★2 ワタシの事が嫌いなキミに、すべてを奪われるシナリオ
タイトル:ワタシの事が嫌いなキミに、すべてを奪われるシナリオ
キャッチコピー:君も僕自身も好きになれたなら、こんな人生も楽しくなるのかな。
作者:双葉音子(煌星双葉)
URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330669444595646
評価:★2
【あらすじ】
過去の出来事により、女性と百合が苦手となってしまったウェブ小説家の青年――椎名燦葉。
ある日、彼は自分のファンを名乗る少女――宮川翌楽と出会った。
翌楽は、燦葉の女性恐怖症を治してみせるといい、2人は頻繁に会うことになる。
だが、2人の過去が、2人の行く手を阻む。
燦葉と翌楽。2人の結末はハッピーエンドか、それともバッドエンドか。
【拝読したストーリーの流れ】
まず最初に、今回の批評では若干のネタバレがある事をお知らせします。
悩んだのですが、ネタバレに触れずに本作の内容を批評するのは無理だと判断した為です。
ネタバレが嫌だという方はブラウザバックを推奨します。
また本作には第0話がありましたので、これを含めた第4話までの批評とさせて頂きます。
2年前のある日。中学生だった主人公「椎名燦葉」は、ずっと好きだった幼馴染の女の子「大狼希夜」に告白した。
だがその告白はなんと「彼女がいるから」という理由で断られてしまう。
好きな女の子が同性愛者だった事に絶望した「燦葉」を更なる悲劇が襲う。同級生の女子たちからイジメを受けたのだ。
それが原因で「燦葉」は女性恐怖症になってしまった。
そして現在、同人小説作家となった「燦葉」は大晦日の日に同人誌を売っていた。
そこに現れた1人の客「宮川翌楽」との、お金の受け渡しで手が触れてしまった「燦葉」は悲鳴を上げてしまう。
「燦葉」のファンを名乗る「翌楽」は、「燦葉」の女性恐怖症を治す為に協力する事を宣言する。
女性恐怖症でありながらも「翌楽」に惹かれる「燦葉」。
ただの推しである以上に「燦葉」に惹かれる「翌楽」。
だが、「翌楽」には既に恋人がいて……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルですが……、何の事か分かりにくいですね。
まず「ワタシ」という人称代名詞から、このタイトルはヒロイン目線である事が分かりますが、それが分かるのは「作品を読んだ後」です。
更にその後に続く言葉も第4話までの時点ではハッキリせず、何を伝えたいのかが分かりません。
「何となく不穏な雰囲気だ」という事しか、このタイトルからは読み取れませんでした。
次にキャッチコピーですが、こちらは主人公目線ですね。
こちらもタイトルとほぼ同様に、何の事かがサッパリです。
更に「君も僕自身も好きになれたなら」という文章が少しおかしく感じます。
これでは「誰が誰を好きになる」と言っているのかが分かりません。
「君も僕も、自分自身を」という事でしょうか? それとも「君も僕も、僕自身を」という事なのでしょうか? もっと単純に「君が僕を」でしょうか?
タイトルと同様に、最も読者の目に着くコピーでこのような文章を書いてしまうと、それだけで見限る読者もいるかも知れません。
【キャラクターの批評】
キャラクターですが、第4話までの時点では主人公とヒロインの2人以外は殆ど登場していませんでしたので、この2人についてのみ言及します。
まず設定は良いですね。
中学生という多感な時期に幼馴染に告白したら同性愛者だったなんて、それだけでショックです。しかもその後に同級生の女子たちにイジメられたら女性恐怖症になるのも仕方ありません。(どのようなイジメかは書かれていませんが)
そこに現れた、主人公に好意を寄せるヒロインが女性恐怖症を治す為に行動するなんて、それだけで面白くなりそうですね。
ただ少し話の流れが強引すぎて、2人ともの行動に違和感を覚えました。
いくら相手が好きな作家でもヒロインの行動は度を超えています。殆どストーカーのレベルです。
しかも主人公の方もおかしく、出会ったばかりのヒロインに自身のトラウマを打ち明けてしまいます。
出会ったその日に連絡先を交換し、互いに相手を意識して、翌日には初詣デートをします。
展開が急すぎて、感情移入する事が出来ませんでした。
ヒロインはともかく主人公は女性恐怖症という事なのですから、もう少しゆっくりと話を動かしても良かったのではと思います。
また主人公が「男の娘」である事は、もう少し早く自然に読者に伝えた方が良かったと思います。
第3話の冒頭で帰宅した主人公がお風呂に入るシーンがあるのですが、それが主人公である事を伏せたまま「結んでいた髪を解き」とあったので「ヒロイン目線」だと思ってしまいました。(主人公の髪型はポニーテールのようです)
ついでなのですが、この時に書かれてあった「包帯を外し」とは何でしょう?
それ以前の話に包帯なんて表現はありませんでしたよね? 何かの伏線だとしてももう少し自然に見せた方が良いと思います。これでは違和感しか感じません。
【文章・構成の批評】
文章は、あまり良いとは言えないですね。
誤字脱字が多く、読点が少し多い為に文章がうるさく感じる部分があります。
また、主人公とヒロインの名前が読みづらいですね。
「
そして私が一番問題だと感じたのが「表現が飛び過ぎて、何を言っているのか分からない」という事です。
伝えるのが少し難しいのですが、キャラの感情の動きに適切な表現を挟んでいない為、読者に伝わらないまま勝手に話が進んでいるように感じてしまいました。
恐らくですが、「先の展開ありき」で話を書いている為に「正しい感情の動き」を表現できていないのだと思われます。
これが【キャラクターの批評】でも書いた「話の流れが強引すぎて違和感を覚えた」原因だと思います。
次に構成に移りますが、流れ自体は良いのですが、かなり極端に感じました。
まず第0話で非常に本作に惹き込まれました。
理由は、主人公の中学生時代のトラウマが強烈で感情移入してしまったからです。
ですが第1話~第3話の半分まででは、本作への期待はどんどん下がって行きました。
原因は、キャラに共感が出来ないまま、あっという間に両想いとなってしまったと感じたからです。
ですが第3話の後半で急転直下の出来事が起きました。
詳しくは【ストーリー・設定の批評】で述べますが、ここで本作の期待度は跳ね上がりました。
第4話は正直、第1話~第3話前半と同じ感想ですね。
特に面白いとは感じませんでした。
物語に起伏があるのは良い事だと思いますが、本作はそれが極端ですね。
構成全体としては何とも評価しづらい感じです。
【ストーリー・設定の批評】
ここまでを読んで「この作品、★2じゃないの? 酷評過ぎない?」と思われたかも知れませんが、私がこの作品を評価したのはここにあります。
【拝読したストーリーの流れ】にもチラリと書きましたが、ヒロインには恋人が……、「彼女」がいるのです。そう、「彼女」です。
その彼女とは当然、中学生の時に主人公を振った幼馴染「希夜」です。
ヒロインが同性愛者。しかもその恋人は過去に主人公を振った相手。
とんでもない三角関係です。
もうこの設定だけで面白くなる気しかしません。
本作は現時点でまだ第4話までしか公開されていませんが、今後「希夜」が深く関わる事でどのようにストーリーが動くのか、非常に気になりますね。
【総評まとめ】
総評ですが「設定は文句なく★3。だがそれ以外は要・精進」といったところでしょうか。
先ほど「設定だけで面白くなる気しかしません」と書きましたが、実際には「設定だけの駄作」は大量にあると思います。
私は「物語を面白くさせる最重要項目はキャラクターだ」と考えていますが、本作のキャラはイマイチだと感じました。
何より結局「小説は文章が良くなければ面白く読めない」と思いますので、そちらの精進も必要かと思います。
今後のストーリー展開も含めて、本作を生かすも殺すも作者の双葉音子(煌星双葉)さま次第ですね。
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