幻想を求めて

ランドリ🐦💨

第1話 舗装された知らない道へ

 このお話は私のちょっとした黒歴史だ。


 ある夏の早朝の事。


 長期休暇故の運動不足解消に毎日散歩をしていた私は、見慣れない道を発見した。


 その道は急勾配の下り坂となっており、近づかなければ見つけにくい場所にあった。今まで通りがかっても気が付かなかった事も頷ける道だ。


 行き止まりだと思っていた道の先に、はちきれんばかりに膨らんでいた好奇心を刺激された私は、好奇心を爆発させて踏み込んだ。


 下り坂の道は舗装されているが、落ち葉や枯れ枝で埋まりかけており、滑らないように気をつけて下っていった。


 うっすらとした朝日は、生命力あふれる林の織りなす緑のカーテンに隠され、まるで日が昇る前の様に薄暗かった。


 もしかして。私有地に迷い込んでしまっただろうかと不安になり、周囲を見回した私は時々立っている電灯に、自治体のマークが書かれているのを発見し、安心した。


 今度は登り坂を踏破しつつ、遠目にゴルフ場のグリーンが見渡せる小高い丘の上に出た。


 丘の上もまた林に覆われていて薄暗い。目と鼻の先にあるグリーンが輝いているので、更に暗くなったと錯覚するほどだった。


 ゴルフ場の芝生が朝日を受けて瑞々しく輝くのを土地を区切るフェンス越しで横目に見ながら、私は林の影の道を歩いていった。


 数分も歩くとようやく拓けた場所に出て、久しぶりに感じる朝日を浴びることができた。


 山中に作られた階段状の造成地は、一つの段が十メートル近くある巨大なもので、その両端に急な坂道ではあるが、人が歩くための階段付きの歩道が設けられていた。


 運動部らしき子達が歩道の階段を登り降りしている。


 方角的にはそこを下れば大通りに出るはずだと考えた私は、その子達に通りすがりで軽く会釈をしつつ、坂を下っていった。


 時々通り過ぎながら元気な声で挨拶してくる運動部の子たちを頼もしく思いつつ、少々薄暗い道を下っていくと、収穫後の田んぼに草が積まれていた。


 高く積み上げられたそれはまるで草の化け物だ。


「良いものを見た」と、その場を後にした私は、建設関連の人たちがワイワイしているらしい〇〇建設と書かれたバラックの横を足早に通り過ぎると、目に写った文字につい足を止めてしまった。


 小川の岸辺に佇む石碑の「人柱」と赤く掘られた文字を見て、背筋を駆け上る悪寒に突き動かされた私は知っている道へと早足で逃げ出した。


 #####


 今思うと、好奇心で知らない道へ踏み込んだのに、ビビり過ぎである。


 そんな事があっても相変わらず徒歩で知らない道を見つけると、なんとなく踏み込んでしまう。

 怖がりな私だが、未知のものに対する好奇心は手放しがたいものなのだ。


 怖いもの見たさとも言う。

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