


「ここで、そんなお前らのテンションをより高みに連れていく主役の登場だぁぁ!!

 照明、カモンッ!!!」

司会がパチンと指を鳴らす。


一瞬の暗転の後、ドーム中央の特設ステージに複数の照明が集中した。


そこには、15人の少女達が立っていた。

彼女たちは女神を、それも上位数パーセントしか成れないと言われる上位女神になるべく日夜切磋琢磨してきた女神候補生の精鋭。


「さあ、新たな女神が誕生する瞬間に立ち会おうじゃねーかぁ。

 数々の試練をくぐり抜けて集った15人の女神候補生達。

 上位女神という栄冠を手にするのは誰になるのか。刮目せよ。」


「「「「うぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」

主役たちの登場に観客のテンションは最高潮に達した。


■■■


「いや、おかしいでしょ。何よ、この異様な盛り上がりは…。」

一種異様なテンションになっている会場で呆れたような声を漏らしたのはステージ上に立つ女神候補生の1人、姫柊ゆかり。


今回のイベントの主役女神候補生の1人である彼女は観客ギャラリーのテンションの差にドン引きしていた。


「やられましたね。

 この選考会の責任者がレキウス様だった時点で警戒すべきでした。

 どうやら事務局側にもで水面下で進行していたようです。」

そう言って苦虫を潰したような表情をしているのは、姫柊ゆかりと同じく女神候補生の1人、里見聖子さとみせいこ


今回の女神選考会を統括指揮するのは上位神レキウス。

彼は非常に優秀な神ではあるのだが、人をあっと驚かせるような突飛な言動が多い神でもある。

そんな彼は、最終選考の内容を1週間前に一新するという前代未聞の行動を行ったばかり。

そして今回、レキウスは最終選考会を事務局側にも知らせずにに踏み切った。


「流石にこれ一般公開を事前予測するなんて無理な話よね。

 観客の熱気が煩わしいけれど、腹を括るしかないわね。」

そう言いながら、姫柊ゆかりはため息を吐いた。


「あら、嫌なら今すぐ辞退なさることを薦めるわ。

 こんな公開の場で無様を晒すのはゆかり様にとっても不本意でしょう?」


姫柊ゆかりをあざ笑うように煽ってきたのは、逢坂玲奈おうさかれいな

彼女もまたステージ上に立つ最終候補まで生き残った女神候補生。


「面白い冗談ですこと。

 ですが残念ながらこの私に敗北の2文字はありませんの。

 貴女こそ気を付けたほうがよろしくてよ。

 なんといったかしら。

 ああ、そうそう。確か『策士策に溺れる』でしたっけ。」

逢坂玲奈に余裕の笑みで返す。


姫柊ゆかりの瞳の奥には仄暗い炎が宿っていた。

何故なら、彼女は逢坂玲奈に対していい感情を持っていないから。


それは今回の最終選考会のエントリーでの出来事に起因する。


この最終選考会はレキウスの気まぐれにより、女神候補生の転生業務の目利きを測るという内容に一新された。


そこで、【輪廻転生リスト】から選んだ転生対象の魂1人を、女神候補生の相棒バディとして事前エントリーしておく必要があるのだが、締切直前に妨害にあった。

なんと、逢坂玲奈の姉である女神、逢坂奈々が姫柊ゆかりの相棒を転生させられてしまい、未エントリーになってしまったのだ。

慌てて別の相棒を立てたことで何とかエントリーはできたものの、そういった妨害工作を仕掛けてきたことで姫柊ゆかりは逢坂玲奈を敵視しているのだ。


「おおっと、一部では早くも戦いが始まっているようだぁぁ。

 今年の女神選考会はどうなってしまうのか?その行方に目が離せません。」


「「「「うおぉぉぉ」」」」


どうやら姫柊ゆかりと逢坂玲奈の会話が聞かれていたようで、司会者はその対立を煽るように囃し立てた。


「うむ、面白い選考会になりそうじゃ。

 さて早速だが、女神候補生の君たちにルールの説明をしよう。」

そう話を切り出したのはこの選考会の最高責任者である上位神レキウス。


「君たちにはこれから女神の必須業務の1つである転生業務を行ってもらう。もちろん基本的な規則は遵守してもらう。

 転生後に直接サポートするのは禁止だ。

 能力の付与や神託による情報提供と言った事だ。

 それと、今回は公平性を担保するためもう一つ条件を追加する。

 それは転生特典を非公開にする事。

 通例通り転生者に転生特典を1つ付与することは問題ない。

 だが、本来行う転生特典の説明を今回に限り欲しい。

 理解していると思うが今回の最終選考会は一般公開した形で執り行う。

 つまり、他の女神候補者に特典内容がバレれば、転生者に及ぼす影響も計り知れんと判断したからだ。

 こちらからのルール説明は以上となる。何か質問はあるかの?」

レキウスは女神候補生達に視線を向ける。


すると1人の候補生が手を挙げた。姫柊ゆかりである。


「発言を許可する。」


「ありがとうございます。

 特別ルールを設けるくらいでしたら、そもそも一般公開を止めればよろしいのではなくて?」


((((言った〜。みんな思ってたけど言わなかった事を言った〜。))))


女神候補生の心は今一つになっていた。

姫柊ゆかりの疑問は最もな事だった。そもそも一般公開することが情報漏洩につながるなら公開しなければいい。

だが、指摘するのは憚られた。なぜなら相手は上位神レキウス。下手な事を言って心象を悪くした挙句落とされては目も当てられない。だから皆、躊躇したのだ。


「それは最もな疑問だな。

 その答えは公平性を担保する為だ。

 で公平性を担保するには一般公開する事が適切であると判断したまでの事よ。」

レキウスはそう言うとニヤリと笑う。


(やられた。。)

姫柊ゆかりが質問したことで、レキウスは世間に不正を許さないと世間に示すことができた。いわば、だしに使われたということ。


「他に質問は…、無いようだな。

 それでは、これより最終選考会を開始する。

 さぁ、女神候補生達よ、エントリーした相棒を転生させよ。」


こうして、多くの観客オーディエンスに見守られながら異例尽くしの最終選考会が開始した。


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