★3 サクラに狂わされる
タイトル:サクラに狂わされる
キャッチコピー:桜の木の下に埋まっていたのは?
作者:野々宮 可憐
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093078627419717
評価:★3
【あらすじ】
高校二年生の春に桜の木の下を掘ってみた良太は、良太の理想の女の子に出会う。女の子の正体とは?
【拝読したストーリーの流れ】
本作の作者は、前回の『空の屋上』と同じ野々宮 可憐さまです。
前回お知らせした通り、「カクヨム甲子園」に出品予定となっているこちらの作品を優先して批評させて頂きます。
批評待ちの作者さま方には大変ご迷惑をお掛けしますが、どうかご容赦下さい。
本作は1話完結の短編です。
高校2年生の主人公「良太」は桜の木の下を掘っていた。
過去に、確かにここに「何か」を埋めたのだ。しかし「良太」はそれが何かを忘れていた。だから無我夢中で掘っていた。それが「何か」を知りたくて……。
やがて掘った穴から出てきたのは、着物を着た少女だった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
タイトルは良いですね。
桜は多くの人を惹きつける、不思議な魅力のある木です。そこに「狂わされる」という、なんともホラーテイストな文言が恐ろしくも興味を掻き立てます。
古来より、桜はホラーのモチーフ等によく使われますし相性はバッチリですね。
対してキャッチコピーですが、こちらは少し淡白に感じますね。
作品内容を指し示しているのでそこは良いのですが、もう少し雰囲気のある表現が出来れば良いと思います。
タイトルとコピーだけを見れば、大きな問題は感じません。
問題は、「ここだけを見ればホラー作品だと誤認する可能性が高い」という事ですね。
まず本作のジャンルは「現代ドラマ」で登録されています。そして本文を拝読した感想としては「ホラーっぽい雰囲気も一部あるが、決してホラーではない」ですね。
個人的な意見としては、カクヨムのジャンルの中から選ぶなら「ミステリー」だと思います。(「現代ドラマ」ではない、などと言う気はありませんが)
【キャラクターの批評】
キャラは桜の木の下から出てきた少女の、明るく天真爛漫な性格が魅力的で良かったですね。
前作、『空の屋上』に登場した「先輩」とほぼ同じ性格です。
両者を比較すると、設定上もったいぶったセリフが多く、その点は「先輩」よりも魅力が劣って見えました。(個人的な好みの範囲ですが)
しかし散々もったいぶったのに、簡単に主人公に秘密を暴露するのには少し違和感を感じました。
特に大きなキッカケなどは無く、会話の流れで秘密を伝えます。「なら何で、最初はあんなにもったいぶってたの?」と思ってしまいました。
話を最後まで読めば、少女が秘密をもったいぶる理由は特に無いんですよね。(むしろ、主人公に秘密を伝えるのが目的まであります)
なのに序盤でもったいぶったのは、好意的に解釈するなら「少女のいたずら心」、悪意的に解釈するなら「物語の都合」ですかね。
読者に悪意的に解釈されないように、少女が「もったいぶっていた理由」を入れた方が良いかも知れませんね。
【文章・構成の批評】
文章は前作と同じく、キレイで読み易く、センスのある表現なども見られます。
ただ問題点も同じで、「冒頭が理解し難い」という問題があるように見えました。申し訳の無い評価をしますが、作者の野々宮 可憐さまは「物語の冒頭を、初見の読者に解りやすく書く」という事が不得手のように見受けられます。
前回も書きましたが「物語冒頭では読者の作品知識はゼロ」です。知識がゼロの人に解るように読ませる為には、これでもかというくらい解りやすく書く必要があります。
これが出来なかった時、冒頭で躓いてしまった読者の一部は「その先を読む事なくブラウザバックする」可能性があります。理解出来ないまま読み進めるのは、少なからずストレスを感じますから。
構成に移りますが、こちらは文句のつけようが無いですね。
「桜の木の下を掘り起こす」「少女が現れる」「謎が深まる」「最初に掘り起こそうとした理由が判明する」「同時に、少女の正体も判明する」「エピローグ」
と、このような流れで物語は推移します。無駄がなく、非常に良いですね。
前作とは違い、文字数が4000文字に収まっているのも読み易い分量ですね。
【ストーリー・設定の批評】
こちらなんですが……、あまり語ってしまうとネタバレになってしまうんですよね。
ですので曖昧にはなってしまいますが、素晴らしかった点と、これから本作を読もうと思っておられる方への注意点をボカしながら書かせて頂きます。
素晴らしかった点は、作中にあった「ギミック」ですね。
4000文字の作品ですし、決して複雑な仕掛けではありません。でも、たった一つの「答え」が出ただけで複数あった「謎」が全て解けたのは、気持ち良かったですね。
そして注意点なのですが、本作のテーマには「ある事柄」が含まれています。
「それ」は、人によっては嫌悪感を示すものかも知れません。(「それ」が何かはタグにもありません)
恐らく大半の読者は気にしないものと思いますが、一応注意点とさせて頂きました。
そしてラストなんですが、良い終わり方だと感じました。
主人公だけだった狭い世界が、ラストシーンで外にも向けられていたのは本当に良かったですね。
【総評まとめ】
非常に良く出来た作品でした。
ストーリーのギミックや構成バランスなどから、作品としての完成度は前作の『空の屋上』よりも上だと感じます。(もちろん好みによって評価は変わりますが)
課題としては、冒頭の理解し難さの改善ですね。
ここは本当に、「言葉を少し足したり、説明の順番を変えるだけで理解のしやすさがガラッと変わる」という場合もあります。
でも執筆前から作品知識を持っている作者には、その変化が分かりにくいんですよね。
なるべくフラットな気持ちで読み返して、変化に気付くしかありませんね。
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