君が頷く夕暮れに。

源なゆた

君が頷く夕暮れに。

 しずかななんだ、と思ったのをおぼえてる。

 保育園の砂場で、一緒にお城を作ってたのが、最初の記憶きおく

 私が物心ものごころ付いたの自体、あの瞬間だったのかもしれない。

 つまり私の主観では、人生の最初から一緒なのが、君だった。


 一番仲良しの二人。

 保育園でも、小学校でも、中学校でも、先生方にはそう見えてたと思う。

 高校では、みぃちゃん達……他の三人も居たから、わからないけど。

 二人なら、手をつないで歩くのは、変わらなかった。――変えたくなかった。


 進学を機に、同棲どうせいを始めたね。

 ワクワクだったし、ドキドキだった。

 初めての町、初めての家、初めての……夜。

 何もかもが新鮮しんせん過ぎて、二人で居ることが当たり前なのに、当たり前じゃないみたいで。ただ幸せが続くと思ってた。


 そう、楽しいことばかりじゃ、なかった。

 単位たんいが足りないとか、そういうことじゃなくて。……ううん、そういうことも大変ではあったけど、あれはあれで、楽しかった。二人で教え合いっこして、これで良し! なんて言ってたら、二人共ふたりとも間違ってたりして。

 でも、バイト先で散々怒られて、マフラーらしちゃうくらいにへこんで帰ったら君が居なかった時は、この世の終わりかと思ったよ。『給湯器が壊れたから銭湯行ってくるよ~』なんてメッセ見れてなくて。スマホの電池切らしてた私が悪いんだけどさ。あれは、辛かった。……後でもう一回、一緒に銭湯行ったよね……あ、違うの、あの時は付き合ってくれて、ありがとう。

 そうそう、そういえば、って全然関係無いんだけど、二人してストーカーに遭って、そのストーカー同士がはちわせしてたのなんか、怖いはずなのに笑っちゃったよね。おまわりさんのおかげで助かったけど。あの引っ越し代も、痛かったなぁ。


 あはは、なんか、結局けっきょく笑っちゃってるね。

 でも多分、これでいいんだと思う。

 私達は、一緒に居れば、何があっても最後には笑えるようになる。

 そういう二人で居られたってことだし、これからもそうでありたいと思う。だからつまり、その――


 君が、好きです。この世の何より、誰より、大切です。これからずっと、私と……二人の人生を、歩んでくれませんか。

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君が頷く夕暮れに。 源なゆた @minamotonayuta

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