★3 「ユリって雑草だよね」


タイトル:「ユリって雑草だよね」

キャッチコピー:花と同じ名前を持つ彼女は、ポツリと俺に呟いた……。

作者:ちありや

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054934146841


評価:★3


【あらすじ】

誰の手も借りる事無く気高く咲く花がある。

彼女はその花の様になりたかった……。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作は少々特殊な構成です。

 全3話なのですが、1話目で話は完結いたします。

 そして2話目で「1話目とは違うルートを辿ったIFの話」を描き、3話目は「蛇足」です。(「蛇足」とは私が言っているのではなく、エピソードタイトル、そして本文の前書きで作者さまが仰っておられます)


 ストーリーといたしましては、高校生の恋愛ものですね。

 「ロードサイクリング部」という部活に所属する主人公「アキト」と、同じ部活のヒロイン「ユリ」の、縮まりそうで縮まらない恋愛模様が描かれています。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 まずタイトルですが……、評価に困りますね……。

 作中でのヒロインのセリフを持ってきているのですが、そのセリフが物語のターニングポイントになる訳ではなく、「雑草のように逞しく」といったメッセージ性は窺えるのですが、ストーリーなどには特に関係があるようには感じられませんでした。


 また「恋愛もの」で「百合」とくれば、女性同士の恋愛を想像させてしまうのも良くないと思います。


 ただ、タイトルを見て「あれ? 百合って雑草なの?」という疑問を抱いた事で、作品への興味も感じてしまいました。


 良い部分と悪い部分が混在し、なんとも評価のしづらいタイトルです。

 良くも悪くもあり、良くも悪くもない、と言った所でしょうか。



 続いてキャッチコピーですが、こちらはあまり良いとは感じませんね。

 タイトルのセリフがヒロインの言葉である事が示されていますが、先ほど述べたようにストーリーには特に関係は無いように思います。


 読者に対する「キャッチ」としても弱く、効果的な文面とは思えませんでした。



【キャラクターの批評】

 キャラ造形は非常に良いですね。

 主人公とヒロインの関係や、その想いが丁寧に描かれています。


 一人称で描かれていて主人公への共感もしやすく、逆に感情移入しない場合でも「さっさと付き合っちゃえよっ」と読者にツッコませるような、どちらでも楽しませるような描写となっています。


 ただ本作とは直接関係ないのですが、「アキト」と「ユリ」という名前から「機動戦艦ナデ〇コ」という作品を連想してしまいます。(こちらのヒロインは「ユ〇カ」ですが……)

 全く共通点の無い作品なのですが、複数の同名(類似した名前)のキャラが有名作品にいると、どうしてもその作品が脳裏にちらついてしまいます。

 ただの偶然だとは思いますし、作者さまはご存じない作品の可能性もありますが、こういった事態はなるべく避けた方が良いでしょう。



【文章・構成の批評】

 文章は非常にキレイで読み易かったですね。

 全体的にクセも無く、誰でも気軽に読めると思います。


 ただ1カ所だけ、序盤で主人公とヒロインの関係を説明する文章が一気に語られ、(私の環境で)5行以上に渡って句点が無い文章があります。

 ここはどこかで文章を区切った方が読み易かったですね。



 構成は面白いですね。

 先ほど述べましたが、1話完結でその後「IFストーリー」の話を描くというのは少し珍しい手法です。

 どうやら読者からの意見で「IFストーリー」を書かれたようですが、私個人の意見としては書かれて良かったと思います。


 「どちらの話が良かった」という話ではなく、私は「本編とIFの2つがあって、本作は完成」なのだと感じました。

 どちらか一方だけだったら、「特に面白みは無い」と思ったでしょう。


 後日譚については……、作者さまがご自分で仰っておられる通り「蛇足」ですね。

 こういう話が好きな方もおられるでしょうし、私も決して嫌いではありませんが、「作品」として見た場合、「余計なエピソード」だと言わざるを得ません。



【ストーリー・設定の批評】

 単体として見た場合、「本編」「IFストーリー」のどちらにも特に面白みは感じませんでした。

 ただの高校生の恋愛を描いただけの話であり、オチも大したものとは感じません。


 ただ、2つが相互に合わさる事で非常に興味深い作品へと変貌しております。

 「もし、あの時こうだったら」と、誰でも想い描いてしまう事ですが、それを実際に描く事で「本編」と「IFストーリー」の互いに足りない部分を補っております。


 こうなると「大した事のないオチ」も、それで丁度良かったのかも知れません。

 オチが完璧すぎると、「それ以外のストーリーが必要無くなるのでは?」と思うからです。


 1つだけ欲を言うのなら、「IF」への分岐は「主人公の行動が切っ掛け」で起きた方が良かったと思いますね。

 主人公の行動と関係ない所で「IF」へと分岐しても読者には分かり難いですし、カタルシスも生まれません。



【総評まとめ】

 1話単体として見れば「文章とキャラは良いが、ストーリーに面白みの無い凡作」という感想です。

 しかし「IFストーリー」と合わさる事で「1+1が、3にも4にもなる良作」となっています。


 もう一工夫があれば「秀作」にも「名作」にもなり得たと思いますね。

 しかし十分に面白かったので、★3とさせて頂きます。

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