★3 異世界より・・・


タイトル:異世界より・・・

キャッチコピー:これが異世界のリアル

作者:乙枯

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054935092716


評価:★3


【あらすじ】

ここではない別の世界ではどんな常識や価値観があるのか?


ファンタジー世界の現実を紐解いていく一話読み切りの小ネタ集



【拝読したストーリーの流れ】

 本作はかなり特殊な構成でして、まず1話ごとに「お題」を設けて描かれる、1話完結の読み切り集です。

 その「お題」は1話から順に「オーク」「冒険者ギルド」「エルフ」「ゴブリン」「ドワーフ」と、ファンタジー作品のお馴染みの題材です。

 それらを私たちの多くが持つ共通認識とは少し違った視点で描く、いわゆる「アンチテーゼ作品」のように感じました。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトル・キャッチコピーの両方を同時に批評させて頂きますが……、両方とも弱いですね。

 作品内容の紹介としても、「キャッチ」としても、どちらの意味でも弱すぎると思います。どちらを読んでも、または両方を見たとしても、これでは作品の内容が想像つきません。

 あまりに簡素なタイトルとコピーの文章には「キャッチ」が出来るようなパワーワードも無く、初見の読者が読んで下さる事は少ないように思います。



【キャラクターの批評】

 本作には固有名称を持ったキャラクターは存在しません。

 しかし「オーク」や「ドワーフ」など、題材を解説するためのキャラが登場し、それぞれの文化や生態などを語ってくれます。

 しかし、ただの説明という訳ではなく、「オーク」ならまるで演説のように、「ドワーフ」なら客人に話しかけるように説明をしてくれます。


 殆どが説明を行っているだけなので、キャラクター性が優れているとは思いませんでしたが、全くの無個性ではないとも思いましたね。

 むしろ、少ない文字数の中では良く表現しているかと思います。



【文章・構成の批評】

 文章についても本作は少々特殊です。

 「ゴブリン」の1話を除いて、地の文が全てキャラのセリフという描写になっております。その為、明確に登場する人物は基本的に1人だけです。(「ゴブリン」の話はキャラが3人登場したので、違う書き方になったのだと思います)

 その為、情景描写はありません。基本的に登場人物が「誰か」と会話をしているような描写ですが、その「誰か」は描写されません。


 と、この様な書き方ではありますが、文章に問題は感じられませんでした。

 ほぼセリフのみの描写ですので、優れた文章力だとも感じませんでしたが、読むのに気になる点は特に見当たりませんでしたね。



 続いて構成ですが、こちらも問題は感じませんでしたね。

 1話ごとの文章量も最大で2600文字程度と少ないですが、その間で作者さまの描きたい事は描き切っていらっしゃったように思います。



【ストーリー・設定の批評】

 本作の最大の魅力はここですね。

 【拝読したストーリーの流れ】で軽く説明をしましたが、本作は「ファンタジー作品でよくある設定」を独自解釈をしながら物語を作っております。


 第1話で言えば「オークは何故、人間を攻撃するのか」について語られております。

 そこには作者である乙枯さまなりの考察があり、キチンと背景設定を考えた上での結論だと考えられます。


 第2話は「冒険者ギルド」についてのお話なのですが、本作の世界には「冒険者ギルド」は存在しません。

 ですが、ただ「無い」だけで終わるのではなく、「何故無いのか」を商人の口から語られます。ここにもしっかりとした考察があり、十分に納得の出来る理由です。


 どのエピソードも、一定以上の説得力を持ちながらキチンとストーリーも作られています。

 どうしてもストーリー自体は薄味となってしまいますが、その代わりに非常に読み易くなっていますね。



【総評まとめ】

 本作はあまりにも通常の作品とは形態が違いますので、一概に他作品との比較は出来ませんでした。

 しかし、その解釈と試みは面白いと思いましたので★3とさせて頂きます。


 ただ本作は、「ファンタジー作品を書きたいから、序盤の適当な敵役としてオークやゴブリンを出そう」とか、「とりあえず主人公は冒険者にしとくか」などと考えている作家さま方には耳の痛い作品となるかも知れません。

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