★0 戦士オリビアの憂鬱 ~最弱パーティーで何が悪い!ㅤ魔王を倒して世界を救う〈英雄〉になってみせます!~
タイトル:戦士オリビアの憂鬱 ~最弱パーティーで何が悪い!ㅤ魔王を倒して世界を救う〈英雄〉になってみせます!~
キャッチコピー:攻撃スキルの低い、最弱パーティーとの出会いと成長冒険譚!
作者:夜月 透
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093083505300909
評価:★0
【あらすじ】
──メインで戦うのは私だけ?
攻撃スキルの低い、最弱パーティーで
魔王討伐を目指す成長冒険譚──
10歳の時に家族を失くし、孤児になったオリビアは、森で彷徨っている所を女戦士、アテナに拾われた。
アテナに剣や生き方を教わり、スパルタ修行でも必死に食らい付いて暮らしていた。
そんな日々に慣れて、穏やかに暮らしていたある日。
大人になったオリビアは、アテナに「お前に教える事は何もない」と突然告げられて、半ば強制的に旅へ出る事になる。
最初は戸惑いながらも、魔王や魔物が蔓延る世界で、戦いに身を投じる事をオリビアは決意した。
個性的な仲間と出会い、上位ランクの魔物との戦いや、魔族との死闘を経て、成長していくオリビアに立ちはだかるのは──
彼女しか戦闘が出来ない、ブラックパーティーである事だった。
自己犠牲型のお人好しな主人公は、それでも努力と根性だけで進んでいく。
自分に自信の無い回復師と、若い踊り子、そしてやる気のない魔法発明家と共に、全員が成長していく冒険物語。
回復師「すみません、自分弱くて……」
踊り子「踊る事しかできないよ!?」
魔法発明家「やだやだやだ。旅なんか行きたくない、もう帰るーー」
【拝読したストーリーの流れ】
本作は作者さまより「第0話~第5話までの批評をお願いします」とご依頼を受けました。
通常なら第5話は【追記】として後日に投稿させて頂くのですが、本作の第0話は1000文字程度で、その後も2000文字強と短かったので、まとめて批評させて頂きます。
幼い頃に嵐に巻き込まれて孤児となった主人公「オリビア」は、自分を拾ってくれた師匠の「アテナ」と森の中で暮らしていた。
だがある日、唐突に「アテナ」から「冒険者になって、世の為人の為に戦え」と言われて旅立つ事に。
いずれ魔王を倒す事になる「オリビア」の冒険の旅が始まる……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは、メインタイトルとサブタイトルに別れていますね。
まずメインタイトルですが、悪くはないと思うのですが「憂鬱」という締めが個人的には気になります。
「冒険もののタイトル」としては爽快感に欠けますし、語感からも「涼宮ハ〇ヒの憂鬱」を連想してしまいます。
何とも言えないモヤっとした感覚を覚えてしまいました。
続くサブタイトルは、いわゆる「説明文タイトル」ですね。メインタイトルに対してこちらは良いと感じます。
全体的に語感が良く、「最弱パーティー」が良いパワーワードになっていると思います。説明も適度で、「必要部分を説明し、それ以上は分からない」とする事で、本編の内容に気を惹く事ができていると感じました。
あくまで個人的になのですが……メインタイトルを無くしてサブタイトルだけの方が良いと感じてしまいました。(修正の提案ではありません)
続いてキャッチコピーですが、こちらは微妙だと感じてしまいましたね。
サブタイトルの補足説明にしかなっていないからです。個人的には「サブタイトルの劣化版」などと感じてしまいました。
【キャラクターの批評】
キャラクターですが、まず主人公や師匠などの造形はかなり甘いと感じますが、それ以上にサブキャラクターが問題を強く感じます。彼らは「操り人形」……というか「カカシ」だと感じました。
第1話以降、多くのサブキャラが登場しますが「まるで物語の都合に合わせる為に登場した」ようにしか見えません。
「老人は手紙を届ける為に」「行商人・門番は道案内の為に」「ゴロツキは主人公スゲーをさせる為に」「宿の人は師匠の説明の為に」
彼らは「それだけの為に登場した」ようにしか見えませんでした。
特に悪目立ちをしたのは「行商人」と「門番」ですね。
「行商人は街道で魔物に襲われて主人公に助けられる」というテンプレ展開なのですが、護衛の存在は語られません。
「小太り」「青ざめた顔で闇雲に短剣を振り回している」という事から本人が戦闘に長けている訳でもありません。
まさしく「主人公に助けられ、道案内をする為に登場したキャラ」ですね。
「門番」はさらに酷く、「町に着いた主人公に声を掛けて、冒険者ギルドと宿屋を教える為に登場したキャラ」です。
主人公の顔を知っていた理由は「師匠からの手紙で、主人公の人相と『弟子が来たら面倒を見てやってくれ』」とあったそうです。「写真」ではなく「人相」で分かるというのは疑問を感じますね。
「ご都合感」がにじみ出ています。
そして、彼らサブキャラは恐らく「ほとんどがその場限りの出番」だと思うのですが、不必要に描写されています。
髪色や体型とか、「アダムの息子」だとか、その場限りのキャラには不要な情報です。
特に「アダムの息子」と説明をしたせいで「アダムが誰なのか」の説明まで必要になってしまっています。
説明が説明を呼ぶ、悪循環だと感じました。
【文章・構成の批評】
文章は問題が多いですね。
まず一番の問題は、上記でも述べた「不必要な説明が多い」という所にあると思います。
説明とは、下手にしてしまうと「かえって疑問が増す」という事があります。
上記の「アダム」が良い例ですが、他には第1話で主人公が師匠と住む家は「一番近い町までは、歩いて30分ほどかかる距離に建っていた」と説明がありました。
ですが「歩いて30分」というのは決して遠くは感じません。「町はずれ」という表現でも良いと思うのですが、わざわざ「町まで歩いて30分」と書く事で「町からは離れている」という印象も受けます。
位置関係に混乱をもたらしているように感じました。
さらに「不必要な説明が多い」のに加えて、「文章にも無駄が多い」と感じます。
多かったのは「二重表現」と「書かなくても分かる事」ですね。
「不必要な説明」と「無駄な文章」を削る事で、文字数を半分以下に出来るのではないかと感じました。
他の問題点としては「幼稚な表現」がいくつかあります。
特に目立ったのは第0話の「力いっぱい剣を振り下ろす」という一文ですね。
「魔王と対峙している」という状況で、この言葉選びは力が抜けてしまいます。「渾身の力を込めて」などの方がまだ良いと思います。
また「よく分からない表現の文章」もいくつかありました。
「オリビアは志高く剣を構えた」「森の景色に飽き飽きしていたオリビアは、これだけで感動するほど疲れ切っていたし、不安でいっぱいだった」などがありますね。
「志高く」と「剣を構える」は繋がりが見えませんし、「感動するほど疲れて、不安でいっぱい」ってどういう心理状態ですか?
別の問題点として、「地の文での主人公の心の声を( )ではなく『―』で表している」というのも問題に感じます。
別に「―」で表しても良いとは思いますが、読者に「心の声」だという事が直感的に伝わりません。
さらにその為か「『―』で表していながら『心の声ではない』」という文章も複数ありました。これは「作者が自分で気付いていない」のではと思います。
自分で混乱するくらいなら、素直に( )を使用した方が良いですね。
それでは構成ですが、まずテンポは非常に駆け足に感じました。
1つ1つのイベントがあっという間に終わり、次に進みます。
ですが読感としては非常に遅くも感じます。
これは上記で述べた「不必要な説明が多い」からですね。加えて「シーンそのもの」が必要ないと思う箇所もあります。(個人的な感想ですが)
テンポが速いのに進みが遅く感じるという、なんとも不思議な感覚を覚えます。
個人的には「テンポを重視するなら文章の無駄を省く」、「物語に深みを出すなら1つ1つのイベントをもっと丁寧に描く」のどちらかを意識された方が良いと思いますね。(もちろん両方を行っても良いですし、それがベストだと思います)
現状では残念ながら「欠点ばかりが合わさっている」ように感じてしまいました。
また、第3話の締め方は変更された方が良いと思いますね。
完全に「話の途中」で終わってしまっているように感じます。せめて最後の一文を「見ている」ではなく「見ていた」と過去形にするだけでも違うと思います。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーですが、「魔王と勇者」なんて単語が出てくる辺り、まるで「ドラ〇エ」のような世界観ですね。
そして第0話で魔王との戦いが描かれ、締めの言葉に「魔王を倒し──英雄になるまでの冒険譚」とありますので作中でネタバレが起きています。
個人的にはですが、この第0話で「何か予想外の出来事が起こるかも知れない」と読者に思わせた方が良いのでは、と感じますね。
これも個人的な意見なのですが「最初からオチが見え見えの作品は期待感が薄い」と感じます。
ちなみにタイトル・コピー・あらすじで書かれている「最弱パーティー」は、第5話までには登場しませんでした。
設定ですが、「RPGのようなゲーム的」あるいは「webラノベ的」な、「魔王」「勇者」「冒険者」などの見慣れた単語が散見されますが、残念ながら総じて「説明不足」だと感じます。
いずれも掘り下げた説明が無いので、読者視点では「作者は何も考えずにテンプレで物語を考えた」ように映ってしまいました。
「冒険者」については少し説明がありましたが、その内容は不可解の一言に尽きます。
「魔王や魔物に対抗する為に、前国王が『冒険者』という職業を作り出した」との事ですが、普通に考えれば徴兵するなどで兵員を増やす方が先でしょう。わざわざ別組織を作る理由にはなりません。
どこか1つだけでも「名称は他作品と同じだが、本作独自の解釈がある」というようなところを見せてくれれば他の設定にも期待感が持てるのですが、残念ながらそういった凝った設定は見られません。
最後に「冒険者の三原則」という言葉が出てきますが……。
『逃げるべからず』『倒れるべからず』『恐れるべからず』ですか……。
この場合の「原則」とは「決まり事」を指すのだと思いますが、どれも無理がないですかね?
「逃げるな」って、精神論でなければアホのたわごとにしか聞こえません。
「倒れるな」「恐れるな」は、完全に精神論ですね。実行は無理です。
これを「三原則」と掲げる組織は、無能の集まりにしか映りません。
【総評まとめ】
総評ですが、作者の夜月 透さまには申し訳ございませんが「全体的に低レベル」です。【キャラクター】【文章・構成】【ストーリー・設定】のいずれもが基準値を満たしておりません。
ご依頼時に、夜月 透さまから「改稿をした事で、不自然な文章になっていないか、キャラクター造形がちゃんとなされているか、読んで頂きたいです」とのお言葉を頂きましたのでハッキリと申し上げます。
残念ながら「不自然な文章」は各所にあります。
それが改稿の為か、元々そうであったのかは判断できませんが、私の推測としては元々だったのではないかと思います。
それは「話の繋がりが不自然」ではなく「文章そのものが不自然」な部分が多かったからです。
そして「キャラクター造形」ですが、こちらはもっと深刻です。
主人公に関しては「ほぼ操り人形」に感じます。(師匠は何とも判断できませんが)
ですが【キャラクターの批評】で述べた通り、サブキャラに至ってはそれ以下の「カカシ」です。
本作を「ドラ〇エのような世界観」と述べましたが、サブキャラたちは「ゲームに登場するNPCのようだ」と感じました。
たとえ描写がなくても、彼らは『戦士オリビアの憂鬱』という物語の世界で「生きている」はずです。彼らの言動には、彼ら1人1人の「意思」がなくてはいけません。
もちろんサブキャラですので「説明」などをしてはいけません。「不必要な説明」は冗長になるだけです。
「書かずに表現」ができた時、ようやく彼らは「自らの意思を持ち、世界に生まれた」と言えるのではないでしょうか。
最後にですが、本作は梶野カメムシさまの感想企画に参加されていた作品です。
その内容は読ませて頂きましたが、2ヵ月以上前の事ですので細部までは覚えていませんでした。
批評を書き終えてから改めて読ませて頂きましたが、少なくともストーリーには大幅に手を入れられているようですね。
改稿前は読んでいませんが、「師匠が同行しなくなった」のは良いと思います。
私の結論は梶野カメムシさまとは大分と違いますが、私は「何を置いてもキャラクターが問題」であると感じました。
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