敏腕エージェントの日常5

信仙夜祭

今日は、お姫様の救出か~

 俺こと敏腕エージェントは、今、銃撃戦に巻き込まれていた。


 敵が手榴弾を投げて来たが、ハンドガンで撃ち落とす。

 そのまま、空中で爆発した。


 ――ドガン


「「「うああ?」」」


 敵がうろたえている間に、退路を確保する。

 もう一、二回迎撃して、とんずらしよう。

 しかし――だ。


「お姫様……。こんな所でなにしてるんですか?」


 俺は、件の政治家の家に忍び込み、戦争に関する情報の奪取を任務にしていた。

 だが、実際に忍び込むと、先客がおり、銃撃戦となっていたのだ。

 母国のエージェントだと思い加勢したのだが……、顔を見たら来賓されたお姫様だった。

 もうね、驚いたのなんのって。


「はあはあ……。戦争の回避を……。晩餐会には、影武者を送っています」


 普通、逆じゃね?

 捕まったら最悪じゃない? 死体にされても、外交問題になるのは明白だ。


 でもこのお姫様は、銃を撃ってんだよね。

 どんだけ、肝が据わっているんだか。


「こちらには、敵がいないみたいです。あ、あそこに車があります!」


「あれは、罠だ。俺の乗って来たバイクが植木の近くにある。それで逃走するぞ」


「え……? 罠?」


 ダメだね。あんな駐車場でもないところに車が止まっている理由がないじゃん。

 あの車に乗ったらドカンか、動かないかのどちらかだ。

 それと、今は死角の屋根に、狙撃手が大勢いそうだ。


 俺は、逃走経路を指示して、バイクまで辿り着いた。

 二ケツでバイクを駆る。


(ふう……。任務失敗か)





 敵は追って来なかった。

 発信機を危惧して、街外れの空き家へ向かった。

 空き家についたら、電波干渉機にて、発信機がないことを確認した。

 さて……。


「お姫様。御自身の足で晩餐会に戻ってくださいね?」


「もう、戻れません……。連れて行ってください」


 懇願されてんだけど?

 話を聞くと、16子ともなると地位もほとんどないのだとか。

 このまま影武者に跡を任せて、消えたいらしい。

 考えてしまう……。

 そうすると、お姫様が抱きついて来た。


「お願い、もうあなたしか頼れる人はいません。はなさないで……。連れて行ってください」


 ふう~。またこのパターンか。敏腕エージェントはモテるのだ。女性を助けると、何時もこうなる。

 これ、吊り橋効果っていうのかな?


「……俺について来るのであれば、エージェントとなり裏の仕事を熟すことになるぞ?」


「なんだってします」


 こうして、組織に新しいエージェントが誕生した。





「社長……。嫁さんを娶ったんですね。おめでとうございます。しかし、若い子ですね~」


 元お姫様には、秘書から勉強して貰い、会社に馴染んで貰おうと思ったのだが、何故か嫁になっていた。

 いや……、周囲には嫁に見えるらしい。

 それと、女性って顔を変えられるんだね。メイクと髪型を変えただけで、誰も元お姫様だと気がつかない。


(不味いな~。この仕事が終わったら、俺は別な任務に行かなければならない。はなれられるんだろうか……)


 元お姫様は、楽しそうに働いているよ。


 組織に連絡したら、『そうか、君も身を固める気になったのか。おめでとう』と返信が帰って来た。

 再度、罵詈雑言を、返信してやった。

 もうそろそろ、通信装置も送受信可能なモノにして欲しい。平凡エージェントの手紙でのやり取りも飽きてきた。


「あなた……、書類の作成が終わりました。チェックをお願いします」


 俺は、書類を受け取った。





 こうして、今日もこの国の平和が護られた。

 敏腕エージェントの活躍は、終わらない。

 終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

敏腕エージェントの日常5 信仙夜祭 @tomi1070

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ