★3 メス堕ち若君は堅物狼の×××がほしくてたまらない


タイトル:メス堕ち若君は堅物狼の×××がほしくてたまらない

キャッチコピー:どんなに淫らに堕ちても翳らぬ魂の輝きが彼にはある。狼よ己が忠義を尽くせ

作者:続セ廻

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093073916424054


評価:★3


【あらすじ】

人間と、獣の形質を色濃く残す獣人、爪牙(そうが)族。朝廷は東西に分断し、戦と平穏を幾度も繰り返している。


先の戦で若き武将を庇い、怪我により失明した爪牙族の大神十兵衛(おおがみじゅうべえ)は故郷で按摩をし、妻を亡くした寂しさを抱えながらも平穏に過ごしていた。

そんなある日、十兵衛の元へ珍しい客人が一人訪れる。ボロボロの姿で、都よりはるか北の爪牙の集落へたどり着いたその者こそ、先の戦で十兵衛が庇った若き武将、今生陛下の第四親王篤実雪政(あつみゆきなり)であった。

目の見えぬ十兵衛に篤実親王は、己の世話をしろと命じ気を失ってしまう。十兵衛はかつての主君の正体を隠しながら、生活を共にせねばならなくなり。


一方、離れた宿場町では旅人に宿の提供を強請る、美しくもひどく淫らな雪女男の噂が流れていた。集落へ帰ってきた十兵衛の友人である薬売りは、篤実が雪女男ではないかと疑い――。

気高き主君の淫らな裏の顔とは。主従関係が故に越えられない一線、己の存在意義の揺らぎに苦しみ、傷ついた主君と如何に向き合うのか。



【拝読したストーリーの流れ】

 ……えっとですね、批評を行う前にこれだけは宣言させてください。

 「私にBL趣味はありませんっ!」(多少の耐性はありますが)

 決して無暗に嫌ったり、好きな方を非難するつもりなどありませんが、この事を踏まえた上での批評である事をご了承ください。


 また本作のエピソードのナンバリングは「一」「二」と漢数字で振られていますが、本批評内では「第1話」という風に呼称させて頂きます。


 次に本作には「性描写有り」のセルフレイティングが付けられています。

 拝読した所「殆ど成人向け作品」だと感じました。18歳未満の方が読まれる事はお勧めしません。(あくまで大人として注意させて頂きました)



 国は、治めるべき朝廷が東西に2分されて争っていた……。

 東朝の軍で槍衆のまとめ役を担っていた爪牙族(獣人)の主人公「大神十兵衛」は、軍を指揮する大将であり第四親王である「篤実雪政」と出会う。

 「十兵衛」は幼い「雪政」に人を魅了する強い統率力を感じ、自身の主君と認める。

 戦いは見事に勝利したが「十兵衛」は「雪政」を庇い、視力を失う大怪我を負ってしまった。


 それから5年……。

 田舎村で按摩師(マッサージ師)をしていた「十兵衛」の元へ「雪政」が訪れる。

 「雪政」の事情は分からないが、主君の命に従い世話をする「十兵衛」。

 だが「十兵衛」は「雪政」を淫らな目で見てしまい……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルからしてヤバいですね……。完全に「成人向け同人誌のタイトル」です。

 ……ここからはマジメに批評します。


 まず一般(BLに興味が無い or 抵抗がある)読者は、絶対に読んでくれないと思います。

 ここの読者層を獲得したいなら、タイトルは変えるべきだと強く思います。


 そしてBL好きの読者に対してなんですが、こちらも難しいですね……。

 少し構成の話になるのですが、本作の第1話にはBL要素は無く、非常に重厚な「和風ファンタジー」による合戦前の話が描かれています。

 BLを期待してこれを見た読者は「期待したものと違う」と思って離れてしまうのではないでしょうか。



 次にキャッチコピーですが、作品をよく表したコピーだとは思います。

 ですが2点、問題点があると感じました。


 1つは「前半の『彼』が誰を指すのかが分からない」という点です。

 作品を読めば「雪政」だという事は分かりますが、読むまでは「十兵衛」の事だと勘違いする可能性もあると思います。

 些細な問題だとは思いますが、要らぬ誤解は避けた方が良いでしょう。


 もう1つは「タイトルと比べてコピーが浮いている」と感じました。

 これは本文にも言えますが、タイトルとのギャップが激しすぎます。一応、タグには「タイトルと本文の温度差は仕様です」とありますが、コピーとの温度差も相当のものです。



 やはりここでの問題は「あまりに露骨なタイトル」にあると思いますね。

 タグに書かれている通り、作者である続セ廻さまは承知の上でなされている様子ですが「読者を得たいなら」タイトルを変更した方が良いとは思いますね。

 あくまで「読者を得る」という事を至上目的とするのなら、ですが……。



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが、非の打ちどころがありませんね。

 名有りのメインキャラはもちろん、名無しのモブたちですら違和感なく描かれています。彼らの言動に不自然さは微塵もなく、まさしく「この世界で生きている」のだと感じさせられました。

 ハッキリ申し上げて、ここに私が口出す余地はありませんね。



【文章・構成の批評】

 文章も最上級です。

 読み易く、情緒も感じ、心理描写も丁寧で、語彙も豊富です。

 私などよりも遥かにレベルの高い文章であり、指摘するどころか勉強させて頂いた気持ちです。


 ただ1点だけ申し上げるのならば、語彙が豊富で難しい単語を多用されているのですが「読めない文字」も多かったと思いましたね。

 一部にはルビが振られていましたが、それでも多くの読者が読めない文字は多いと思います。面倒だとは思いますが「難しい文字には全てルビを振る」くらいの気持ちで行った方が良いと思います。(「たらい」なんて漢字は初めて見ました)



 次に構成ですが、本文だけを見た場合は良いと思います。

 第1話で2人の出会いと関係性を描き、第2話からはその5年後での新たな関係とBL要素も描かれます。第5話では別視点で描きながら、「雪政」の秘密(?)を匂わせているのも良いと思いました。


 ただ【タイトル・キャッチコピーの批評】でも申し上げましたが、タイトルと第1話のギャップが激しすぎますね。

 私は第1話の途中までを読んで、タイトルを2度見してしまいましたよ?

 ここの落差が激しいと離れる読者も多いと思いますので、「読者獲得が目的ならば」タイトルか第1話のどちらかは変更した方が良いと思います。


 ただ、どちらも変更が難しい事は察します。

 ですので安直ですが、「第1話の前にプロローグを設けて、そこで見所(本作の場合は情事ですね)を見せる」という事を提案します。

 これを第1話の前に見せればタイトルとのギャップは無くなります。恐らく、タイトルに惹かれてやって来た読者を落胆させる事は無くなるのではないでしょうか。



【ストーリー・設定の批評】

 ここも口を挟む余地がありませんね。

 私はBLの造詣が深い訳ではありませんが、「BLもの」としての面白さも十分にあると感じました。(面白さの基本は「恋愛」や「ラブコメ」と同様だと考えています)

 主人公は仕えるべき主君に懸想を抱くのですが、それを何とか自制しようとする姿がもどかしくて良いですね。


 そして「BLもの」でありながら、本作は「本格和風ファンタジー」の顔も持ち合わせております。

 先ほど申し上げた通りその設定や描写は重厚で、ただの「和風ファンタジー」としても十二分に面白いものと思います。



【総評まとめ】

 ここは単純に感想を言わせて頂きますが「とんでもない作品」だと感じました。良い意味でも、そうでない部分でも「とんでもない」以外の言葉が浮かびません。


 作者である続セ廻さまは間違いなく、私などより遥かに高みにおられる作家さまです。その文章力・表現力・構成力・魅せ方、全てがハイレベルです。

 ただ……、このジャンルで覇権を獲るのはムリでしょうかね?

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