★1 ルーザー=デッド・スワロゥ【新装版】


タイトル:ルーザー=デッド・スワロゥ【新装版】

キャッチコピー:死せる英雄たちは【魔神】に導かれ、【異世界】を新たなる戦いの地とする

作者:企鵝モチヲ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16816927862033786146


評価:★1


【あらすじ】

「雛僧(こぞう)、わたしと契約し、【騎士】(ドラウグル)となれ。我が名は【魔神】ディスコルディア。ヒトを……【英雄】たる資質を持つ者を、【騎士】に昇華させし者なり」


決闘に敗れ、死に瀕していた【名無し】の剣士の前に【魔神】を名乗る謎の銀髪美少女が現れ、【異世界】へと誘う。

一方、【異世界】にて、亜人と人間のハーフのキリは、幼馴染と村人たちを【帝国】の兵士たちに殺され、自身もまた殺されかけていた。

救いを求める声に呼応するかのよう、【騎士】へと転生を遂げた【名無し】の剣士が現れる。

彼は圧倒的な剣技でもって、キリを殺そうとした兵士たちを殺した。

【異世界】が戦乱渦巻く時の戦国時代のような乱世の真っただ中であることを知った【名無し】の剣士は、強者との戦いを求めて修羅の道を歩むことを決める。


時を同じくして、時代と場所は異なるが、【名無し】の剣士同様、【魔神】に見初められた英雄たちが【異世界】へと集い始めていた。



【拝読したストーリーの流れ】

 まずこちらの作品にはプロローグにあたる「エピグラフ」という話が最初にあるのですが、たった5行の雰囲気を伝えるだけの様なものであった為、こちらを含めた第5話までを読んでいます。


 ストーリーにおいては、おそらく過去の日本で(日ノ本の国とありました)、決闘に敗れ死に瀕した主人公の元に【魔神】の少女が現れ、異世界へと誘うという始まりでした。


 それと同時……、というか第1話と第5話において、異世界に住む少女「キリ」が描かれています。

 今後、主人公と出会い、物語の中核を担うものと思われます。


 また、主人公が転生する際、様々な時代や地域で、主人公と同様に【魔神】に転生させられる、歴史上の偉人だと思われる者たちの描写が複数ありました。

 おそらく【魔神】たちによる争いか、ゲーム。その駒か、代理として主人公が他の転生者たちと戦う、といった流れになるのではないかと思います。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルですが、カッコイイですね。「ルーザー=デッド・スワロゥ」たぶん、「敗者は死を呑み込む」みたいな意味でしょうか?

 ただ、個人的にはカッコイイと思うのですが、web小説においては悪いタイトルだと思います。

 まず、多くの読者さまはタイトルの意味をわざわざ読み解いたりはしません。よってカッコ良さも分からず、目にも留めないでしょう。

 もっと、目にしただけで気を惹くような直感的なセンスが問われると思います。


 コピーも同様にweb小説向きではありません。

 ストーリーや設定の説明をされているのだと思いますが、本作はコピーの短い文章で説明できるような作品だとは思えませんでした。このコピーを読んでも作品内容は殆ど理解できず、また特に目を惹く要素もありません。

 いっそストーリーや設定とは関係なく、「ダークファンタジー」や「アクション要素」、「人間同士のドラマ」など、雰囲気を伝える言葉に変えてみてはどうでしょうか?



【キャラクターの批評】

 第5話までの時点で主な登場人物は3人です。主人公(?)の「剣士」、【魔神】「ディスコルディア」、異世界の亜人とのハーフの少女「キリ」。


 主人公に(?)をつけたのは、第1話と第5話は完全に「キリ」の話となっており、「剣士」とも「ディスコルディア」とも接触しない独立した話になっていて、「キリ」が主人公の可能性もあったからです。


 3人とも、分かり易く特徴がつけられていて良い感じなのではと思います。

 それぞれ思った事を書くならば、「剣士」はキャラ造形は良く分かるのですが、その背景設定が分からない事。

 逆に「キリ」は背景設定は分かるが、そのキャラ造形がハッキリしない事。

 そして「ディスコルディア」は、ややテンプレ感が強いという事でしょうか。

 ただ、これらはまだ序盤ですし、話を進めて行けば自然と解決できる問題かなとも思います。



【文章・構成の批評】

 文章のレベルは高いです。非常にキレイで文章自体は読み易く、語彙も豊富です。ですが、その文章の意味を理解しにくいです。

 詩的な表現というのでしょうか? 例え話のような迂遠な表現が多用される為、逆に情景の理解が困難になっています。これは第1話と第5話にはあまり見られないので、「剣士」と「キリ」で差別化している表現かも知れません。


 後は細かいですが、やたらと改行を多用しているのが気になりましたね。

 何となくですが、作者さまは一文が行を跨ぐ事を避けていらっしゃるように感じました。

 あと、第5話で空行の無い数十行が続いたのは良くないですね。一気に読みづらくなります。


 構成ですが、第1話の冒頭の文章が良くないです。

 第1話の冒頭とは、読者の作品への知識はゼロの状態です。その読者に向けての最初の一文が


「アシュロンの森は、鬱蒼とした森林だ。「異なった」世界における、シュヴァルツヴァルトを思わせるような。」


 これです。

 この批評を見て下さっている方は、何を言いたいのか分かりましたか? 私は分かりませんでした。

 「異なった」とは何が異なっているのか? シュヴァルツヴァルトとは何なのか?(ドイツに実在する山地ですが、多くの読者さまには伝わらないでしょう)

 まず最初の一文は、読者を物語に惹き込む為、分かり易い言葉や表現、セリフを使用するのが良いと思います。


 また、「キリ」視点が1、5話。「剣士」視点が2、3、4話という構成も良くありません。

 視点や時間軸を動かす手法はありますが、物語の冒頭から始めてしまうと読者の理解を阻害してしまいます。

 まず最初は分かり易く。これを心掛けた方が宜しいかと思います。


 しかし、序盤は設定の説明は最小限に留められ、余計な情報はありません。これは良い配慮だと思いましたね。



【ストーリー・設定の批評】

 紛う事なきダークファンタジーですね。

 先程、詩的な表現や迂遠な表現で理解し難いと書きましたが、その表現が非常に暗い雰囲気を出しています。

 これだけでも好きな人には刺さるのではないかと思います。


 また、異世界である「キリ」の方も、亜人は悪として差別されており、第1話から過酷な状況に立たされています。

 こちらも非常に暗い雰囲気を感じますね。


 設定ですが、こちらは良いですね。

 どこかで見た事のあるような設定の組み合わせにも感じますが、それはつまり王道という事です。

 突飛な設定に頼らず、必要の無いものを詰め込み過ぎない。そんな風に見受けられました。



【総評まとめ】

 ここまで読んで「あれっ、★1なの?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。私も悩みました。しかしこの作品、決定的に読みにくいのです。

 その理由は先程お話した通りですが、理解し難い、読みにくいというのは一部の問題では無く、作品全体の問題であります。


 「ダークファンタジーとはそういうもの」と言われればそうなのかも知れませんが、私はこの作品、「けっこう面白そう」と思いながらも「先を読むのはしんどいな」と考えてしまいました。

 おそらく、ダークファンタジーを読んでこなかった為に耐性が無いのでしょうね。


 私は「しんどい」と感じてしまいましたが、ダークファンタジー好きの方は、一度こちらの作品を読んでみてはいかがでしょうか?

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