明日への紙飛行機

凪村師文 

手紙

『 

  

  拝啓 


  道行く「幸せな人」へ


 この手紙を受け取ったあなたは、今どんな顔をしていますか。笑っていますか。それとも泣いていますか。


 あなたは今、幸せですか。

「愛」を感じますか。


 もし「愛」を感じるならば、それはどんな「愛」ですか。


 だれかを愛するというのはどんな気持ちですか。それは幸せなことなのでしょうか。


 だれかから愛されるというのはどんな気持ちですか。それは、ココロがじーんと温かいものに包まれる、そんな気持ちなのでしょうか。


 だれかから必要とされるのはどんな気持ちですか。嬉しいですか。それとも、必要とされて緊張しますか。


 だれかに認められるのはどんな気持ちですか。


 だれかの「一番」になるのは、どのくらい気持ち良いものなのでしょうか。



 


 わたしは今書いたもの、全てがわかりません。だれかを愛することも、愛されることも、必要とされることも、認められたこともありません。


 この手紙を受け取ったあなたに、わたしは問いたい。


 「人はなぜ生まれてくるのですか。なぜ愛を欲するのですか」


 わたしにはわからないこの問いの「答え」を探すのをあなたに託して、わたしは飛びます。


 どうかこんなに醜くて、わがままなわたしを許してください。

 

 あなたが今幸せであり、わたしと同じ道を歩まないことを願って、わたしは終わりのない旅に出ます。


                              敬具


                                    』 


  少女は手紙を挟んだ紙飛行機を広い空に飛ばし、長い旅に出た。


 



  次の日の地方新聞に、一人の少女の飛び降り自殺についての記事が載った。

 

  


  一人の少女の灯が、今、静かに消えた


 


 


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明日への紙飛行機 凪村師文  @Naotaro_1024

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