★3 空の屋上


タイトル:空の屋上

キャッチコピー:この奇跡は君だけが知っている

作者:野々宮 可憐

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093079229091805


評価:★3


【あらすじ】

空の屋上、そこには謎の少女がいる。僕にしか見えない少女──先輩は何者なのか?これは、僕と先輩の青春が開花するお話。



【拝読したストーリーの流れ】

 まず皆様にお詫びを申し上げます。

 本来は、ほしレモン様の作品『あの夏の終わり、夜空の下で 君と見た光を。』を批評させて頂く予定でしたが、野々宮 可憐さまの著作である本作と、もう1作『サクラに狂わされる』を「カクヨム甲子園」に出品される予定との事ですので、順番を前後して先に批評させて頂く事にいたしました。


 作品の推敲には、時間はいくらあっても良いと思います。

 ほしレモン様以下の、批評待ちの作者さま方には大変ご迷惑をおかけしますが、どうかご理解を頂ければ幸いです。


 同様に、何らかの理由で「先に批評して欲しい」という方はご連絡下されば検討させて頂きます。


 本作は1話で完結し、その後日譚を合わせた2話の構成となっております。



 文化祭の準備期間の1ヵ月間以外は立ち入り禁止となっている学校の屋上には女生徒の幽霊がいる。その事を主人公「空本 開青」は、1年前から知っていた。


 明るく、天真爛漫な幽霊である「先輩」に「開青」は惹かれていく。

 相手は幽霊であるにも関わらず好きになってしまっていた「開青」は、去年の文化祭の花火の打ち上げに合わせて告白した……。のだが、小声すぎて届く事は無かった。


 それから1年後。高校2年の夏。今年も「先輩」に会える1ヵ月が始まる――、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは非常にシンプルですね。

 ただ、物語の最初の1文が「からの屋上、立ち入り禁止の屋上」という言葉から始まっています。

 もし、タイトルの「空」の読みが「から」なら「空(から)」などのように読み方を表示した方が良いと思います。


 それとも「そらから、どちらでも読めるダブルミーニング的」な意味で、あえて読み方を書いていないのですかね?

 それならば現状でも問題は無いと思います。



 キャッチコピーですが、こちらもシンプルですね。

 ただしタイトルもですが、「作品内容が予想できない」という欠点があります。


 残念ながらタイトル・コピーともに「キャッチ」の効果は薄いと思いました。



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが、何よりヒロインが魅力的で素晴らしいですね。

 「明るい幽霊」というテンプレではありますが、ただただ素直に「テンプレの魅力」を余すことなく表現できた良いキャラだと思います。


 ただ、主人公と将来の夢について語った時に「君と結婚できる人は幸せだねぇ〜」というセリフは少し不自然に感じました。

 同様に、主人公の同級生が現れてヒロインが主人公を見送る際に「貼り付けたような笑顔」で見送った場面も惜しいな、と感じました。


 他の部分でヒロインのキャラや性格は存分に表現されていますので、ここはストレートに心情を見せるよりも少しボカした方が良かったのではと思います。



 他の点としては、先生からヒロインの秘密を聞き出すシーンが挙げられます。

 主人公から幽霊の存在を聞いた先生は、少し理解が早すぎるように感じましたね。


 この点については難しい所ですね……。

 先生に「常識的な反応」をさせれば物語が進みませんし、物語をスムーズに進める為には先生に「異常に理解が良い反応」をさせなければなりません。

 ヒロインの秘密については「先生から話を聞く」以外の方法を考えた方が良いかも知れませんね。



【文章・構成の批評】

 文章は普通にキレイで読み易く、時折センスのある言葉が光ります。

 タイトルの「空の屋上」もそうですね。


 他には「炭酸が弾けるように笑った」や、帰宅部を揶揄して「目指せインターホン」という言葉も面白かったです。

 作中で取り上げられていた「空気を読まない空」や「嗚呼!! なんて素敵な伽藍堂!」も感心しました。


 ただ、物語の冒頭が理解し難いと感じました。


 「屋上のドアを開けようとしたら熱すぎてハンカチで掴む」というシーンから始まるのですが、ここから連想されるのは「屋上から校舎内へ戻る」となると思います。ドアノブが熱されているのは、太陽光によってだと考えられるからです。

 ですが実際は逆で、「校舎内から屋上に出るシーン」だという事が書かれています。


 また、「セリフが誰のものか分からない」という問題も発生している様に感じました。

 物語冒頭では読者の作品知識はゼロですので、ここはもう少し分かりやすい展開や表現にした方が良いと思いますね。



 次に構成ですが、ここは少し賛否が分かれそうですね。

 ヒロインと過ごす1ヵ月を1日1日丁寧に書かれているのですが、そのせいで展開が遅く冗長にも感じます。

 個人的にはキャラを丁寧に描写された物語は好きなのですが、おかげで本文の文字数が18000文字を超えており、そこに難色を示す読者もいるかも知れません。


 また第2話の「番外編」とされている後日譚ですが、本編がキレイに終わっていますので、こちらも読み手によっては「蛇足」だと感じてしまうかも知れませんね。


 後は、主人公の名前が出てくるのが遅く感じましたね。

 一人称で描かれていますし、改めて自己紹介をするのも変だとは思いますが、序盤に「自然に名前を読者に知らせる会話など」があれば良かったと思いますね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは「幽霊との恋愛もの」のテンプレですね。

 ストーリーだけを見れば使い古されたものであり、何の目新しさもありません。


 ですが先ほど申し上げたように、本作は主人公とヒロインの関係を非常に丁寧に描いております。

 「幽霊と過ごす」という非日常を日常的に、本当に丁寧に描かれています。


 「ストーリー全体」を見れば目新しさの無い作品ですが、1つ1つのエピソードは「進路」や「同級生」など、良いエピソードに溢れていました。



 設定に関してなんですが、「屋上」の設定は少し強引だと感じました。

 基本的に立ち入り禁止となっている屋上ですが、「文化祭の準備期間の1ヵ月間は解放される」というのは疑問ですね。

 またその準備期間が「夏休みの1ヵ月間」というのも疑問に感じました。


 私は文化祭の事情には詳しくはないのですが、夏休み期間に準備をするというのは一般的なんですかね?


 また、物語後半で「屋上が立ち入り禁止になっている理由」も明かされるのですが、その理由を聞けば「普通は全面閉鎖じゃない?」と思ってしまいます。


 本作の面白さを阻害するような致命的な問題だとは思いませんが、「少し無理があるな」と感じてしまいました。


 最後に、本作で登場する「セントセシリア」という花なんですが、少し調べてみたところ花言葉に「君のみが知る」というものがありました。

 本作にマッチした、素敵な花ですね。(写真を見て「こんなハデな花の髪飾りしてるの⁉」とは思いましたが、まぁ創作キャラですしね)



【総評まとめ】

 本作は「ヒロインが非常に魅力的なテンプレ作品」だと感じました。


 時々言っていますが、私は「面白い作品には必ず魅力的なキャラがいる」と考えています。逆にいえば、「魅力的なキャラさえいれば、それだけで面白い作品に成り得る」とまで思っております。

 少し極端かも知れませんが、それだけ「キャラは重要だ」と考えているという事です。


 本作のヒロインである「先輩」は、非常に明るく可愛らしいキャラです。

 主人公が好きになってしまうのも仕方ありませんね。



 私自身は本作を楽しく読めたので★3と評価しましたが「カクヨム甲子園」に出品されるとなると、いくつか改善点はあると思います。


・冒頭シーンを分かりやすく修正

・テンポを良くする為、全体の文章量を圧縮

・「屋上の設定」や「ヒロインの秘密」などの無理のある個所を改善

・本作独自のオリジナリティを出す


 などですかね。


 正直、冒頭シーンの件以外は作品に大きく手を入れなければならないので、非常に難しいと思います。

 「カクヨム甲子園」へ向けての推敲を頑張ってくださいっ。

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