★1 椎名希の日常記


タイトル:椎名希の日常記

キャッチコピー:不可思な事は日常に溶け込む……その日常、本当に普通の日常?

作者:東條 九音

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330647869544098


評価:★1


【あらすじ】

 尾道のとある高校。その学校の寮の一つ、ツムギ荘は変わり者が集まる寮。

 そんなツムギ荘で暮らす住人たちの日常は平凡そのもの

 しかし普通に見えるその日常に潜む違和感……


 平凡な日常は、不可思議な日常との紙一重!?


 ツムギ荘の住人たちの日常や生徒会での日々を中心に展開される、日常系青春ストーリー!



【拝読したストーリーの流れ】

 春休みが終わる直前、学校の寮であるツムギ荘に住む主人公「椎名 希」は、新学期から新たに寮生となる転入生を駅まで迎えに行くように頼まれた。

 頼まれるままに迎えに行って、転入生「暁 栞」と出会う。


 住む者は「天才」「問題児」「変人」のいずれかであるというツムギ荘にやって来た「栞」もまた、例外では無かった。

 「希」は、生活能力が乏しく危なっかしい「栞」の世話係に任命されるのだった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 まずタイトルですが、あまり良くは感じませんね。

 作品内容が想像出来ませんし、興味を惹くワードもありません。このタイトルだけを見て「面白そう」「読んでみよう」と思う読者は、決して多くは無いと思います。



 次にキャッチコピーですが、まず「……」の後に句点を設けた方が良いと思いますね。明らかに前後で文が分かれていますし、その方が違和感が少ないでしょう。

 また「不可思」は、「不思議」か「不可思議」の間違いだと思います。(「不可思」という言葉があるのか、一応調べてみましたがキックボクサーしか出てきませんでした)


 コピーの内容ですが、ミステリーのような雰囲気ですね。

 これについては第5話までの時点では答えは出ていませんでしたが、「匂わせ」はありました。

 もう少し読まなければ判断は出来ませんが、現状は「悪くないコピー」だと思いましたね。(上記の、「句点」「誤字」の件が解消すれば、ですが)



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが、「個性が弱い」と感じてしまいました。

 「ツムギ荘の住人は変わり者ばかり」という設定ですが、リアルならともかく、創作の世界において「変わり者」と呼べるのはヒロインと、名前しか登場していない引き籠りくらいです。そのヒロインも「よくある天才無口系ヒロイン」の枠を出てはいません。

 主人公と生徒会長に至っては、変わり者と呼べる程のものは何も感じませんでした。


 次に「方言」が違和感を出していました。

 基本的にセリフは標準語の様に書かれているのですが、たまに思い出したかのように方言が出てきます。

 物語の舞台は尾道(広島県)という事なので方言自体はおかしくは無いのですが、たまにしか出てこないのでどうしても違和感が拭えません。

 現実の広島県民はそんなに方言は使われないのかも知れませんが、「もっと方言を多用する」か「いっそ方言を出さない」方が統一感があって読み易いと思います。


 セリフで言うと第4話の途中から、主人公がヒロインにいきなり敬語で話し始めた事にも違和感を感じました。

 第3話で世話係になった事からそうしたのでしょうが、第4話の序盤では敬語を使っていません。これに「違和感を覚えるな」というのはムリですね。


 更に第1話で、主人公がヒロインを駅まで迎えに行く場面ですが、ここでの主人公の行動もおかしいと思いました。

 駅に着いた主人公はヒロインの姿を探しますが見つかりません。だから主人公は心を落ち着かせる為にラノベを読み始めました。

 ……意味が分かりません。


 最後に、小さいとも大きいとも考えられる問題として「主人公の名前」を問題とさせて頂きます。

 まず「希」という名前ですが、男か女か分かりませんよね? 私は「どちらかというと女の名前」という印象でしたので、最初は主人公を女だと思っておりました。


 そしてヒロインの名前の「栞」が並ぶと途端に読み難くなりました。

 「希」「栞」……。並べてみると字の形が似ていると思いませんか? 読んでいると、たまにどちらか分からなくなって読む手が止まってしまいました。



【文章・構成の批評】

 文章ですが、基本的には読める文章なのですが、問題点が散見されます。


 まずは読点が多くて文章がうるさく感じる事です。

 ここは朗読するなどして、読むリズムを邪魔するような読点を減らした方が良いと思います。


 次に「漢字で繋がる文章」があり、読み難い事です。

 例えば「朝部屋を訪問して」という文章がありましたが「朝に部屋を訪問して」と1文字入れるだけで読み易くなると思います。ここは読点でも良いですね。


 最後に、「セリフだけが連続して続く箇所」や「空行が無い箇所」などが、たまにありました。

 これらは意図的にしていない限り「表現が稚拙」に感じたり「読み難くなる」といった問題が発生すると思います。(私は該当箇所に「作者の意図」は感じませんでした)



 続いて構成ですが、話の流れ自体は悪くは無いと思います。

 派手な展開はありませんが「日常系」ですし、話もちゃんと進んでいます。

 ただ「次話へのヒキ」はもっと意識した方が良いと思いましたけどね。


 それと、これはたまたま気付いたのですが、本作の話数は(本批評の執筆時点で)72話、全文字数は113,182文字です。これを1話当たりに平均すると約1572文字です。

 ですが第5話までの文字数を並べると、次のようになります。


第1話  4377文字

第2話  3389文字

第3話  6673文字

第4話  2067文字

第5話  3549文字


 これは後半になると1話当たりの文字数が激減する事を指していると思われます。


 「なぜこうなったのか?」「これによる弊害は何かあるのか?」

 これらに関する答えは持ち合わせておりませんが、非常に気になったので書かせて頂きました。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーについては悪くないと思いました。

 「○○荘」「変わり者の集まり」「主人公は忘れているが、ヒロインは幼馴染」「ヒロインのお世話係となる主人公」など、よく見るテンプレの組み合わせではありますが、上手くまとまっているのではと思います。



 設定に関しても【タイトル・キャッチコピーの批評】で申し上げた「ミステリーっぽい話」が興味を惹くように出来ていると思います。


 実は【あらすじ】にはキャラクター紹介の続きがあり、そこで「46話以降」と線引きをされて2名のキャラの名前が入れ替わっております。

 第5話まででも、恐らくこれに関する「匂わせ」があり、大きな伏線となっている事が窺えますね。


 ただ、この様な大掛かりな伏線を【あらすじ】に書いてしまうのは勿体ないと感じてしまいましたね。



【総評まとめ】

 本作の感想を一言でまとめますと「詰めが甘い作品」だと感じました。

 キャラもストーリーも悪くないと思います。文章も基本的には読み易い文章です。設定は「面白いな」と普通に思いました。

 丁寧に構成を練り、キャラの魅力を表現し、文章に違和感をなくす。これらが出来れば「普通に面白い作品」となると思います。


 「仕上げ」とは、作品を良く見せる最も重要な作業です。これは小説に限らず、例えば料理やプラモなんかでもそうですね。

 それまでの工程が完璧であっても「仕上げ」が雑だと、全て台無しです。


 本作は「雑」とまでは言わないまでも「詰めが甘い」と、そう感じてしまいましたね。

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