★1 並行世界戦記 赧竜の撃墜王


タイトル:並行世界戦記 赧竜の撃墜王

キャッチコピー:俺は生きて帰るぞ……! 異世界に迷い込んだ旧日本軍パイロットの奮戦記

作者:鴉

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054922541055


評価:★1


【あらすじ】

 1943年某月某日、日本から遥か南方の島ラバウルで、海軍パイロットの花京院勝(カキョウイン マサル)は、空中勤務中に宿敵とも言える黒塗りのボディのP38、通称『黒の死神』と交戦中、虹色の雲の中へと入ってしまう。


目が開くと、両手両足が鎖で拘束されており、筋骨隆々の兵士達に解放された勝は、ムバル国の王カヤックと謁見をする。


「盗まれた虹色の聖杯(アーク)を取り戻せば元の世界へと戻れるかもしれない」


長年に及ぶ4カ国戦争に、勝が役に立つと考えたカヤックは徴兵を頼み、元の世界に戻るために渋々承諾する。


魔法の使えない勝は、この国唯一の対抗手段である竜騎士になるべく、魔導研究所のエレガーと助手のジャギー、訓練生のマーラ、ヤックル、アレンと共に戦火に身を投じるのであった……。



【拝読したストーリーの流れ】

 第二次世界大戦の真っただ中、ラバウルに配属されていた零戦パイロットの主人公「花京院勝」は、宿敵である連合国軍の戦闘機と会敵してしまう。

 今日こそは宿敵を討つ、と敵機を追いかけるが、その際に虹色の雲へと突入して意識を失い、目が覚めた場所は異世界だった。

 「予言」により主人公の協力を求める異世界人に、主人公は仕方なく了承するのだった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 まずタイトルですが、基本的には悪くないと思います。

 「並行世界」「戦記」「竜」「撃墜王」と、本作のストーリーやテーマが詰め込まれていますし、単純に字面も格好良いと思います。


 問題点は「赧竜」が読めない事と、その意味くらいですね。(ダンリュウでしょうか?)

 字面は格好良いのですが、「赧」とは「恥ずかしくて、顔を赤らめる」という意味らしいです。(読みも意味も、知らなかったので調べました)

 本当に、この文字で間違いないのでしょうか?


 次にキャッチコピーですが、悪くは無いのですが「弱い」と感じてしまいます。

 主人公の境遇や目的などが示されているのは良いのですが、「キャッチ」が出来るかは疑問に感じてしまいました。

 本作ならもっとインパクトのあるコピーが容易に浮かんでしまいます。

 例えば「零戦パイロットが竜騎士にっ⁉」なんてどうでしょう? これが良いとは言いませんが、インパクトだけならあると思います。


※本記事を読まれた作者さまがタイトルを「並行世界戦記 赤龍の撃墜王」、キャッチコピーを「零戦パイロットが竜騎士に!? 異世界に迷い込んだ旧日本兵の奮戦記」に変更なされました。

 本批評が、少しでも作者さまのお役に立てたのならば嬉しい限りです。



【キャラクターの批評】

 キャラクターですが、造形がボヤけているように感じました。

 そのように感じてしまった理由は2つあります。


 1つ目は、口調が安定しない事です。

 特に主人公に顕著なのですが、軍人らしい口調かと思えば、説明口調になったり、荒くれ者のような口調になったり、敬語を使ったり使わなかったりと、とにかく安定しません。

 相手に合わせた口調にしているのではなく、1度の会話内だけでもブレブレです。


 2つ目は、キャラの理解が早すぎる上に、理解に至るまでの説明が少ない事です。

 その為、キャラのセリフが突拍子もないものに感じてしまいます。ストーリーを円滑に進める為、または設定やキャラの感情をセリフで伝える為、という意図なのは分かるのですが、これでは情緒が生まれず、共感する事も出来ません。最悪、キャラが「作者の操り人形」のように感じてしまいます。



【文章・構成の批評】

 文章自体は読み易い部類なのですが、いくつか気になる点がありました。


 まず、句点の度に空行を設けている事です。全文を確認した訳ではありませんが、ほぼ全てに当てはまると思います。

 そして同時に、1文が長いです。本来区切れる文章も読点でつないでいます。

 私の読んでいる環境では、ですが、3、4行の間に句点が1つしか無い文章が大量にあります。もう少し、文章を細かく分けた方が読み易いと思います。


 次に説明描写が多いのに、その説明が意味不明だったり間違っている事が頻繁に見られる点です。

 例えば第2話の「日本や世界中探しても描けないであろう壮大な絵」とはどのような絵なのか、私には想像が出来ません。

 第4話で、「遊女」の説明を「性風俗店の元祖」としていますが、「遊女」の説明をするなら「風俗嬢」か「売春婦」。「性風俗店の元祖」を説明とするなら「遊郭」と言った方が正しいでしょう。

 第5話の「老人は指をパチンと鳴らすと、テーブルの上に椅子が三つ現れる」って、テーブルの上に椅子が現れるのはおかしいですよね? テーブルの横に、ではないでしょうか。


 次に構成ですが、話のテンポが遅いです。

 第1話だけはテンポよく進んで良いのですが、第2話で国王と謁見して、第3話からは一気にテンポが遅くなります。

 特に見せ場と言えるようなエピソードは無く(私はそう感じました)、世界説明、キャラ同士のやり取りなどが延々と続きます。


 序盤はまずキャラ立てを、というのなら良いのですが【キャラクターの批評】で書いた通り、残念ながらキャラクターが立っているとは言えません。


 結果、「何をしているのか?」「作者は何を見せたいのか?」が良く分からないエピソードが2、3話の間続きます。(第6話以降も続く可能性があります)



【ストーリー・設定の批評】

 ここは素晴らしいですね。「零戦のパイロットが異世界に転移して竜騎士になる」というアイディアは素晴らしいと思います。

 この字面だけで興味を惹きますし、先の展開にも妄想が捗ります。


 あえて欠点を述べるのなら「旧日本軍人の思考やメンタリティが、現代日本人である読者には共感しづらい可能性がある」という事くらいでしょうか。

 ただ、この問題は大した事では無いでしょう。

 時代が違っても共感できるキャラは創れると思いますし、共感できなくても魅力的なキャラを創る事も可能でしょうから。


 あとは細かい指摘ですが、魔法……、特に転移魔法を気軽に使っている点が気になりますね。

 作中では詳しく説明されていないので私の勝手な妄想にはなるのですが、あまりに気軽に転移魔法を使ってしまうと「それ、転移魔法で解決できない?」とか「何で転移魔法を使わないの?」という感想を抱いてしまいかねません。

 万能になりかねない魔法は出さない。出すなら条件や制約を設ける。とした方が良いと思いますね。(第6話以降で説明される可能性はあります)



【総評まとめ】

 作者さまには申し訳の無い評価を下しますが「説明文が多いのに、説明が下手糞な作品」だと感じました。

 おかげで話のテンポが悪く、キャラ造形もボヤけ、更には「今、主人公たちが何をしようとしているのか」すら分からなくなりました。


 作品自体のアイディアは本当に素晴らしいので、「惜しい」と言わざるを得ません。

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