第2話:チーズケーキはあげない。
僕とドールは同年代ということもあって、ホームステイにやって来てすぐに
仲良くなった。
だから僕とはタメで話すし・・・遠慮したりもしない、気取る必要もなく、
なんでも気さくに話せる、そんな相手は今までいなかった。
ドールって魔女は僕にとってとても心地いい存在。
彼女がそばにいるだけで僕は癒される。
なにもしてくれなくていい・・・ただそばにいてくれたら・・・。
だけど、お互いのことをどう思ってるかは今まで一度もクチにしたことなかった。
僕はその結果が怖かったから無理には確かめないでいる。
つまり僕のほうがドールに好意を持ってるってことでいいと思う。
で、ドールは今日も僕と学校にいる。
休憩時間になると、あいかわらず僕のそばに来ている。
飼い主にしか慣れてない猫みたいに・・・。
まあ、たしかにドールは人間の友達を率先して作ろうとしない。
これにはドールが魔女だってことに関係があるのかもしれない。
だけど、クラスの男子の何人かからは告られたみたいだけど相手にして
ないみたいだ。
告ったやつらはみんなことごとく撃沈。
ドールに魔法でカエルかゴキブリに変えられないだけマシだ。
ドールは学校で話し足りなくて家に帰ってからも機関銃のようにしゃべってくる。
話さないとクチに虫がわくんじゃないかって思うくらい。
で、いい加減な気持ちで話を聞いて適当に合図地を打ったり、うたた寝なんか
しようものなら、めちゃ起こられる。
ゴキブリに変えられるんじゃないかってくらいの勢いで。
もし変えられたりしたら、冷蔵庫の裏にいるゴキブリと間違えられて叩き
潰されたら一巻の終わりだよ。
そうそう冷蔵庫で思い出したけど、実はこれが一番大事なことかもしれない。
ドールはチーズケーキが大好物。
以前、ドールがお菓子屋さんでチーズケーキを買って来て、おやつにしようと
冷蔵庫で冷やしてあったらしい。
僕はなにも知らないで美味そうだったからチーズケーキをなにげに食べたら、
さあ、「誰が食べんたんだ」ってことになって、正直に僕だって言ったら、まあ、
めちゃ怒られて、その時はゴキブリにはされなかったけど一週間クチを聞いて
くれなかった。
彼女のチーズケーキを間違って食べたりしたら大変なことになってしまうから
家族は触らぬ神に祟りなしって、いっさい触れない。
うっかり、なんて言い訳は通用しない。
だから冷蔵庫にチーズケーキがあっても、腐っていても誰も見向きもしない。
朝、学校へ行く時も揉める。
僕はマイペースだけど、ドールはちょっと慌て者でそそっかしい。
僕とは性格がまるで反対。
どっちかって言うとのんびり屋の僕をドールはぐいぐい引っ張っていく。
「そんなにゆっくり歩いてたらバスに乗り遅れちゃうよ」
そう言ってドールは僕の手を引っ張るてどんどん歩く。
それでも、ゆっくり歩いてると今度は僕の後ろに回って背中を押しはじめる。
「そんなことして急がなくてもまだバスは来ないよ」
「そうやってのんびり構えれたら乗り遅れちゃったりするんです」
「急いては事を仕損じるってことわざもあるぞ」
「善は急げとも言います』
「外人のくせにそんなことわざ、よく知ってるな〜」
「くせにってなんですか?」
「もういいから、いちいち口答えしないっ!!」
「ゴキブリに変えちゃうよ」
「それとも私のホウキに乗って学校まで一気に飛んでっちゃう?」
「それだけは勘弁・・・僕、男だから、あんな細い棒に跨るなんてごめんだよ」
「大事なところが、つぶれちゃうよ」
「大事なところって?」
「女の子には一生分からないところだよ」
まあ、そういうのは、いつものことだけど・・・実は僕はそんなたわいもない
やりとり嫌じゃないんだ・・・内心楽しんでたりする。
つづく。
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