離さないで
「離さないで」
17歳となった月に催される林間学校。
二度目の夜分に行われる催し物〝肝試し〟
学級毎に、男女混合で無作為に決められた二人組で、林の奥の寺院に設置された紙切れを取って帰ってくるだけの単純な遊び事だが……。
私は、これに命を賭している。
──私はショタコンだ。
だからこそ実行委員になり、抽選箱の紙に仕掛けを施した。
好きな人は谷崎くん。女性より身長が低く童顔な彼がドストライク過ぎて好きになるしかない。
昨夜の学級別発表会ではジュリエット役として女装させられたんだから! すっごく可愛かった、堪らない!
そんな彼のペアとなれた私を狙って、期末学年一位の奴、運動部のエース、女子が好きそうな見た目チャラい奴等がこぞって、ペアを交換して欲しいと谷崎くんに交渉していた。
「邪な考えを持っている男性はお断りします。そこまで言うなら女性とペアを組みますが」
だから、私が行って全員振った。
まぁ、女子は私が気に食わないから誰も組んでくれないけど。それを知ってて少しリスクあること言ってみたり。
けど、谷崎くんが別の人と組まなくて良かった。緊張したよ〜。
そして開始された肝試しで、最後の組であることをいいことに私の方から手を繋いだ。
「わっ!?」
谷崎くんの反応に思わず声が出そうになる。
あぁ……夜風で冷えたのかな手が冷たい、お化けは怖くないんだね男らしく歩いているところにギャップ萌え……あ、手を繋げていることに感動して涙が……。
でも、思わず離さないでって命令したみたいになったけど、私のこと怖がってないかな……。
ペア決めの時、クラスがワイワイと盛り上がっている隙を突いて、実行委員の権限を使って彼を最初にくじを引かせた。
4番を引き当てたのを目の前で見た私は、すぐさま箱に手を突っ込み、同じ4番を懐に入れる。
番号毎に別の白い紙を使い分けており、私は手触りだけで当てられるようにしているのだ。
本当に実行委員に立候補して良かった。
「──山野さん! 僕が守ってあげるから安心してね!」
「……っ!? キモチぃぃぃぃぃ……!」
やばい!! 唐突の可愛さに絶頂してしまった!!
引かれたくなくて私はそっぽを向く。
何をやっているんだ私は……! 全然目を合わせれない……。
……やっぱりショタコンな私じゃダメだったか……嫌われちゃったかな。
ううん、それでも優しい彼は私と手は繋いでくれたままでいる。たとえ話せなくても、今はこの時間を堪能したい……ぐへへ。
はなさないで 杜侍音 @nekousagi
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