最終話 もう、はなして!!
「なんなのアンタら!! つまり、私の知らないところで付き合い始めて、私の知らないところでケンカして、その痴話喧嘩に私を巻き込んだあげく、私を置いてきぼりにして、たった今ヨリを戻したってこと!?」
三奈子は早口で一気にまくし立てた。
「えーと……」
「まあ、そうなるかなー……」
「ふっざけんなあああぁぁぁっ!!」
申し訳なさそうにする二人に、三奈子は最大級の怒りを声にしてぶつける。
「もうこうなったら、アンタらがお互いを何て言ったかここで暴露してやる!!」
やけくそになった三奈子はびしりと和泉に指先を突き付ける。
「和泉、アンタ言ったわよね!? 恭子はクールぶってて、お高くとまってるって!!」
「いや、キョウちゃんは私のことなんかどうでもいいんだって思ったら、ついそんなこと言っちゃって……それに、クールなところは好きだしー」
「惚気かあああぁぁぁっ!?」
渾身の攻撃のはずが、和泉にカウンターをくらい三奈子は絶叫する。
だが、くじけずに次は恭子を糾弾する。
「恭子、アンタ言ったわよね!? 和泉がサッカー部の男子たちのご機嫌とってるとこ見ると虫唾が走るって!!」
「好きな女があんなサルどもに囲まれてるかと思ったら、そりゃ虫唾が走るだろ」
「嫉妬かあああぁぁぁ!?」
またもきれいなカウンターが決まり、三奈子は絶叫する。
怒り狂っている三奈子に、恭子は真面目な顔で向き直った。
「三奈子、ごめん」
恭子は三奈子に向けて頭を下げ、和泉も合わせて頭を下げる。
「私たち、不安だったんだ。私たちみたいな関係ってまだまだ少数派だから。だから、周りから否定されるのが怖くて。それで、三奈子にも話せなかったんだ」
「今振り返ると、ミナちゃんのことを信じて話すべきだったと思う。本当にゴメン」
「こんな私たちだけど、これからも三奈子の友達でいたいんだ」
二人の謝罪に、三奈子の怒りがしゅるしゅると萎んでいく。
「いくら友達でも何もかも話せなんて言わない……人間、隠しときたいことの一つや二つあるでしょ……でも、アンタたちが私に隠して後ろめたいと思うようなことは……今後は絶対に話してね」
三奈子は腕を組んでフンと鼻をならして明後日の方を向く。
思ってたのと違ったけど、収まるところに収まった……
ま、これでいっか……
「じゃ、私はこれで……」
三奈子は二人に背を向けてバイバイと手を振る。
二人がヨリを戻した以上、私はお邪魔だ……
カップル+1で映画なんかまっぴらごめんだ……
というか、もうこれ以上二人に振り回されたくない……
そのまま立ち去ろうとする三奈子の両手が掴まれる。
「へ……」
見ると、右手を和泉が、左手を恭子が掴んでいた。
二人はにっこりとほほ笑んでいる。
「今までの埋め合わせしなきゃね」
「これからはまた3人で一緒に遊ぼう」
「いや、アンタたちだけで勝手に宜しくやってくれれば……」
二人はさらに三奈子の腕を一本ずつしっかり持って、三奈子を引きずっていく。
「さあ、元の予定通り映画行こう」
「早くしないと始まっちゃう」
「いや、もうアンタらに振り回されるのはたくさんよ!!」
必死に逃げようとする三奈子に、二人は声を揃えて言う。
『もう
三奈子はもう何度目かわかない叫び声をあげながらずるずると引きずられていった。
「いやー、もう
もう、はなして!! 完
もう、はなして!! 阿々 亜 @self-actualization
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