仮面の新入生
一人で、国を、組織を滅ぼせるか?
答えは無理だ。子供でも分かる。
ならば、どうすべきか、答えは簡単。
内側から滅ぼせば良い、それだけだ。
----------
聖コリアス学院、名前から分かると思うが、聖コリアス国直属の軍隊を育成する15歳〜20歳までを対象とした学園だ。当然の事ながら入学難易度はとてつもなく高い、それこそ、魔術を使えないと入れない程。いや、この国じゃあ聖縛か。
この話は一旦置いといて、基礎知識の話でもしようじゃないか。
昔、聖縛(魔術)はコリアス特権の物だった、自分達にしか使えない、途轍も無い武器、そんな物があればコリアスの価値が上がるのは当然だ。それこそ、一年も経過せずに世界はコリアスが支配した
だが、そこに聖縛が使える謎の集団、種族が発生した。
それが、魔女だ。
自分達にしか使えない筈の聖縛が使える。そりゃ、コリアスとしては都合が悪い、一刻も早く滅ぼしたい筈さ。
だから、コリアスは宣言した、あれは聖縛ではない、邪悪な者だけが使える、『魔術』だと。
その後の展開は容易に想像出来るだろう。
魔女狩り、本当に、本当に反吐が出る程クソ見てぇな習慣だ。そんな物があったから、母さんが、アイが……
いや、落ち着こう、この話は後で良い。
まぁ、一言で纏めると『嫉妬』だな。こっちの方が余程魔女らしい、醜い感情だ。
基礎知識はこれぐらいで良いだろう。
聖縛は選ばれし人しか使えない特殊技能、その中でも一握りの人しか入学出来ない、そんな学園だ。
では、一旦話を変えよう。コリアスの内側に潜り込む、その為に一番手っ取り早いのは何か?
簡単だ、学園を卒業する。
だから、俺は、………いや、ボクは、この学園を死んでも、卒業する。
それが、愛すべき人への贖罪だ。
白と黒のなんの装飾もされてない無骨な仮面
それを付け、ボクは門を潜る。
<===>はもう死んだ、今日からボクは、イアだ。
「皮肉なもんだな、全てをさらけ出していた昔より、全てを隠した今の方がよっぽど快適だ。」
それ程までに、ボクはコリアスを憎んでいたのだろう。
「さぁ、まずは、この学園を救済しようではないか。」
----------
「皆様、入学おめでとうございます。しかし、それだけでは油断禁物ですよ、ここから、君たちはクラスメイトを、仲間を蹴落として卒業するのです。
そして、一生聖コリアス国に仕えなさい!」
校長からの有り難い言葉、どうしようもなく、反吐が出る
思わず煙草を吸おうとポケットの中を漁ってしまった
「危ない危ない、今のボクは15歳なんだ。煙草なんて普通吸っている年齢じゃないか」
迂闊な事はやっていられないな、何がきっかけで正体がバレるか分かったもんじゃない
別にただの生徒にならバレても良いが…
「続いて、生徒会代表、アリア・コリアス」
新入生のあちらこちらから、歓声や嬉声が湧いてくる。
どうやら、あの勇者様はかなりの人気者らしい。
「皆、良くぞここまでたどり着いた。だが、本番はこれからだ、皆それぞれ仲間達で時には協力し、時には蹴落とし合い、学生生活を満喫して欲しい、以上、私からはこれだけだ!」
大きな拍手が湧いてくる、対して校長と言っている事は変わんなかったのだが、勇者というだけで言葉の価値が違うのだろう。
「ははっ、面白い程に滑稽だな」
意味もなく仮面に手を触れる、こうする事で、アイを思い出せる気がする。
「なぁ、君もそう思わないか?アイ」
誰も答えてはくれない、当たり前だ。もはやアイという人物はこの世界には存在していないのだから
だが、俺には、その痕跡だけで充分だった。
----------
この学園のクラスは、実力で分けられているらしい。
実に、実にありきたりで、合理的なシステムだろう。
上から、"神"クラス、"聖"クラス、"救"クラス、"粛"クラス、"灰"クラス
「さて、ボクは…」
まぁ、当然のように灰だ、そりゃそうか。
なんせボクは魔法……、いや、聖縛が使えないのだから。
他の生徒からしたら何故俺がここにいるのかすら分からないだろう。
生徒だけじゃない、先生もか。
少し昔のコネを使って入学したからな。
教室に入る、生徒達は全員灰にいる筈なのに、全員が生気に満ちた、やる気のある表情をしていた。
だが、俺を見た瞬間誰もが固まる、そりゃそうか。
こいつらはどうやら相手の聖力(魔力)を見れるらしいからな、聖縛が使えるか使えないかなんて一目で分かるのだろう。
「おい……、何故、ここに聖縛も使えないようなクズがいる?」
100%絡まれるとは思っていた、だが、面倒だな。
こいつらはまだ経験が浅い、相手の実力すら測れないのだろう、逆に、良い機会…か。
「話しかけているのが聞こえねぇのか!」
「うるさいな、少し黙ってくれ」
「聖力すらないようなクズが俺に歯向かってくるのか?」
「クズはそっちだろうに…」
「あ"あ"?」
ほら、少し煽っただけで乗ってきてくれる
「効いた時点で、君の負けだよ。」
隙をねらい、一瞬で近づく、そのまま首を掴み壁にたたきつけた
「グハァっ!?」
男は横に倒れ込んだ
横たわっている男の上に座る
「今の内に自己紹介をしておこうか、ボクの名前はイア、この学園の、頂点に立つ男だよ。」
そう言い、仮面越しでも分かるほどの笑顔を浮かべた。
愛すべき、殺すべき人々へ。 五目御飯 @lgdgtp
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。愛すべき、殺すべき人々へ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます