★2 実質追放の公爵令嬢、嫁入り先の隣国で「君を愛することはない」と言われて困り果てる


タイトル:実質追放の公爵令嬢、嫁入り先の隣国で「君を愛することはない」と言われて困り果てる

キャッチコピー:冷たく美しい人形のような令嬢が、望まぬ結婚によって本当の幸せを掴む

作者:黒星★チーコ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330663780261501


評価:★2


【あらすじ】

王太子の婚約者だったデボラは、パーティで婚約破棄を告げられる。

しかも理由は男爵令嬢を苛めたという濡れ衣。

でっちあげの証言が次々と飛び出すも、デボラは反論。しかし王太子妃の座にしがみつく女と罵られ、立場は劣勢に。


(仕方ないわ、これは損切りね)


彼女は割り切って婚約破棄のみを受け入れる。

が、彼女の不幸はこれで終わらない。デボラの父と兄は彼女を守るのではなく、王家との取引材料にする事で家の繁栄を取ったのだ。

哀れ隣国の侯爵の後妻として無理やり嫁に出された彼女。体の良い国外追放である。


(でも本当に国外追放で放り出されるよりはマシね。それにあのバカ王太子と結婚するより幸せかも)


更に嫁入り先のイケオジの侯爵に「君を愛することはない。実質人質だ」と言われてしまう。


(困ったわ……私に人質の価値はないのに。せめて何かお役に立ちたいわ)


これは、不幸な運命に困惑しつつも前向きに進んだ結果、周りも自らも変わっていき、夫に愛された令嬢の話。



【拝読したストーリーの流れ】

 主人公「デボラ」は、祖国の「マムート王国」と半年ほど前まで戦争をしていた隣国「フォルクス王国」の「ゲイリー・シスレー侯爵」へと人質として嫁ぐ事になった。

 その経緯は、婚約者であった王太子「アーロン」から夜会の最中に婚約破棄を言い渡されたのが切っ掛けだった。

 聡く、冷静な「デボラ」は最善策を講じようとするが、結果は……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 こちらも説明文タイトルですね。決して悪くは無いと思いますが……、「この作品の面白さや、見所」といったものが説明されてはいないように感じました。

 大まかなストーリーは想像できますが、それはよくある「追放」「愛の無い結婚」からの、「本当の愛」へと繋がるというストーリーだけです。「この作品独自のもの」ではありませんね。

 「良いタイトル」には、少し遠いと思います。



 キャッチコピーは、少し良くないと思いました。

 その理由は、コピーの前半の「冷たく美しい人形のような令嬢」という言葉が、本文を読むと齟齬があるように感じたからです。

 あくまで私の印象ですが、主人公は冷静であっても冷酷ではなく、むしろ人情に厚いようにさえ感じました。作中キャラの第3者の目線では「冷たい人形のような」で合っているのかも知れませんが、このコピーを読むのは読者です。読者の目線で伝えた方が、作品を読んだ際のギャップは少ないと思います。


 コピーの後半については、タイトルと同様の問題に感じますね。

 ストーリーの説明にはなりますが「本作独自のもの」ではありません。



 タイトル・コピーのどちらを見ても「有象無象のコピー作品」と見分けがつきません。

 このジャンルは人気がありますので、どこかで他作品との差別化を図らないと人気を得るのは難しいかと思います。(運次第では、その限りではありませんが……)



【キャラクターの批評】

 キャラクターは、基本的には悪くないですね。

 第5話までで主に描かれているのは主人公ですが、そのビジュアルや性格などが分かり易く、かつ魅力的に映るように書かれていると思います。


 ただし、「主人公が聡明」だという設定の為に、王太子や取り巻きたちを「バカ」にしたのは良くないと思いますね。

 この件は【ストーリー・設定の批評】でも書きますが、「バカ」をやり込めたからと言って、「主人公が聡明」には映りません。むしろ王太子とのやり取りを見て、主人公は「あまり頭の良い方ではない」とさえ思ってしまいました。



【文章・構成の批評】

 文章は非常にキレイで読み易く、表現も素晴らしいですね。

 特に第1話の「目を白黒……いや、白青させて咳き込んだ」という、「目を白黒させる」という言葉を、「目の青いキャラだから、白青させて」と言い直す文章は面白いと感じました。


 文章における指摘点は、少し改行が少ない事と、セリフとセリフの間にも空行があった方が読み易い、という事くらいですかね。



 構成に関しても、特に問題は感じませんでした。

 第5話までの時点では、まだあまり話が進んでおらず謎も多いのですが、本作の1話ごとの文章量は約2000字ほどと長くはありませんし、国の説明などが挟まれていましたがテンポも良く進んでいます。

 むしろ残った謎が、読者に続きを読みたいと思わせるのではないでしょうか。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーですが第5話までの時点では、まだ全体像は掴めない感じでしたね。

 第1話、第2話で嫁ぎ先の侯爵との顔見せだけで謎を残し、第3話~第5話で王太子から婚約破棄をされる、という流れです。


 ただ【キャラクターの批評】でも少し書きましたが、婚約破棄の話は「完全にテンプレ」です。

 王太子が男爵令嬢に惚れて、主人公を貶めようと取り巻きを連れて、無実の罪を突き付ける。……何度見たお話でしょうか。

 先ほど申し上げた通り王太子一行は「バカ」ですので、このエピソード自体には何の魅力も感じませんでした。



 設定に関しては可もなく不可もなく、といった所ですかね。

 第5話まででは大きな矛盾は見受けられませんでしたし、最低限の必要な説明もなされている様に思います。

 ただ、世界観や設定そのものに魅力を感じる程のものは見られませんでしたね。



【総評まとめ】

 第5話までの時点では、よくある「悪役令嬢追放からのシンデレラストーリーもの」という感想でしたね。

 ただ、文章は非常に良く、他の点にも致命的な欠点も見られませんでした。あえて欠点を挙げるのなら「テンプレのストーリー展開」にありますが、いくつか残っている「謎」が、それを緩和しています。


 その「謎」と、先の展開次第で本作の真価は問われると思います。

 ここを面白く出来なければ、「よくある量産作品の1つ」で終わってしまうと思いますね。

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