★0 『灰』の異端審問官


タイトル:『灰』の異端審問官

キャッチコピー:「今までありがとう。そして、さようなら。私なんて忘れて幸せになって」

作者:舞竹シュウ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330667631810050


評価:★0


【あらすじ】

 優秀だが魔術だけは全く使えない魔道具職人見習いの少年『灰月仁』。そんな彼は空から降ってきた少女『ネージュ・エトワール』と出会う。


 謎の組織に追われ、自由を求める彼女は、世界を滅ぼす三つの厄災の一つ『破滅の聖杯』だった。けれど、そんなネージュが仁にはどこにでもいる普通の少女にしか見えなかったから。

 世界を守るため、少女の夢を叶えるために灰月仁は誰にも頼れない過酷な戦いへと身を投じることとなる。


 だが、その果てに仁は選択しなければならない。たった一人の大切な人か、顔も知らない大勢か、どちらの命を救うのかを。


 これは、『逃れることのできない宿命』、『忘れられるはずのない夢』、『託された想いと希望』、その全てを背負って進む物語。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作には零話がありましたので、四話までを読んだ批評となります。


 世界を代表する軍事大国の一つ『極東帝国』。その帝国の魔術教育の最先端である『新門第二高等学校』。そんなエリート校に通う主人公「灰月仁」は優秀な魔道具職人の見習いであったが、異端審問官となる事を目指していた。

 魔術が使えない主人公に異端審問官になる事は難しい。

 しかし、それはそれとして生活の為に魔道具を造るある日、主人公の前にヒロインが空から落ちてきたのだった……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルはカッコイイと思います。

 ただ、「異端審問官」が何なのか? それが4話まで読んでもよく分からなかったというのが少し問題ですね。(ここの問題は【文章・構成の批評】及び【ストーリー・設定の批評】で詳しく書きます)


 あとは、タイトルはダークな雰囲気はしますが、作中を読んだ限りではあまりダークな雰囲気を感じませんでした。(タグにはダークファンタジーが含まれていますが)


 キャッチコピーは、あまり良いとは言えませんね。

 タイトルで雰囲気しか伝えていないのに、コピーでも同様に雰囲気しか伝わらないからです。これでは、この作品がどういった内容なのか想像が出来ません。


 読者はまず、タイトルとコピーを見て「それが自分の趣好に合うかどうか」を判断します。

 この作品の場合では「ダークな雰囲気」と「ヒロインと別れる」事くらいしか分かりません。もっと強くアピールした方が良いと思います。



【キャラクターの批評】

 主人公以外のキャラは1話ずつくらいしか登場していないので割愛します。

 その主人公ですが、作り込みが甘いです。というか、設定がボヤけています。


 分かり易い例でいえば、一話冒頭で「比較的落ち着いた」と形容されているのですが、四話での「落下した流星(ヒロイン)を、わざわざ林の奥まで探しに行く」のは、あまり落ち着いているようには見えません。


 このような矛盾……、とまでは言えないまでも「表現の違和感」は全編通して感じました。(この問題も【文章・構成の批評】で詳しく書きます)



【文章・構成の批評】

 さて文章ですが、基本的には読み易いですが、読点が少なく、また簡単な漢字をひらがなで書かれている事が稀にあり、そこが気になりました。


 そして本題ですが、本作の文章・表現には常に違和感が付きまといます。

 軽い矛盾、説明の足りなさがその違和感の原因です。(読点、漢字もですが)


 1つ例を挙げれば、一話での主人公の第一声ですが、教科書を見た主人公は「ここの魔術理論は良く分からないな。実践できれば簡単に理解できそうなんだけど」と呟きます。

 主人公は魔術が使えない設定です。なのに「実践できれば理解できる」という言葉が出てくるのには違和感しか感じません。むしろ「分からないのが当然」ではないでしょうか?


 このような違和感が、セリフ・地の文・話の展開など、あらゆる場面で散見されます。

 この違和感が拭えない限り、ストレス無く読める読者の数は限られるのでは、と思います。


 構成についてですが、零話と各章のあとに「1998年○○月××日」と書かれているのは、面白くて良いアイディアと思いました。

 これは読者に、時系列を非常に分かり易く伝える良い方法だと思います。


 ただ、話の展開が遅いとは感じましたね。というよりは、「盛り上がりに欠ける」でしょうか。

 四話までで、読者にとって大きな出来事は流星(ヒロイン)が落ちてきた事くらいしかありません。これだけで読者を引き留めるのは難しいのでは、と思いました。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは特に問題には感じませんでした。特に良いという訳でも無く、可もなく不可もなく、といった感じでしょうか。

 序盤だけでの判断なので、今後面白くなる可能性はあると思います。


 そして設定ですが……、明らかに詰め込み過ぎですね。

 タグを見ただけで胸焼けがしそうな程です。(1つのタグに複数の単語があり、7つのタグに合計で22の単語が入っていました)


 これは推測ですが、多数の設定を作者本人も扱いきれていないように感じます。それが、先ほど言った違和感の正体なのでは、と思いました


 そして最後に、タイトルにもある「異端審問官」ですが、作中での説明によれば「危険な魔術師の取り締まりや『怪異』と呼ばれる化け物と戦うことが異端審問官の仕事だ」とあります。

 一般的な「異端審問官」とはあまりにもイメージがかけ離れています。


 タイトル詐欺……、とまでは言いませんが、読者に無用な誤解と違和感、ストレスを与えるこの名称は変更した方が良いと思います。



【総評まとめ】

 一言でまとめると「違和感が酷すぎてストレスフルな作品」ですね。

 1話あたりの文章量は3000字前後と短かったのに、読むのに非常に疲れました。

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