★1 Pa「 」eT


タイトル:Pa「 」eT

キャッチコピー:何も無い自分を、彩りたい

作者:西木 草成

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054892004148


評価:★1


【あらすじ】

 突如異世界に転移した、日本人の19歳の青年「今一色 翔」。ゲームでもないチートもない、魔法を使うこともできない。あるのは代々受け継いできた剣術「今道四季流剣術」と足元に落ちていたパレットソードという名の謎の剣のみ。見慣れない異世界に翻弄されながらも暖かに多くの人に支えられながら成長してゆくハイファンタジー小説。自分とはなにもので、何を為すべきなのか。その両手で守れるものとは、迫りくる運命と脅威に「今一色 翔」はどのように立ち向かうのか。これは、何者にもなれない、されど生きてゆく轍を示す自身の中にある魂のキャンバスに「色」を描いてゆく物語。



【拝読したストーリーの流れ】

 亡き父の跡を継いで道場の師範をしながら遺跡発掘のアルバイトをしていた主人公「今一色 翔」は、気が付くと異世界にいた。

 足元に落ちていた剣を拾ったが、「翔」は必要無いので投げ捨てる。

 「リアルな夢」だと思いながらも歩いていると、やがて町へとたどり着いた。


 親切な獣人に教えられて冒険者ギルドに向かったが、そこで出会ったエルフの受付嬢「リーフェ=アルステイン」の前で気を失ってしまう。


 目が覚めると「リーフェ」の家に寝かされており、そこには捨てた筈の剣があった。

 行く当てのない「翔」は「リーフェ」の家に厄介になる事に……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは、間の文字を「 」の空白にしていて少し変わってますね。

 「色」や「彩る」などの単語があちこちに散見されますので「絵の具などで使うパレット」の事なのだと思いますが……。もしそうならスペルを間違えています。

PALLET とは、運送などで使う「荷運び用の下敷き」です。

PALETTE こちらが「絵の具などで使うパレット」です。


 もし私の思い違いでしたら申し訳ございません。



 キャッチコピーですが、意味がよく分かりませんね。

 何となく深い意味があるような気もするのですが、結論としてはハッキリしません。このコピーで読者に何を伝えたいのかが分からないのです。

 目に留まるようなパワーワードもありませんし、「キャッチ」としての効果は期待できないのではないかと思います。



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが、全体的に不自然さが目立ちますね。思考・行動の流れが自然に感じません。


 序盤から主人公の行動には不自然さが付きまとっていましたが、「夢だと思い込んでいる」「後に倒れた事から、熱中症か何かで頭が働かなかったのかも」と脳内補完をする事でムリヤリ納得させていました。


 ですがヒロイン(受付嬢)の言動は「情緒不安定」としか言いようがありませんね。

 ヒロインの取った行動を羅列しようかと思ったのですが、何か1つ行動する度に意味不明だと感じた為、キリがないのでやめます。

 詳しく知りたい方は作品を読んで下さい。


 正直、ここまでくると「ただの操り人形」ではなく「操り人形による人形劇」のように感じてしまい、逆に少し面白く感じてしまいました。

 きっと作者さまの狙いでは無いと思いますが。



 あとは主人公の名前には第1話からルビを振った方が良いですね。(ルビが振られるのは第2話のラストだけです)

 「今一色 翔」を初見で正しく読める人はいないと思います。苗字も難読ですが、名前の方も「しょう」か「かける」か分かりません。



【文章・構成の批評】

 文章は、基本的には基準以上の読みやすい文章です。

 ですが問題もいくつかあります。


 まずは「誤字脱字が多い」事です。

 特に誤字は結構多いですね。「てにをは」の間違いもいくつかあります。


 そして「表現が回りくどい」事が大きな問題に感じます。

 例えば、第4話冒頭で「まるで汚されていない画用紙のように綺麗な純白だった」という表現がありましたが、これは「新品の画用紙のように」で良いと思いますし、単に「画用紙のように」でも、「紙のように」でも良いと思います。何なら「真っ白だった」でも説明としては事足りますね。


 多少なら、あるいは雰囲気が重要なシーンならこういった表現も必要かとは思いますが、本作は少し多すぎると感じます。

 もう少し控えめにした方が文章量の圧縮にもなって読みやすいと思います。



 次に構成ですが、まず第1話が約6200文字と少し多いように感じます。(第2話~第5話は約3300~4800文字)

 第1話は作品の入り口ですので、少しでも読みやすくした方が良いかと思います。


 そして第1話、第2話は良いのですが、第3話~第5話は少し間延びしているように感じます。

 第3話、第4話では、主人公とヒロインの「現状確認の会話」と「設定の説明」でしかありません。そして第5話では「ヒロインがメシマズ」という話でした。


 ここまで戦闘などの見せ場もありませんでしたし、作品としての方向性も見えず、ひいては作品に魅力を感じない展開だと思ってしまいました。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは「異世界転移もの」以上のものは感じ取れませんでした。

 一応、主人公の生い立ちや過去、父親の存在などが語られ、「転移前の情報が何も無い作品とは違う」という事が分かります。


 ただ5話をかけても転移初日が過ぎただけであり、起きた出来事は町に着き、ギルドで気を失い、受付嬢の家に間借りする事が決まっただけです。



 設定に関しては色々と考えられているように思います。

 主人公の過去もそうですし、魔法や、謎の剣なども色々設定の解説や伏線が張ってあるように見えました。


 ただ現状では「考えられている事が分かる」というだけであり、「面白い設定」や「上手い設定」とは言えません。まだ「設定が明かされただけ」であり、その設定を「物語上で活用していない」からです。

 明かされた設定が活きるかどうかは、今後次第でしょうか。


 あと主人公の流派を作中では「とある流派」と書かれ、明言されていないのですが、【あらすじ】には「今道四季流剣術」と書かれています。

【あらすじ】で明かしているのに、本編で明かしていないのは意味が分かりません。何か理由でもあるのでしょうか?



【総評まとめ】

 一言でまとめますが、「詰めが甘い作品」ですね。

 タイトルではスペルミスをしていますし(間違っていたら本当にスイマセン)、キャラの言動は支離滅裂にすら映ります。文章も間違いが多かったですし、構成には序盤での見所がありません。

 この上でストーリーからは「異世界転移もの」以上のものは感じられませんでしたし、設定を生かしている場面もありません。


 「これから面白くなる」という可能性はありますが、現時点では評価するのは難しいですね。


 個人的には「キャラの問題」と「回りくどい表現」が気になりましたが、まずは単純な誤字脱字などから修正された方が良いと思います。



【追記】

 本作は作者さまのご要望により第16話まで、および閑話「作者の色」を読んで追記いたします。


 ちなみに閑話「作者の色」は話数で言うと140話くらいの位置にあるのですが……。

 作者の西木 草成さまには、何かのお考えがある事を信じます。



 第16話、および閑話「作者の色」を拝読しました。

 結論から申し上げますと「非常に丁寧に物語が進行する作品」ですね。


 お話の多くは主人公とサブキャラクターの交流に割かれており、その関係性がこと細かに描かれています。第16話までの段階では、ギルド長「ガルシア」との関係性が深く描かれていました。


 また、ようやく戦闘描写もあったのですが、こちらも丁寧に描写されています。

 ただ初戦闘が第10話の対ゴブリン戦、その次が「ガルシア」との模擬戦と、やはり作品の見せ場とするには少し遅く感じますね。


 その戦闘描写なのですが、ゴブリンに関しては「数」を表記した方が良いと感じました。

 ゴブリンの登場時(第9話)に「地面を揺らすほどの勢いでなだれ込んでくる足音」という表現があり、実際に戦闘時(第10話)で複数体のゴブリンを倒す描写がある事から3~4体では無い事は分かりますが、正確な数が分かりません。

 正確でなくても良いのですが、おおよその数くらいは明記した方が良いでしょう。


 また戦闘時に主人公は様々な剣術の技を放つのですが、その動きが少し分かりづらいですね。

 作風全体が丁寧なので「リアルな描写」に感じるのですが、技の説明は「少しだけリアルからは遠い」ように感じてしまいました。そのせいで、脳内で技のイメージが掴みにくいと感じましたね。



 あとは設定面なのですが、冒険者の説明で「冒険者イコール危険な仕事というわけでもない」という説明があるにも関わらず、冒険者となった主人公が荒事を選ぶ理由が希薄に感じました。

 この時点の主人公の立場なら、ヒロインが言っていた「製造業」などを選んでもおかしくは無い……というか、その方が自然に映ります。


 また、この世界の文明レベルもよく分かりませんね。

 町の中心に井戸があり、ヒロインの家でもポンプで水を引いている描写がありましたが、ギルドには「お湯の出るシャワー」があります。

 コンロなどもあったり、この世界の生活水準がよく分かりません。


 そして魔力測定に関してなのですが、こちらもよく分からない部分がありました。

 こちらは他作品でよくある「水晶」などの代わりに、「大陸で9本しかない木」に血を垂らして、葉の変化で魔力の種類と量が測定できるという設定になっています。


 その魔力量は10段階があるとの事ですが、その測定方法が書かれていません。(恐らく、落ちてきた葉の量だとは推測できるのですが)


 更に主人公の血を垂らすと葉が透明で「無色」だという事なのですが、誰もがそれが見えないようで「ガラス細工のような見た目をした」とありました。

 「ガラス細工」なら見えますよ? というか、「見た目をした」という事は見えてますよね?


 そして、この世界では「無色」は迫害の対象だという事なのですが……、少し説得力に欠けると感じてしまいました。

 その原因は、登場キャラが誰も主人公を迫害や嫌悪の目で見ていないからです。

 今後は迫害されるという展開もあるのだろうとは思いますが、「今まで優しかったのに、無色と知った途端に手の平を返す」というキャラが1人くらいいると説得力が増したとは思いますね。



 最後に閑話「作者の色」ですが、こちらは本編とは関係の無い「裏話」のようなものですね。

 作者の西木 草成さまの、執筆に対する想いなどが語られています。


 失礼な言い方かもとは思いますが、読者がついていなくても執筆を頑張ろうという決意には敬意を表します。(本心から応援します)

 そして本作が、一度書かれた作品のリメイクだという事も判明しました。

 元の作品がどこまで書かれていたのかは分かりませんが、現在で60万文字以上もありますので書き直すのは大変な決意と努力だったと思います。



 さて第16話までを読んでの再評価ですが、【総評まとめ】で書きました「これから面白くなるという可能性」は示して頂けたように思います。

 序盤に比べて誤字などは少なかったですし、キャラの言動も自然に映ったと思います(こちらも序盤に比べて、ですが)。

 戦闘などの見所も見せて頂きましたし、何よりキャラの魅力を丁寧に見せて貰いました。

 以上の点を踏まえまして、★0から★1に変更させて頂きます。


 【追記】でも色々と突っ込みましたが、本当に見所が無い作品にはここまで細々と突っ込めません。

 手放しで褒めるほどの作品ではありませんが、「まだこれから面白くなる可能性」を秘めた作品だと感じました。

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