★1 そこに山があったから!
タイトル:そこに山があったから!
キャッチコピー:この山岳部、バカばっか……。
作者:@aizawa_138
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093073767753668
評価:★1
【あらすじ】
クラスの影のキャラである主人公の柊隼人。入学してから二週間も経つが、彼にはどうしても慣れないことがある──。
「柊くん、やっほ~」
「……や、やっほー」
クラスの美少女、空川澄が話しかけてくることである。いつも通り彼女の話に付き合わされていたのだが、この日だけはなぜか違う。
「ねえ、もうちょっと話さない?」
どうやら、みんなの前では恥ずかしくて言えない話があるのだと言う。薄暗い教育工学棟の校舎に柊と空川が二人っきり。これって……告白なのでは⁉
と、いうのも隼人の勘違い。告白なんかではなく、まさかの山岳部への勧誘だった。どうやら、山岳部は空川が作った部活で人数が集まらなければ廃部になるのだとか。強引に入部させようとしてくる空川に渋々屈し、柊も山岳部の一員となる。
その後、様々な活動を通して運動神経抜群の白波渚、隼人と同じくクラスで影の存在の雨宮しずくが入部してくるのだが──。
……名前からもわかる通り変な部活。もちろん、こいつらは『変人』だ。
この部活、バカばっか……。ハチャメチャな山岳部にて巻き起こる青春ラブコメディ!
【拝読したストーリーの流れ】
高校に入学して2週間。新たな生活にも少しづつ慣れてきた主人公「柊隼人」には僅かな悩みがあった。
陰キャで友達もいない自分に、スクールカースト上位のおバカ女子「空川澄」が毎朝話しかけてくるのだ。
そんなある日、「隼人」は「空川」から「山岳部に入ってくれない?」と誘われたのだ。
運動音痴な自分には運動部は遠慮したい。
しかし婦女子ばかりの文芸部や、放送部・外国語部といった会話必須な文化部を選ぶ事もできない。
消去法で山岳部に入る事を了承した「隼人」だったが、部員は「空川」1人だけで、このままでは廃部となってしまうのだった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは良いですね。シンプルで、楽しげな雰囲気が伝わります。
作品内容についてはほとんど分かりませんが、登山者に「なぜ山に登るのか?」と理由を聞くと「そこに山があるから」といった回答も有名ですし、「登山がテーマの作品」だという事が分かります。
下手に説明文などを加えると軽快さが損なわれる可能性がありますので、これで良いと思いますね。
対してキャッチコピーですが、こちらは微妙ですね。
「山岳部」という言葉で部活という事が分かり、学生の物語である事が分かるのは良いのですが……。
「バカばっか」という単語が「機動戦艦ナ〇シコ」の「星〇ルリ」の名言(?)として有名すぎます。
少し古い作品ですので知らない読者も多いかとは思いますが、知っている読者も多くいると思われますので避けた方が無難だと思います。
「キャッチ」としては、元ネタを知らない読者を想定した場合は「弱い」と感じます。そして元ネタを知っている読者を想定すると「パロディを嫌う層も一定数いる」と思われます。
このコピーでは「元ネタを知っていて、かつパロディに肯定的な読者」しか引き付ける事ができないのでは、と思ってしまいました。
【キャラクターの批評】
キャラは、第5話までの時点で主人公を含めて3人が登場しますが、基本的なキャラデザインは悪くないですね。
「ラノベが好きで、陰キャ寄りの主人公」「コミュ強だが、おバカな美少女ヒロイン」「中学で陸上全国大会入賞の運動系ヒロイン」の3名が、それぞれ個性が分かれていて良いと思います。
ですが細かい点を見てみると、言動や設定に謎や違和感を感じます。
運動が苦手なはずの主人公が山岳部に入る理由に違和感を拭えませんし、ランニングで賭けレースをする事になった際の心の動きにも違和感を感じます。
入学して2週間なのに、「空川がモテる」と表現しているのも違和感ですね。「美少女なので男子からの人気が高い」ならまだしも、「モテる」というのは少し表現としては不適切に感じました。
その「美少女ヒロイン」が主人公に頻繁に話しかけて、山岳部に誘うというのも理由が分かりません。彼女にとっての「主人公とは何なのか」が不明です。
また、山登りに対する情熱があまり語られていないのも少し残念ですね。物語を引っ張る「牽引役」なので、ここの行動原理などは早々に明かした方が良い気がしますね。
「運動系ヒロイン」に関しては、「美少女ヒロインに誘われて山岳部に入部した」という設定ですが、「中学で陸上全国大会入賞」までしていながら陸上部に入らないというのは違和感ですね。
いずれも後々に明かされる可能性もありますが、少々謎が多過ぎるように感じました。伏線や謎は、あまり多くすると読者が離れる原因にもなり得ると思います。
もし明かされる事がなければ、それは「ただのご都合」になってしまいますので。
また主人公に関しては、もう少し「芯」を持たせた方が良いと思いますね。少し設定がブレているようにも感じました。(ここは【設定の批評】で後述する「強引さ」が原因かと思います)
最後にですが、第1話での主人公とヒロインには共に「読者の好感を下げるのでは?」と思われる描写がありましたので指摘します。
主人公がヒロインに対して「これだからバカな奴は……」と思うですが、少し言葉がキツ過ぎるように感じました。
この一言だけで読者の主人公への好感も下がりかねないと思いましたので、少しマイルドにするか、発言そのものを消した方が良いかと思います。
そしてヒロインは「あれ、柊くん知らないの? 私が何部に入ってるのかは結構有名だと思ってたよ」と言うのですが、入学して2週間なのに少し自己評価が高すぎませんかね? 「自分をどれだけ有名人だと思っているのか?」と思ってしまいますよ。
個人的には「何だ、コイツ?」と思ってしまいました。
【文章・構成の批評】
文章は基本的には読みやすいと思います。特に大きな問題点は見当たりませんでした。
唯一、懸念点としては第1話~第3話の「最後の一文が現在進行形で締められている」というところですかね。
それぞれ「空川の隣に並ぶ」「弱弱しく拳を当てる」「教室へ向かう」という言葉で締められています。
個人的には「最後の一文は完了形や過去形で締めた方が良い」と考えています。
上記の例なら「空川の隣に並んだ」「弱々しく拳を当てた」「教室へ向かった」ですね。
こうする事で「一区切りがついた」という事が強調されるのではないかと思います。
あと些細な問題ですが、ヒロインの事を「さん」付けしたり、しなかったりと表記ブレがあります。
ただのチェックミスだと思われますが、修正した方が良いですね。
続いて構成ですが、こちらは少し問題点が散見されます。
まず一番の問題点は「時折、状況説明の前にセリフが書かれている」事です。
状況や場面の切り替わりの際、「最初にセリフから始まる」事が多いように感じます。
第3話では、物思いに耽っている主人公に「柊くん、どうし……ちょっと⁉ 何見てるの⁉」と話しかけられます。
第4話では、部室に戻ると「助けて……!」という声が聞こえてきます。
共に唐突に、前の文章からの繋がりを断ち切って上記のセリフが語られる為、読者視点では状況把握が困難です。状況が分からないまま「緊迫したセリフ」が述べられるので混乱は倍増します。
読者を混乱させるのが目的ならば良いのですが、その後に書かれた「緊迫したセリフの理由」を見るとそうは思えません。
同じセリフであっても、「現在の状況」や「誰の声(セリフ)なのか」など、ワンクッションとして説明を置けば混乱も少なく出来たのではと思いますね。
もしくは「普通に話しかけるなどにセリフを変更する」とかですね。
異常事態を示すようなセリフでなければ、混乱は起きないと思います。
また、第4話での「放課後、教室に戻った主人公がイチャつくカップルと遭遇するシーン」は必要なかったのでは? と思います。(個人的には、ですが)
後の伏線となる可能性も捨てきれませんが、第5話までの時点では特に後の話に繋がっている訳でもなく、独立した「ただそれだけの話」になっています。
また「状況には無理がある」と感じました。
「他に誰もいない教室で、イチャつくカップルに気付かれないように体操服を回収する」って、忍者か何かでないと無理だと思います。
「特に意味を感じないイベント」「無理のある状況」である事から「このシーン自体が無い方が良い」とさえ感じてしまいました。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリーですが、「廃部寸前の部活動を通じたラブコメもの」ですね。
問題点……というか残念な点を挙げますと「山岳部である必要は、第5話時点では無い」というところでしょうか。
あくまで第5話時点ではですが、山岳部としての活動は「体力作りのランニングをしただけ」です。
ここは今後次第ですかね。
明確な問題点としては「現状ではラブコメとしての魅力に欠ける」と感じた事ですね。
【キャラクターの批評】で述べた通り、第1話で主人公とヒロインの好感は下げられています。そして主人公に関しては、その後も「読者の好感を稼ぐ行動がない」ように感じます。
決して「極端に嫌われる」という程ではないのですが、「多くの読者に好かれる主人公」でもないと思いますね。
また、「恋愛が全く始まっていない」事が大きな問題として挙げられます。
【あらすじ】を見るとヒロインは3人のようですが、「四角関係」となるのか「ハーレムもの」となるのかも分かりません。これらは読者層が違いますので、作品の方向性を読者に伝える事は急務ではないかと思いますね。
それでは設定ですが、「色々と強引な設定が多い」と感じてしまいました。
まず「山岳部は廃部寸前」との設定ですが、そもそも「部」として設立していないですよね?
物語開始当初で部員は「1年生のヒロイン1人だけ」です。「これから『部』として申請する為に部員を集める」の方が正しい描写だと思いますね。
そう考えると「部室がある」というのも疑問です。
埃だらけの、恐らく物置として使われていたような部室ですが、「廃部寸前」や「まだ『部』として申請していない」なら部室があるのは不自然ですね。
例え去年までは3年生が山岳部として在籍していたとしても、卒業と同時に廃部になってしまうと思います。
そして「文化部が『文学部』『放送部』『外国語部』の3つしかない」というのは考えにくい設定です。他に「美術部」「吹奏楽部」「将棋部」「パソコン部」など、いくらでもあるでしょう。
「生徒は必ず部活動に参加しなければならない」という校則(?)があるなら、なおさらです。
そして上記のような校則があるのなら、恐らく存在すると思われるのが「面倒臭がりの集まった、活動実績がほとんどない部活」です。
例えば「ロクに練習をしない卓球部」なんかですね。(頑張って部活動を行っていた卓球部員の方、ゴメンナサイ。他意はありません)
「主人公を山岳部に入部させる為の設定」である事が透けて見えてしまっています。
山登りに興味が無い主人公を山岳部に入部させる手段としては、強引で下手な設定だと感じてしまいました。
【総評まとめ】
まとめますが、「とにかく設定の煮詰めが甘い」ですね。
文章は及第点ですし、キャラのデザインや描写も悪くはありません。キャラの好感は低く感じますが、今後次第で挽回できる範囲だと思います。
構成やストーリーには少し問題点も感じますが、致命的とまでは思いません。
ですが設定に関しては「雑で強引」だと感じました。
気にしない読者もいるとは思いますが、設定を重視する読者からは見向きもされないと思います。
現状の設定を活かしたまま改善案を考えるのならば「上級生の部長を新たに作る」「主人公が山岳部に入らなければならない理由を新たに作る」ですね。
この2つを考えつかない、もしくは上手く物語に組み込めないのであれば、設定を全面的に考え直した方が良いかと思います。
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