第3話 気まずくなると行動力が落ちる
「はぁ…」
俺は放課後の教室で大きなため息を吐いた。
教科書やタブレットを片付けながら、部室に行く準備をする。
昨日は池之上が帰った後、俺もすぐに家に帰り、そのまま何の連絡もせずに今日になった。
久々に腰が重い。
最近は部活に行くのがそれなりに楽しくなってきていて、こんな憂鬱な気持ち久しぶりだ。
池之上は来ているだろうか?
いつも俺より早くきているから、もし来ているなら俺が後から入る形になるな。
「はぁ…」
そう考えていると、知らぬ間にまたため息が出た。
こうやって気まずい関係になった次の日というのは、いかんせんやる気が出ないものだな。
そうは言いつつも、俺は着々と部活に行く準備を進める。気持ちは嫌だが、行かなくてはなるまい。ギクシャクしたままはもっと辛いからな。
俺がようやく準備を終わらせて気だるそうに席を立つと、声をかけられた。
「よ、なんか元気無さそうじゃん」
声をかけてきたのは、小学校からずっと同じクラスの女子だ。
「ちょっとな」
彼女の名前は山宮。下の名前は覚えてない。
ショートヘアーの活発そうな女子で、運動部ではエースらしい。
「ちょっとって、なんかあったの?」
山宮はちょくちょく話す仲だが、こうやって他人の事情に踏み込んでくる節がある。
俺としては一応友達のつもりだから良いが、知らない相手だったら無視するかもしれない。
「部活に行きたくないんだよ、ちょっとした喧嘩しちゃってさ」
「ふーん…あんたでもそういうのあるんだね。そういう時は相談してくれても良いよ?これでも私、エースだから人間関係のいざこざとか慣れてるしっ」
俺としてはありがた迷惑な気もするが、それは俺がひねくれ過ぎているらだろう。
現に山宮はクラスでも部活でも人気者だ。
「ありがとな、また相談するよ」
そういって俺は教室を後にしようと、鞄を持った。
「あ、もう行くの?なんか困ったこととかあったら相談してよ!いつでも話聞くからさ!」
俺は背中越しにその声を聞き、手を挙げて返事をした。
やっぱ良いやつだよな、山宮。
そして文芸部の部室に到着した。
扉を開ける勇気が欲しい。
またため息を吐いてしまいそうだ…。
いや。こういう時は勢いでやって後から考えた方がいいって誰かが言ってたな…。
よし、行ったらぁ!
俺は意を決して扉を開けた。
「……よ」
そこにはやはり、池之上がいた。
「……うん」
そんな挨拶とも言えないような一言を交わし、俺は席に着く。
さてどうしたものか、さっきの挨拶以外何を話せば良いのか分からんぞ。
そしてしばらくの沈黙のあと、池之上が口を開いた。
「あの、昨日はごめん……」
池之上はそういって、俺に頭を下げる。
長い髪が膝につきそうなくらい、深々と下げていた。
「ちょ…!いいよそんな畏まらなくても!俺の方こそ強く言ってごめんな」
池之上が顔を上げると、少し目が潤んでいた。
「ありがとう、あんな酷いこと言ったのに優しいね…そういう所が君の良い所だし、罪な所だよね…」
な、なんか思ったより深刻なのか?
ただ謝って終わりじゃないのか?
「私、最近君と仲良くなれて調子乗っちゃってたみたい。もうメッセージのやりとりも少なくするし、部活もあんまり来ないようにするね。邪魔しちゃってごめんね」
!?!?!?
俺はすぐさま立ち上がって池之上に詰め寄る。
「ちょっと待ってくれ!話が見えないんだが!?」
「そんな事言わないで、また期待しちゃうよ…だって幼馴染さんと付き合ってるんでしょ?」
え、????
[一旦休止]学園ラブコメに俺は要らない 椿 @onai_john
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます