第3話 意味深な発言?

 昼休みに、女上司の皆川みながわさんから投資の話を聴いた俺。退社して帰りの電車に揺られてる間に、考えをまとめておこう。


彼女は“投資をやらないのも立派な選択”と言った。その時に何故かデスゲームを例に出して説明してくれたが…。


あれは堅苦しくならないように、彼女なりに気遣ってくれたんだろう。実際それが少しだけ話題になったから、無駄にはなっていない。


…って、脇道にそれてしまった。本題に戻らないと!


正直なところ、投資をするべきか悩んでいる。もちろんリスクは怖いが、会社の給料だけでやっていくのは厳しい。小さい会社勤めだから尚更だ。


もっと皆川さんに話を聴いた方が良いな。もちろん彼女の用事最優先なのは言うまでもない。



 翌日。出勤して自分のデスクに座ると、パソコンのキーボードあたりに小さいメモが貼ってある。差出人は…、皆川さんだ。


『今日は会議ないから、ゆっくり話せると思うわ』


今日も話してくれるのか? ありがたいな~。彼女のデスクのほうを見ると、書類に目を通してるように見える。礼は話す時で良いや。


さて、俺も自分の仕事を頑張ろう!



 昼休みちょっと前に取引先から戻ってきた俺。オフィスに入ると、自分のデスクにいる皆川さんと目が合う。


「尾形君お疲れ。良ければ今日も話すわよ?」


「じゃあ、今日もお願いします」


「任せて」


俺はデスクの上に、コンビニで買った弁当を出す。皆川さんは椅子と一緒に何かを包んだ物を持っている。


「昨日は菓子パンとかおにぎりにしたけど、今日は作ったお弁当なの」


「そうなんですか。弁当作るなんて凄いですね」

1人暮らしの社会人に自炊は面倒過ぎる…。


「昨日の夕食の分を詰めただけよ。このために多く作ったの」


俺はそもそも弁当箱を持ってないから、詰めようがない…。


「…今日も2人きりなのね」

オフィスを見渡した後、皆川さんがつぶやく。


「みたいですね」

彼女を意識してないから、何も気にならない。


「今日は2回目だから、初歩中の初歩にしましょう。何事も基礎は大切よ」


「はい!」

どんな話をしてくれるか楽しみだ。



 「投資に関わらず、この世に“絶対”なんてないのよ」


「? そんなの当たり前では?」

いくらなんでも初歩過ぎる。


「みんなそう思えば良いんだけど、思わないから“絶対儲かる”みたいな詐欺はなくならないのよ…」


詐欺関連のニュースは、時期はもちろん年代に関係なくある。詐欺に遭った人は“自分が遭うとは思わなかった”などと言うケースが多い…。


「だから尾形君はしっかりしてちょうだい」


「わかってますよ」

独り身でも無茶するつもりはない。両親の事を考えたら尚更だ。



 「この世に“絶対”はないけど、言い換えると何が起こるかわからないわよね」


「そうですね」

良い意味にも悪い意味にも聴こえるな。


「ねぇ。私と尾形君の関係はどうなると思う?」


「どうなる? これからも“先輩と後輩”なのでは?」


仮にどちらかが退職しても、歳の差は変わらない。この答え以上があるか?


「…かもね」

クスッと笑う皆川さん。


昼休みの時間はまだあるが、話が一区切りしたので食事に集中するのだった。

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投資について悩んでいたら、女上司との距離がグッと縮まった件 あかせ @red_blanc

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