★1 萌えてんじゃねえよ、人類


タイトル:萌えてんじゃねえよ、人類

キャッチコピー:見てください、この顔を。どうです? 超が付くほどの美少女でしょう?

作者:千日越エル

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093078198130600


評価:★1


【あらすじ】

《萌え概念》と一体化した少女たちを殺すため、一人の少年が暗躍する。

ある夜、少年のもとに現れたのは《天使》の少女だった。

彼女を殺そうとする少年だったが、一筋縄ではいかないようで——。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作の作者である千日越エルさまは、前回批評させて頂いた『容姿だけが取り柄の女子高生・三船巴と世界滅亡の願いごと』の作者でもあります。


 また、本作には「序」という名前のプロローグがありましたが、365文字の短いエピソードでしたので第5話までを読んだ批評となります。



 いつからか、世界は《萌え》で飽和していた。

 《幼馴染》《魔女っ子》《義理の妹》《メガネっ子》《女教師》《異世界人》など、女の子たちは様々な《概念》を持ち、全てを《萌え》させてくる――。


 かつては、そんな《萌え》に対抗する者たちが居た。

 《萌え》の体現者たる者たちを殺す者――「殺し屋」。その最後の一人こそが主人公「破竹悠」だった。


 そんな最後の殺し屋、「悠」の前に1人の少女が現れる。

 彼女の頭上にはリングが浮かび、背には翼が生えていた。《天使》の《概念》を持つ概念持ちタイトルホルダー「有井優可」だった。

 「悠」は自身を《萌え》させようとする「優可」を殺そうとしたが《天使》は不死身で殺す事が出来なかった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは文句なく素晴らしいですね。

 ストーリーなどが分かる訳ではありませんが、作品内容に沿っていますし、短くて覚えやすく、なによりインパクトが凄まじいです。


 ストーリーが想像出来なくても……。いや、想像できないからこそ「ちょっと読んでみようかな」という気になってしまう読者もいると思います。



 キャッチコピーですが、こちらも良いと思います。

 恐らく「天使」のセリフなのだと思われますが、非常に「ウザったいセリフ」が個性的で良いですね。

 こんなセリフを吐くキャラがいる、というだけで作品に興味が湧きます。


 ただこれは私の個人的な感想なので、「ウザったいキャラ」に魅力を感じない読者は逆に敬遠する可能性もありますね。



【キャラクターの批評】

 本作は1話の文章量が非常に少なく(1000文字前後)、第5話までの時点では詳しい設定の詳細などは分かりませんでした。

 キャラの設定もほとんど分からず、主人公は「殺し屋」で、《萌え》の概念を持つ少女を殺そうとしている事くらいしか分かりません。


 なぜ「殺し屋」になったのか? なぜ主人公以外の「殺し屋」はいなくなったのか? 《萌え》を放っておいたらどうなるのか?

 全ては謎です。

 ヒロイン(?)の「天使」も同様ですね。その動機も目的も、なぜ存在しているのかすら不明です。


 ただ、主人公とヒロインの関係性は良いですね。

 ヒロインの命を狙う主人公と、主人公を《萌え》させようとするヒロイン。敵対関係にある2人の構図が非常に良いですね。



【文章・構成の批評】

 前作と同じく、文章のレベルは非常に高いですね。

 本作は一人称で描かれ、前作とはまた違った作風ですが安定した読みやすさがあります。


 ただ、前作と同じく「セリフの間に空行が無い」という問題点があります。

 特に「セリフとセリフの間の短い地の文」にも空行が無かったので、数十行にわたって空行が無かったりもします。


 あとは細かい指摘なのですが、第1話で「横になろうとしていた」と説明されていた主人公が、話のラストでは「カップラーメンを啜る手を止めて」となっています。

 描写のし忘れ、ですかね?



 構成に移りますが、「話の流れ」という意味では評価できません。

 先ほど申し上げた通り、1話の文字数が少なくて話が進んでいませんので。【拝読したストーリーの流れ】で説明した所までしか話が進みませんでした。


 ただエピソードの最後の、次話へのヒキは弱いと感じる部分も多かったように思います。

 完全に「話の途中」で終わっているエピソードもあり、ブツ切り感がしました。

 これも1話の文字数が少ないからですね。


 個人的にはですが、エピソードの終わりはある程度キリの良い所で終わらせた方が良いと思います。

 本作の文字数を少なくされたのは、毎日投稿などを意識してでしょうか? 確かにそれなら分からなくも無いですね。

 投稿を短いスパンで定期的に行うのは、読者獲得の上で重要だと思いますので。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーに関しては割愛します。

 【拝読したストーリーの流れ】で説明したものでほぼ全てです。



 設定は、かなり独創的で面白そうですね。

 「殺し屋」と「概念持ちタイトルホルダー」の対立、「殺し屋」が消えた謎、そもそも《萌え》とは何なのか。


 ギャグのような設定ですが、本作のジャンルが何なのかは私にもまだ分かりません。(作品は「現代ファンタジー」で登録されています。またジャンルが特定できるようなタグはありませんでした)


 シリアスでも、ギャグでも、ラブコメでも、今後の展開次第でどのようにも化けそうで、良い意味で先の展開が予想出来ません。



【総評まとめ】

 前作もそうですが、作者の千日越エルさまの考えるお話は独創的で面白そうですね。その発想力に脱帽です。

 文章のレベルも高いのですが作風が1つに固まる事無く、作品ごとに違うテイストで書かれているのにも感服します。


 本批評では「5話までを読んで批評する」というルールで評価しましたので★1とさせて頂きましたが「それは文字数が少なくて、評価するにはまだ作品が見えてこなかったから」です。

 それでも「先が気になる面白さ」を感じましたので、★0ではなく★1とさせて頂きました。



【追記】


 作者の千日越エルさまよりご要望がありましたので第14話までを追記させて頂きます。


 まず、「《萌え》と概念持ちタイトルホルダーとは何か?」との疑問が大方解決しました。それに伴い《萌え》を推進する「萌義党」という組織と、それに反発する「殺し屋」の構図も見えてきました。


 《萌え》の概念に対してに萌えてしまった人間は堕民と呼ばれ、概念持ちタイトルホルダーに逆らうことが出来ず一種の洗脳状態になるという事です。

 元々、第5話までの時点で感じていた事ではありますが、やはり面白い設定ですね。


 ただ展開は非常に遅く、第14話までを読んでも未だに「本作がどういった方向性なのか」がハッキリとはしませんでした。

 第14話までで起きた事は「『天使』が現れて、お互いに萌えさせる事も殺す事も出来ず、『天使』が帰った」だけです。


 コメディ色が強いのは間違いないのですが、それは《萌え》という言葉のイメージのみで、意外としっかりと作られた設定が少し重く感じます。


 ヒロイン(?)の「天使」との関係を見せる「ラブコメ」かとも思ったのですが、「天使」とは第14話で別れ、章タイトルを見ると次からは「女教師」「ナース」「妹」そしてまた「天使」が描かれるようなタイトルです。


 また、「殺し屋」と「概念持ちタイトルホルダー」の「能力バトル」だとしては、未だにバトルが起きていません。

 主人公が何らかの能力を持っているのかも不明であり、恐らくバトルそのものが起きる事も無いとは思います。


 《萌え》を中心とした敵対構図、それに所属するキャラたちの配置は良いと感じましたが、「読者にどんな作品を見せるのか」がハッキリとしていないと感じます。

 一言で申し上げるなら「ジャンル」ですかね。


 私は【ストーリー・設定の批評】で「シリアスでも、ギャグでも、ラブコメでも、今後の展開次第でどのようにも化けそう」と書きましたが、全てが中途半端に感じてしまいました。

 どれか一本……ではなくとも、メインとなる「支柱」はあった方が良いと思いますね。「化ける」事の無いタヌキは、タヌキのままです。

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