★1 隣の席の広島弁美少女が俺のことを好きっぽい件。


タイトル:隣の席の広島弁美少女が俺のことを好きっぽい件。

キャッチコピー:すごい距離近いけど……あの、初対面ですよね?

作者:霜月 猫

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330666449758024


評価:★1


【あらすじ】

横臥学園(おうががくえん)に通う高校二年生の飛鷹裕也は、眠ることが何よりも大事。

そんな彼は、夢でたまに見る少女のことを考えながら平穏な学生生活を送っていた。


ある日、貧乳な美少女転校生(広島弁)がやってきて、裕也の平穏な日常(睡眠)はめちゃくちゃに―――!?


学園を舞台に繰り広げられる、甘々純愛ラブコメ!



【拝読したストーリーの流れ】

 高校2年生の主人公「飛鷹裕也」のクラスにある日、転入生がやって来た。転入生の名前は「松永柚」、広島弁をしゃべる美少女だ。

 彼女は突然主人公を「ゆうちゃん」と呼び、抱きしめてくる。

 「学校では寝る」と決めている主人公だが、転入生がいちいち構ってくる。おまけにクラスの男子はその度に主人公に突っかかってくる始末だ。

 平穏(?)な学生生活を望む主人公の運命はいかに……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルですが、物語がストレートに伝わって良いと思います。

 このタイトルを見ただけで「本作がどういうジャンルの作品か」は一目瞭然でしょう。

 「方言女子」というのも王道とまでは言えないと思いますが、人気のあるキャラ付けであるとも思います。



 キャッチコピーも良いですね。

 主人公目線の心情なのだと思われますが、その文章から「ヒロインの方からグイグイくる」という事と「初対面ではない」という事が察せられます。



 タイトルとコピーを読めば「本作がどんな作品なのか」、多くの読者は察する事が出来るのではないでしょうか。

 「方言女子」「ヒロインが積極的」「実は幼馴染」など、本作の魅力を伝えて読者をキャッチする事も出来ていると思われます。

 ここは非常に良いのではないでしょうか。



【キャラクターの批評】

 キャラですが、少し惜しいですね。

 悪くはないのですが、本作のジャンルは「ラブコメ」です。このジャンルで最重要なのは「可愛くて魅力的なヒロイン」を見せる事だと思います。

 ですが残念ながら第5話までを読んだ時点では「ヒロインたちの魅力が足りない」と感じてしまいました。


 どうすれば「魅力的に感じて貰えるキャラを描けるのか」については、私も明確な答えを持っておりません。

 ただ、本作の序盤では「ヒロインの出番が少ない」と感じてしまいました。


 本作は主人公の一人称視点で描かれている為、仕方の無い部分もあると思います。

 ですが主人公以外にも、クラス男子のツッコミや、妹と学級委員長といったサブヒロインなどの出番に押されて、メインヒロインである転入生の出番が「割を食っている」ように感じました。

 特にクラス男子は少し目立ち過ぎだと思いました。芸風も毎回同じですし、彼らを見せるよりメインヒロインを見せた方が良いと思います。


 次に「主人公のキャラが安定していない」事を挙げさせて頂きます。

 主人公は基本的に「クラス男子たちとは違い、転入生には興味が無い」というスタンスです。学校では寝る事を重視して、それを邪魔する彼ら(ヒロインを含む)を鬱陶しく感じている描写がありました。


 ですが、「たわわな果実に挟まれたかったっ」「ラブコメか!?」「期待していいのかこれは!?」などの言葉が第2話で語られます。

 これ以外にもヒロインや学級委員長の登場時には、その胸のサイズを解説して感想を漏らすなど、女子への興味も大きい事が窺えます。


 「主人公が恋愛に興味があるのか無いのか」は、特に序盤のスタンスとしてはハッキリとさせておいた方が良いと思います。

 それとも主人公のツンデレを見せたいのでしょうか?(タグには「ツンデレ」という単語が3度も使われています。内1つは「貧乳ツンデレ方言女子」というタグでしたが)



【文章・構成の批評】

 文章についてですが、少し稚拙な印象も受けましたが非常に読み易いものとなっております。

 稚拙と感じたのは、文末表現が単調なせいだと思います。


 また突飛なセリフが飛び出す事もあり、戸惑ってしまう事もありました。

 代表的なのが第3話での主人公のセリフに「あと祝うな俺の死を……いや、呪うのもダメだから!」とありましたが、その前後に「祝う」「呪う」の言葉は出てきません。


 最後に、少し空行が多いと感じましたね。

 とはいえ、そのおかげで読み易く、1話の文章量も少ない(約2000文字以下)ので、スクロールの手間に苛つくという程のものではありませんでしたね。

 ここは好みの範囲だとも思います。



 構成ですが、少し展開の仕方に問題を感じました。

 というのも本作では話の構成が「ヒロインが主人公に迫る」→「それを見たクラス男子たちが主人公を盛大に非難」→「主人公が逃げる」という流れで行われております。(この流れが第5話までで数回、行われています)


 その為「主人公が見ている」のはヒロインではなく、クラス男子に感じました。これは主人公の、ヒロインへの第一印象に「女性的な魅力をあまり感じていない」という表現にも原因があると思います。(「ヒロインに魅力を感じていない」というよりは「恋愛に興味が無い」という雰囲気ですが)


 この構成のせいで、ヒロインの魅力が「読者」に伝わっていません。

 ただ「貧乳美少女の広島弁女子」というだけでは弱いと感じてしまいましたね。これらは一言で言い表せてしまえる「ただの属性」であり「キャラの魅力」ではないと、私は考えています。

 キャラの魅力を見せる為には、もっと出番を増やして「セリフ」「言動」「心情」などを見せる必要があると思います。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーの大筋は「ラブコメもの」のテンプレですね。

 美少女転入生が主人公に迫るが、主人公には覚えが無い。でも実は過去に……、といった流れです。これ自体は王道ですし良いと思います。


 構成で指摘した点も、同じネタの繰り返しを続ける事はないでしょうし、恐らくは序盤だけの問題点だと思われます。


 ただ「ラブコメ」にしては「余計な伏線を張り過ぎ」だと感じてしまいました。

 学校で寝る事を至上としている主人公が「家じゃ、」と傍点をつけて書かれています。

 また学級委員長が、授業中に寝ている主人公の為に「授業内容をメールで教える」という行為をしていますが、その動機も経緯も第5話までの時点では不明です。

 屋上が利用不可能という説明の際に「があって以来利用できないはず!」と、ここでも傍点で強調されています。


 それに加えて、本作のメインの伏線である「主人公とヒロインの本当の関係」もあるのですから、第5話という序盤に伏線が多すぎます。


 特に「」という件と「屋上」の件に関しては、強調して読者に意識させず「匂わせる」程度で十分だったと思いますね。



【総評まとめ】

 この作品の感想を一言で表しますと「主人公の次にクラス男子(モブ)が目立つラブコメ」ですね。読み手によっては「主人公以上だ」と感じるかも知れません。

 ですが彼らの反応は毎回ワンパターンですし、決して面白いとは思えません。


 そもそも「ラブコメ」なのですから、ヒロインこそ目立たせるべきでしょう。

 「面白いラブコメ作品」の多くは、主人公よりもヒロインの方が魅力的で出番が多く作られていると思います。(もちろん「主人公は適当で良い」と言っている訳ではありませんが)

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