★2 ドライフラワーが枯れるまで


タイトル:ドライフラワーが枯れるまで

キャッチコピー:どこにでもある不思議なグルメ小説

作者:小林一咲

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330654678879653


評価:★2


【あらすじ】

町の片隅にある小さな料理店に悩みを抱えた人がやって来る。


振舞われた料理は客の心に届くのか。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作は1話完結型の作品となっております。

 また第〇話といった番号が振られていなかったのですが、本批評内では1話目を「第1話」というように書かせて頂きます。


 小さな料理店に様々な客がやって来て、料理を食べる……。

 説明いたしますと、ただそれだけの物語です。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルなのですが、第1話のあとがきに「夢で見たこのお店の名前が『ドライフラワー』だったので付けました」とありました。

 その前の文章からも、作者さまの夢(睡眠時の夢?)を作品になされたのだと思います。


 しかし当然ですが、未読の読者はそのような事は分かりません。

 タイトルからは作品内容を読み取る事が出来ず、更に作中に店名も出てきません。(出てきたのは「あとがき」です)

 個人的にはこのタイトルはよろしくない、と思ってしまいますね。


 そしてキャッチコピーですが、こちらも良くないと思いました。

 まず「どこにでもある」と「不思議な」が矛盾している事です。興味を惹く矛盾であれば良いのですが、こちらの矛盾には興味を感じず、むしろ作中の文章への不安を感じました。


 そして「グルメ小説」という点ですが……、あくまで私個人の感想ですが、本作は「グルメ」よりも「人物の心の機微」などの描写に比重を置いているように感じました。

 けっして料理描写の手を抜いているとは感じませんでしたが、人物描写の方をアピールした方が作品内容に沿っているのでは? と、思いました。(私の感想が正しいのなら、ですが)



【キャラクターの批評】

 先ほど書きましたが、人物描写が素晴らしいです。

 本作は1話が1000文字前後と非常に短い短編なのですが、短い文章の短い表現だけでキャラクターの心の機微が表現されています。


 キャラの固有名称も無く、目立ったキャラは居ませんが、それでも秀逸であると言わざるを得ません。



【文章・構成の批評】

 文章から伝わる雰囲気が凄まじいです。

 先ほどから「心理描写」ではなく「心の機微」と書かせて頂いておりますが、この作品では「言葉で伝える」のではなく「動作で伝えて」おります。(私の言葉こそ、伝わるでしょうか?)

 その為、キャラの心理を「理解出来る」のではなく「察する」事が出来るのです。

 これほどの文章は、中々お目にかかれません。


 次に構成ですが……、こちらは残念ですね。

 「夢を作品にした」という理由からか、5話中3話に「起承転結」の「結」が存在しません。

 何なら、その3話は「起承」で終わってしまいます。ただ客が食事をして退店して終わりです。

 いくら雰囲気が良くても、これでは面白い作品と呼ぶ事は出来ませんね。



【ストーリー・設定の批評】

 第1話のストーリーは良かったと思います。最後にちゃんとオチがついており、面白い物語となっています。

 しかし上記したように、半分以上のエピソードが「起承」で終わっては「スゴイ」とは思っても「面白い」とは思えませんね。


 そして設定ですが1つだけ、重要な問題点があります。

 それは物語の舞台である「店」が全くイメージ出来ないという事です。


 第5話までに作中で登場した料理ですが、「和定食」「蕎麦」「ラーメン」「牛丼」「パスタ」「チヂミ」です。この店は、一体どんなお店なのでしょう?

 グルメ小説を謳っているだけあり、料理の描写もしっかりとなされているのですが、(おそらく)本格的な料理が出されていると思います。

 高級料理店なのかな? と思えば、制服姿の男子学生が友達と入店して牛丼などを頼みます。


 「小さなお店」や「カジュアルな内装」とある事から、個人経営の小規模店舗である事が想像されます。

 しかし小規模店舗では多彩なメニューを揃える事は難しく、レトルトなどでは無く本格的なものを、と思えばなおさらです。

 客層もバラバラで、「どんなお店なのか」が全く想像できません。


 「夢が元だから仕方ない」などと言われてしまえばその通りですが、そこは夢の内容を少し変えてでも読者に配慮して欲しかったところですね。



【総評まとめ】

 「表現力が突き抜けている作品」ですね。

 ただし、それ以外は基準以下だと言わざるを得ません。


 私は「起承転結」が出来ていない事を問題視しましたが、そもそも作者さまはこの作品を「物語」として書かれたのでしょうか?

 「物語である」と仰られるのであれば、「起承転結」や「三幕構成」を意識して執筆される事をお勧めします。

 「物語ではない」と仰られるのであれば、私から言える事は何もございません。

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