第6話 隻腕

 俺は襲ってくる男たちに対して左手を構えてしまった。

 もちろん防御のために左手を出した。

 攻撃を受けるのは当たり前だ。

 しかし、今回は違った。


 ガッ ミシッ ガタタ


 俺の左腕は肩から外れて地面に落ちた。


「は…」


 その場にいたもの全員が唖然としていた。

 俺の左腕があった場所は袖が風で飛んでいる。

 地面にはおそらく義手であろうものが落ちている。

 俺はそれを右手で取る。


「はぁ…そういえば機能メンテしてなかったな。」


「お、お前…左腕。」


 俺は一度義手を地面に置き眼の前の小物に近づき軽く拳を打ち込む。


「ガッ……」


 そうして眼の前の男は倒れてしまった。

 周りの者たちは依然として唖然としていた。

 そりゃあそうだ。

 いつもイジメていたやつに一人やられたんだ。

 状況が飲み込めないんだろう。

 だから俺は…


「今回は借りを返すためにしゃしゃったが、こちとら腕が取れてんだよ。

 だから、めっちゃ気分悪いんだよ。

 ……ただで済むと思うなよ、カスども。」


 するとリーダーは挑発と感じたんだろう。


「テメェ等、その雑魚に格の違いを教えてやれ!」


 すると男達は俺めがけて襲いかかってきた。

 俺は軽く指を鳴らす。


「クラッシュ。」


 すると男達の意識は事切れて崩れていった。

 残ったのは俺とリーダー、そして沙良だけだ。


「お、お前な……」


 何かを言いかけたリーダーだったが俺が指を鳴らすと膝から崩れ落ちていった。

 沙良は明らかに困惑した表情でこちらを見ていた。

 俺は


「借りは返したぞ〜。」


 と言いながら義手を片手に持ち屋上から出ていった。

 その頃の俺はこの義手を直せるか少し不安になりながらクラスで荷物を取り帰路につくのだった。



 ===


 何が起こったんだろう。

 眼の前には男たちが倒れており先程結人さんが屋上を出ていったところだった。

 結人さんが軽く指を鳴らすだけで男達は倒れていった。

 理由がわからなかった。

 彼は底辺の底辺を体現したような男性。

 そのためここに来たときは馬鹿なのかと思いながら早く帰ってくれることを願っていた。

 しかし彼の左腕。

 正確には彼の左の義手が外れてから彼の雰囲気は一変した。

 弱々しい弱者の雰囲気から有無を言わさぬ強者の雰囲気に。

 なぜこうなったのか。

 彼の能力とは?

 そんな事を考えていると周りで倒れていた男たち技少し声をこぼし始めた。

 まずい!

 ここで逃げなかったら再びリンチに遭うだろう。

 私は今できる最大の回復を自分にかけてその場から逃げ出した。

 結人さんには色々と聞きたいことがあったので急いでクラスに向かうが彼の荷物は無く、下駄箱を少し見ると上履きが入っており彼が帰ったことが一瞬でわかってしまった。

 彼は皆勤賞を目指しているという話を聞いたので明日来るはずだ。

 明日にでも彼に関することを!

 私の頭の中は彼のことでいっぱいだった。

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狂人は、歪な笑みを浮かべ進んでいく テラル @pamutto

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