★1 黒き呪血のクレイモア


タイトル:黒き呪血のクレイモア

キャッチコピー:白霧の森にて、黒き剣士と白き魔女が出会う。彼らは、化け物であった。

作者:MS3

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054892320803


評価:★1


【あらすじ】

 剣を振れば並ぶ者なし。宿りし血は黒く毒となり、その身は半不死であった。かつて人間であり騎士であった男は救いを求め、魂を喰らう白霧の森へと足を運ぶ。自分という化け物を、殺すために。


だがそこでおぞましい怪物に遭遇し、死を受け入れようとしていたところ――――どこからともなく現れた白肌の魔女に男は助けられる。


数千年以上も前に存在を消された魔女、そして男は魔女狩りの末裔。だがリーシュと名乗る天才魔女は、男にスクートという名前を与え、己の従者とした。


黒と白、騎士と魔女。堅物と自由奔放、半不死と薄命。どのような運命のいたずらか、出自も性格も――――何もかもが真逆のふたりは、互いに救いを求めあう。


これは化け物としてではなく、人間として生きるため「救い」を追い求める物語である。



【拝読したストーリーの流れ】

 望まぬして、不死の身体となった主人公。彼は自身を不死にした「教会」から逃れ、死に場所を求めて生命を喰らうと噂される「白霧の森」へと足を踏み入れた。

 死を待つ主人公の前に現れたのは、樹の怪物だった。

 死を望んでいた筈の主人公は、怪物を前に決意が揺らぐ。その時、主人公を救ったのは箒に乗った「リーシュ」という名の魔女だった。

 「リーシュ」は主人公に新たな名「スクート」を与え、魔女たちの隠れ里へと案内したのだった……、といったお話です。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは良いですね。

 短いながらも、ダークな雰囲気がよく出ていて、厨二的なセンスが光ります。

 ここまでのセンスのあるタイトルは中々無いと思います。


 キャッチコピーは悪くは無いのですが、今一つに感じました。

 タイトルでは分からない作品内容を説明しているのは良いのですが、本当にただの説明文に感じたからだと思います。



【キャラクターの批評】

 キャラはあまり良くは感じませんでした。

 しかし造形が悪いとか、人格が感じられない、といった問題ではありません。


 これは、キャラというより本作全体に感じた事なのですが、「過程におけるリアルな描写を描き切れていない」と感じました。

 何を言っているのか分からないかと思いますので、主人公を例に挙げさせて頂きます。


 主人公には、大量の過去の設定がありました。それに付随して「教会」などの話も出てきました。第1話では「教会」からの追手との戦闘が描かれています。

 死に場所を求めて数日が経ち、樹の怪物に襲われ、生に執着し、魔女に助けられ、「生きよう」と思い直します。

 ここまでで第3話です。(1話、5000字未満)

 ちゃんと描写や説明が入るので、理解できない訳ではありません。しかし、感情移入するヒマが無いのです。

 主人公の、家族や故郷への想いも、「教会」への恨みも、理解は出来るのですが、そこに「リアルな描写」が無い為、感情移入できませんでした。


 これは文章や構成の問題ではあると思うのですが、主人公だけではなくヒロインにも若干そのように感じたので、ここで書かせて頂きました。



【文章・構成の批評】

 文章は全体的にキレイで読み易かったです。

 ただ一部の方々とは逆で、空行が多過ぎるように感じました。ブロック(文の塊)ごとに分けて意味を読み取る事が出来るので、もう少し減らした方が良いように感じました。


 また雰囲気重視の文章が多すぎて、若干くどく感じました。

 これはジャンルがダークファンタジーという事なので仕方ないのかも知れませんね。好みの問題も大きく関わるので、ここは大した問題では無いと思います。


 しかし、「過程」の文章が少なく感じました。

 特に第1話の戦闘などが顕著だったのですが、ほぼ全ての描写が「結果」を表す表現になっていると感じました。

 極端に言うと「剣を振り下ろした」→「敵は死んだ」のような感覚ですね。(もちろん、作中はこんなに雑な描写ではありません)

 第1話から長々と戦闘描写ばかりをする訳にはいかないのも当然ですが、これでは緩急が生まれません。

 これは、戦闘描写以外にも少なからず感じました。キャラの所で書いた「過程におけるリアルな描写を描き切れていない」というのが、それですね。


 序盤全体の構成自体は悪くないと思うのですが、少し詰め込み過ぎですね。

 確かにweb小説では序盤で飽きられてしまっては話にならないのですが、そのせいで、少し雑に見えてしまいました。

 特にそう思ったのは、主人公が自殺を止めた所ですね。

 感情移入が出来ていないので当然ですが、止めた理由が「薄っぺらく」感じてしまいましたね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリー・設定、共に良く練られた話ではないかと思います。

 序盤だけでも様々な設定が出てきますが、どれもよく考えられているのが分かります。


 ストーリーは、まだまだこれからという感じですが、「先が気になる」と読者に思わせるには十分な展開が出来ているのでは、と感じました。



【総評まとめ】

 酷評しましたが、全体的に高水準な作品でした。ただ、それだけに勿体無いとも感じました。

 もっとゆっくり、丁寧に描写すれば、と思ってしまいましたね。


 ただ先程も言いましたが、web小説では序盤で飽きられたら終わりですから、そういう意味ではこれで良かったのかも知れませんね。

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