幸せの魔法をあげる、でもチーズケーキはあげない。

猫野 尻尾

第1話:イギリスからやって来た女の子。

「ドールズベリー・ホワイトカラント」


それが僕んちにホームステイしてるウィッチクラフト。

朝、早くから、にぎやかしく元気いっぱいの女の子の魔法使い。


僕は朝は弱いから、あまりテンション上げられると逆にこっちがテンション

下がる・・・頼むから静かにしてほしい。


で、ドールズベリー「略してドール」は今、僕と同じ学校に通っている、

僕が17歳、ドールはひとつ歳が下の16歳、クラスは違うけど休憩時間になると、

いつの間にか僕のクラスに来て僕のそばにいる。

だから、いつもクラスのみんなから、冷やかされる。

おまえは一年生だろって目で見られても動じない。

家にいる時も学校にいる時も僕から目を離さない。


いつかドールが言ってた・・・僕を守るって・・・

いったい何から僕を守ろうって言うんだろ?

だけどドールにとって僕は大切なモノのひとつらしい。


で、どうして魔女「ドールズベリー・ホワイトカラント」が僕の家にいるか

ってことをだよね・・・。


それはね、ある日、父親が僕の部屋にやってきて・・・


「外国からうちにホームステイにやって来る子がいるから」って。


父親がイギリスのブロンプトンってところに仕事で行った時、向こうで

知り合った児童養護施設の人に頼まれたんだそうだ。

女の子をひとり留学させたいので、早乙女さんの家にホームステイさせて

やっもらえいないかって・・・。


「お前と同世代だから、仲良くしてやってくれ」って父親に言われた。


僕んち「早乙女家」は、ちょっとばかし裕福な家だから女の子ひとりくらい

受け入れたところで特に問題はない。


そして僕はその早乙女家の次男。


名前は「早乙女 潤之助さおとめ じゅんのすけ」高校二年生。


で、数日後ドールが我が家にやって来た。


はじめてドールを見た時の印象と感想。

わ、外人だ!!。

で、次に可愛い!!

当然だけど誰が見ても可愛いって思うくらいの可愛さ・・・僕の美的センスの

保証書をあげてもいい。

ドールはシルクのような綺麗な金髪をしている。


で、一緒に暮らし始めて、何となくわかって来たドールの性格。

とにかく明るい、明るい安村さんより、輪をかけて明るい。

ドールが落ち込んでる姿を見たことがない。


彼女の明るさには、とにかく人を幸せにするオーラが漂ってる気がする。

それが彼女の魅力だし不思議さでもある。


そしてもっとも肝心なこと。

ドールがどうして魔女だって分かったかってこと・・・。

それは自分でそうだって言ったから・・・魔法が使えるって・・・。


最初は信じられなかったんだ。

この時代に魔女なんている訳ないし、そんな話も聞いたことがないし、まして

や見たこともない。

でも実は僕が無知なだけだったみたいだ。


父親に聞くとイギリスの片田舎には、まだ魔女が暮らしてる場所があるんだそうだ。

なんでも英南西部に伸びるコーンウォール半島にあるボスキャッスルという

小さな漁村に今でも実在するらしい。

たぶん、ドールもその村からブロンプトンに出てきたみたいだ。


で、本当に魔法が使えるって証拠を見せられた。

玄関に飾ってあった花瓶の一輪挿しの枯れかかった花を、綺麗なコスモスの

花に変えてしまった。

他にも座布団や椅子やテーブルなんかも、次々別のモノに変えてしまったんだ。


そんなの目の前で見せられたら、信じるしかないよね。

もしマジックだったとしても、それはれですごいって思う。


もちろん変えたモノは元にもどしてくれたけど・・・。


「でも私の魔法、一時間しか持たないの・・・まだ完璧じゃないからね」


ドールはそう言った。


(そうか、もしゴキブリに変えられても一時間辛抱したら元にもどるんだ?)

(少し、安心)


普段でも庭の植え込みの枯れた花を見るとドールは花に向かって「元気出してね〜」

って声をかけると、それまで萎れていた花が元気に頭を持ち上げるんだ。


僕はそれを「ドールの目覚めのオーラ」って呼んでる。


つづく。

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