カッターチキチキブス
エメラルド貴子
「普段優しいけどキレるとヤバい奴」キャラになりたくて。
物理的にも精神的にも危険なタイトルでごめんなさい。
黒歴史というか若干犯罪の告白でもありますが、供養させてください。
日本人のほとんどが「厨二病」時代のエピソードをお持ちだと思います。私もあります。
私は中学2年生の時、「普段は穏やかで、争いごとが起きても「ま、まあまあ」みたいなことを言うくせに、実はキレると一番やばい奴」みたいなポジションへの憧れがありました。
しかし、当時私の周りはそのポジションに憧れているオタクが多く、いまいち他の「普段優しいけどキレるとヤバい奴」キャラとの差別化が出来ておりませんでした。さらに当時の私は瓶底メガネで歯を矯正しているデブス。何をやっても格好がつかなかったのです。
なので、手っ取り早く個性を出すために私は武器を所持することにしました。
常にカッターを持ち歩いていたのです。
友達がからかって来たり、ちょっと空気がピリついた時にカッターを出して、「ねえ、これ以上私を怒らせないでよ……………(暗黒微笑)(カッターの刃を出す)」をガチでやっていました。
その演出は功を奏し、私は見事「普段穏やかだけどキレるとヤバい奴」キャラとして突き抜けることに成功。私に敗北した友人たちは新たなロールモデルを見つけ、僕っ子とか常に眠いキャラとか別のポジションへと移行していきました。
で、カッターキャラが定着してきたところで、私はさらに進化を遂げます。今までは、カッターの刃をチラつかせて相手を一睨み……………でしたが、あえてカッターを見せず、ズボンのポケットの中でチキチキ……………と刃を出す音を立てることで、「私怒ってますよ」アピールをするようになりました。(刃を出す時は真顔です。これ鉄則)
これがオタク仲間の間では大ウケ。私は「普段穏やかだけど(以下略」キャラ志望の厨二病患者の中で、他の追随を許さない高みへと上り詰めることが出来たのです。
――――けど、なんか気づいたらやらなくなってました。
別に先生に怒られたとか人からバカにされたとか、これといったきっかけはないんですけれど。もう、「時間の流れ」としか言いようがない変化が私たちの中に訪れてしまい、私はカッターを持たなくなったし、僕っ子も僕っ子じゃなくなったし、常に眠いキャラもそんなことなくなっちゃいました。
………結構書いてて死にたくなってます。友達の記憶の中から、その頃の私の姿だけごっそり抜け落ちてくれていたらいいなと思います。けれど、カッターなんか持ち出しても、ガチで怖がらずに笑ってくれていた友達には本当に感謝。ある意味人には恵まれていたんでしょうね。だって一歩間違えばこれ銃刀法違反とか脅迫罪になりかねないですから。
まあ思い返してみれば、その頃はみんなそうだったので麻痺していたのでしょう。
「噛み殺すよ?」とか言いながら休み時間に堂々と同人誌読んでる女とか、「俺ってコートの中に入ると自分のこと俺って言うよね?(テニス部学内ランキング下から3番目の女)」とか、貧血ぶって体調不良じゃないのに全校集会で倒れる女とか、そんな奴しかいなかったですもの。特急呪霊の宝石箱かよ。
あの頃の私たちの「何者かになりたい」という熱量を笑うことはできないと思います。こういう経験をしないと、人は大人になれない。必死に取り繕ったキャラクターなんて所詮、その人の個性にはなり得ないんだと身をもって学ばなければいけないんです。ありがとう。あの頃厨二病だった女たち!!!ありがとう!カッターチキチキブスだった私!!!!痛み失くして成長なし!!!今中学2年生の君たちも、思う存分カッターをチキチキさせて大人になってくれたまえ。
カッターチキチキブス エメラルド貴子 @yumeharapirorikin
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