はしした
イタチ
第1話
神社
ある日、私は、堤防沿いの神社に来ていた
川をすべて、せき止めるように、反乱したら危険な場所を、それは、動物園の折か何かのように、遠くのほうに、堰を築き、
その上を、軽トラック達が、行きかい、川側の畑へと、足を運ぶ、昔は、氾濫するたびに、良い肥料となったらしいが、最近は、川が汚れすぎて、とても、使える状態ではなく、逆に、カチカチのひび割れた、地面に、数年に一度は、変化していた。それでも、春や冬前には、農機具で、その地面を耕し、その中に、ふかふかになるように、様々なものを、混ぜ込んだりしている
人間は、これほど、懸命にやっているが、荒れ放題の畑以外の場所を、掘ってみると、草が、耕すのだろう、非常に、柔らかく、自然のサイクルとは、良く出来たものだと、感心するのであった
私は、堤防を降り、その坂道を、だらだらと、進み、畑の中を、進む、最近では、農家をする人が減り、どんどんと、侵略戦争に負けたように、気が付くと、草が、生い茂っている、その敗北を横目に遠くの方では、重機を使い、北海道でもないのに、大量の土地に、草が間に、生えることも、いとわずに、機械任せで、大豆を、植えている光景を見たりすると、植物の生命力を、蔑ろにしているような気もする。私は、そんな、田んぼや畑、自然に、帰ったような区画を、通り過ぎ、畑を、もう、昔から、作っていないような、最初から、手つかずのような、川の真ん前まで来ていた。その横には、反乱を、収めるための神社と、その下には、その地蔵が、地面に埋もれるように、コンクリートの小さな三角屋根の社に、入っている。私は、そのまま、その横を通り過ぎ、神社の周囲に埋められている桜の下まで来ていた。まだここら辺は、ぎりぎりまで、畑があるが、遠くのほうは、柳が生え、未開の地のように、植物が、毎回のサイクルを、繰り返している、そんな中に、私は一人、もうすぐ、夕暮れ時だと言うのに、こんなところに来ていた。それもこれも、家に帰れば、引きこもりの変人の妹がいるし、逆に、学校に行っても、放課後、遊ぶ相手も、また、足の遅い自分は、特に面白い物ではなかった。確かに、楽しいけど、最近、野球が、流行りだして、どうにも、ルールが多いのは、僕には、苦手だったのだ。神社の真ん前まで、来た僕は、その小さな2メートル2メートル以下の、その小さな神社の土台のコンクリートの上に行く、一応、お前りしたのちに、覗き込むと、奥の台の上には、丸い、鏡が、一つ置かれ、左右には、徳利のようなものや、お神酒が、見えた
もうだいぶ薄暗い、僕は、そのまま、帰ろうと、思った、川も近く、独特の生臭いにおいは、海とは、明らかに、違う、若の流れが「ザァーーーーー」と、奥のほうで聞こえ、顔を上げれば、その上に、赤い橋が、竜か何かのように、どんと、伸びているのは、この片田舎にしても、異常な建造物に、見えなくもない、夜中に、一度見たが、街灯に照らされ、そのオレンジが、更に、赤く、まるで、昔居た町のネオン街のような異質さがある。僕は、向こうの方で、まだ、明るいにもかかわらず、早めに付いている街灯の明かりを、邪魔をするように、伸ばされた桜の木の間から、眺めていた。もうそろそろ時間だ。私は、そろそろ、帰ろうと、神社に、一礼したのちに、向きを変えて、一歩、足を、踏み出そうとしたとき、斜面に、何かが、浮き出しているのが見えた。崖のようなそれは、木が生えていなければ、毎回の洪水で、直ぐに地面が削り取られ、地形があっという間に変わる、それでも、何千年と、川が流れて、残った場所と言うこともできる。そんな斜面の途中、そこに、うわっている、桜の根元に、僕は、何かを、発見した、地面は、柔らかく、砂場の砂よりも、ふかふかとしていることがほとんどだ、そこに、鉄色の何かを、僕は見つけた、最近流されたのだろうか、つい前年の洪水は、非常に高く、今見た神社の中に、あと、10センチもすれば、入るほどの水が流れ、近所の人たちが、こぞって、携帯片手に、その光景を、見ていたのは懐かしい。堤防から、あと2,3メートルで中に、流れ込む、学校では以前、その洪水の勉強をした言っていた。きっと、その時以来の大惨事に危うくなりかけ、橋の下ぎりぎりを、黄土色の濁流が、流れる光景は、生きた心地がしないというものだった。私は、そこら辺に生えた、細い木の幼木を、掴みながら、半ば、ぶら下がるように、その場所まで行ってみた。別段、特に何と言う事もない、四角いそれは、煎餅などが、入ったカンカンのように見え、私は、それを、手に取ると、何とか、上まで、登った。そこで、それを、開けようと、手に掴むが、20センチ20センチ程のそれは、明らかに、錆びついており、手に持つところが、粉のように、ぼろぼろと、している、私は、それを、無造作に、地面に、投げつけると、薄い鉄のお陰か、それは、変形し、上蓋を、開いた隙間から、開ける事が出来た。タイムカプセルを、埋めるために、その場所探しに、来ていたが、思わぬ物を、見つけて、しまったらしい。私は、その中を覗き込み、首をかしげる、ビニールに入れられたそれは、えらく小さく、いわゆる写真と言うやつらしかった
はがきかも知れないが、しかし、他人の写真なんて、見る趣味はない、私は、そんなことを考えたが、興味本位に、其の何枚にもまかれ、白く白濁している、袋を、破くように、開けた、かなり古い物らしく、外側は、ぱらぱらと、劣化し、手元から、かんかんに、落ちていく、暗い中、私は、携帯を取り出し、ライトの中、それを見る、ようやく、最後の袋から、私は、その紙を、抜き出す、それなりに固い物らしく、それを、手に取ってみたとき、やはり、写真だと、確信した、表面は、ツルツルしており、ただの安い物ではなく、また、如何やら白黒のその年代から考えて、もしかすると、ただの写真やプリントではなく、いわゆる、暗室を、使用して現像していた、そんな世代のものらしい、現代では、写真なんかは、そんなものは不要であるが、しかし、昔の写真でさえ、その人間が死ねば、ゴミになる、データーは、その分場所は取らないかもしれないが、サーバーも、十分ごみだろうか
どちらにしろ、その内容が、宝とは限らない
付属している、その、ライトで、写真を照らすと、そこには、集合写真のようなものが、写っていた
しかし、白黒なので、最初は、喪服かとも思ったが、正直、良くは、分からない、少なくとも、学生服ではないし、その顔は、年を取りすぎている、せいぜい、50と言う所だろうか
そうなると、これは・・・
僕は、それを眺めながら、妙なことに、一つ気が付く
「・・・」
全員が全員、何の嫌がらせか、それとも、写真屋の災難か
一人を除き、みな、目を閉じているのであった。
帰宅
家の明かりは、消えていた、私は、一人、街灯の無いような道を歩きながら、家までたどり着いた
一軒家の奥の窓だけ、わずかに青い明りが、ぼんやりと向こうのほうに、見えていた
私は、玄関の鍵を、開けながら、中に入ると、明かりの線を引っ張った
軽く引っかかるような、感触の後、にさんど、点滅を繰り返した、電球が、明かりを、上に、灯した
私は、家の中に入ると、手早く、料理の支度を開始した、と言っても、分厚い料理本が、日めくりカレンダーのように、毎日、前のほうから、一品ずつ後ろに下がっているだけである
最近全く同じものしか食べていないというか、買い物の時のカートの中が、繰り返しのように、どこか、見覚えのあるもので、飽き飽きすることが、何度かあった、しかし、人間、脳みそはないが、秋に対する、努力と対処として、自然として、一冊の料理辞典を、どこに出しても、おいしいと、いわれる程度には、無難に、こなせることは、不幸中の幸いだろうが、やはりそれでも飽きてきてしまえば、仕方がない、しかし、今のところ、第2冊目を、用意するつもりもなかった
30分もたたずに、数だけこなしているせいもあり、同時進行で、三品程、作り終えた、私は、二階に上がる、ここに、引っ越してからというもの、学校にも行かず、引きこもっている、妹に、正直、会いたくはないが、しかし、それも、仕方がない、壁を見るよりは、ましだろう
「おい、帰ったぞ」
まるで、檻の中のライオンのように、のっそりと出てきたその目は、何をやっていたのか、目が充血している、どうせ、一晩中本や、パソコンでもしていたのだろうと私には、伺わせた
「また、魚の煮つけと、ほうれん草、後は、薄味の禅スープですか、正直、SANNGAKUで、インド料理の全集でも、買おうかと思って居ますよ」
私は、無視して、のろのろと、後をついてくる、何かに、背を向けて、歩き出す
二階から一階に降り、そのまま、よそってある、テーブルを見る
もう何回見たかわからない、何週目であろうか
私は、更に盛りつけた、その料理を、前に、手を合わせる
うすぼんやりと、上の明かりが、ジンワリ下を照らしていた
「ほうほう、それで、何を、見つけたんですか、もちろん写真を、持ってきていますよね」
私は、首を振った、そんな誰のものかわからないものを、持って帰ってはいない
破壊してしまっている以上、何とも言えないが、とりあえず、雨風が当たらないように神社の屋根の下にはおいてある
「写真も撮っていないんですか」
食事中、特に何という会話もない、妹は妹で、良く分からない、ネット知識を、並べ立てるだけだし
自分は自分としても、特に何にもない、ただ、今日は珍しく、こんなことがあったと、何か、聞かれたままに、答えたのだ
そこで、妹は、写真がない事に、不平を言っていたが、なんとなく、こうなることを、予想していたのだろうか、私は、一枚、フラッシュをたいて、暗い中撮った写真を一枚、画面を、操作して、相手に渡した
「・・・これ、静さんじゃ無いですか」
静・・どこかで聞いた頃がある、確か、村中の誰かだったようだ
「私、実際には、あったことはありませんが・・・・ほら、あの赤い郵便ポストの後ろの家です
知っているでしょ、鯉を、用水路の中に入れて、その上、湧水を、常に、入るようにしている
こいつは、良く引きこもっているくせして、知っているな
僕は、そんなことを思いながら、箸を煮魚に、入れると、今日は、太刀魚の白身が、皿の上で、ほろりと崩れた
「それは・・・」
妹は、どたどたと、食事中にもかかわらず、二階に駆け上がった、ちょっと、間違えば、屋根裏に潜む、クマネズミのような騒音だ。しばらくして、また、二階からすぐに駆け降りる音がした
その手には、青い分厚いスクラップ帳のようなものが、握られており、その題名は、かすれて見えない、汚れているだけで、何も書かれていない可能性も、大いにある
「・・」
目の前に、ばたんと開かれる、そのファイルのビニールの袋、そこには、厚紙に様々なものが、張られている、ただ、それは、どうも、新聞や雑誌と言うべきものと言うよりも、薄いコピーした紙質に見えた
「なんだそれ」
それを、覗き込みながら、内容を探ってみる
全てが、コピーの切り抜きだけではなく、パソコンで、いじってから、印刷したようで、白紙部分には、めんどくさいのか、どうかは、分からないが、わざわざ、余白を作り、そこに、ご丁寧に、自分で、文字を、書き込んでいるらしかった、その鉛筆の淡い色を、見ながら、さしても、細かい筆跡を、目で追っていて、奇妙なことに気が付いた、それは人物紹介のような、内容であるが、どうにも、見覚えがあり、なおかつ、新聞記事のようなものでは、到底なかった。その名前は、近所の人であるし、ページごとに、区切られたそれは、そうやら、区分、そして、時代ごとに、項目が、下へ下へと、どんどん新しくなっていく、人物説明と、その土地の歴史が、入ったそれは、簡易的と言うには、余りにもめんどくさい代物に思われた
「何やっているんだお前」
ってへ、と、何か、自分で、頭を、殴っているが、無視することにした
「いえ、やっぱり、ご近所づきあいって、大事だと思うので、図書館や、学校に行って、資料作りを、日々コツコツと」
そういえば、こいつ、普段家から出ないくせに、時々、家に帰ると、玄関に、靴を見る時があったが
そこら辺を散策したのではなく、学校に行っていたのか、もしそれが本当であれば、これは、大きな進歩かも知れない
「まあ、人に会うのが嫌だから、図書館しか、行きませんし、それに、皆が授業をしている間だけ
だから、司書さんにも、合わないように、町の図書館から、この学校に来る日だけは、行きませんよ絶対」
何だろうか、私は、どこか、泣けてくる気がした
「それで、これを見せたって言う事は、どういう事なんですか」
私は、そう聞くと、何とも、うざったい顔をして、その長い髪を、隠したような顔からかきあげて言う
「何言っているんでですか、鈍いですね、見てください」
と、ページを指さす、わざわざ、自分で書いたのだろう、内側の紙には、ページ数が、刻まれていた。写真の中を、指出す事を、考えるに、先ほど言っていた、静おばさんと言う人なのだろう
確か苗字は、多々羅だったか、ここら辺では、非常に、多い名前だ、多分、田中と言う苗字が、一部の集落に多く、後は、ばらけて居るものの、それなりに、どの学年でも、聞くことが多かった。
「それが、何だと・・」
そこまで言いかけて、テーブルに、置きっぱなしだった画面に、目を向ける、先ほど撮ってきた写真が、そのまま、写真の写真の画像を、その画面に写している
「・・・」その写真は、かなり、幼いころの写真の様であったが、どことなく雰囲気が、似ていた
「私、ちょっと不思議だったんです」
私は、何でだと聞き返した
「この写真は、もしかすると、最後の記念写真だったのかもしれません」
妹はそういうと、パラパラと、その青いカバーのスクラップブックを、めくる、それは数ページごとに、止めていくが、全てに写真があるわけではないようであったが、つまり、様々な地域の人間を、指さすと言う事になっていた
「多分、この人が、これで、ここが、この人によく似ている、で、ここが」
私は、首をかしげる、何が言いたいのだろうか、それは、記念写真ぐらいとるだろう、しかし、何かさっき妙なことを言っていた
しかし、私は、そのページを、めくる手を、見ながら考える、外に行かないから、ひょろひょろとしている、少しは、農作業でもして、手の皮でも、厚くすればいいのだ、面の皮ではなくて
そうすれば、実益の無い空想ではなく、その中から、現実でも、見えてきそうな気もするが
私が、そんなことを、ぼんやりんと考えていると
何か、ぎょっとするような目で、こちらをにらむと
「話を聞いてたんですか」
私は言う、答える
「だから、記念写真だろ、年齢を重ねれば、誰かいなくなることも、良くあることじゃないか、親戚のおじいさんが、おじさんと話していたよ」
違います。と、きっぱり良きって
めずらしく、眉を、太目て、生真面目そうに
「五十年前、清水村大洪水が、起き、周囲は、濁流が入り込み、家畜の牛は、助けることもできず、縄につながれたまま、もーもーと、叫びながら川の中で溺死したそうです。つまり、この清水村全体が、盆地型ですから、水が抜けることなく、そして、ここら辺は、一体が、ほら」
と、一番最初のページを、めくると、地図が、描かれている
そこには、夕方ごとに、散歩した黒川や中央にある大きな、一大田んぼ場所その周囲を、山の少し高い場所に、民家が立ち並んでいた。そこまで見て、私は、そこに書かれてある、数字を見て、ああと、思い当たる、ページ数かと思ったが、どうやら、これは、区画ごとに、割り振られた数字だったらしい、しかし、これは、何のために作ったのか、よほど、引きこもりは暇らしい、毎日が自由研究なのかもしれないが、しかし、これは、一体何の話をしているというのか、それと、そう、この洪水の話と、あの集合写真が、何の関係があるというのか
私は、どうやら、阿保のように、改めて、どうも、間抜け面を、示していたらしく、妹の鋭い指摘の中
「まだ分かって居ないんですか、この人たちは、この、洪水の日に、同窓会があって、集まったのですが運悪く、ほとんどが、逃げ遅れ、結果、一人しか生き残らなかったんです今現在ここに住んでいる人はこの教室の中で一人しかいないんです」
つまり、それが、静さんと、言う訳か
「実際問題、遺体が、見つかった人もいますが、ほとんどが、流されたり、性別が判別できないほどで、あったりしたそうです、運良く見つかっても、濁流に流されたときにできた傷が多く、早くしても大変だったらしいです」
私は、何処からそんな情報を、持ってくるのかと聞くと
「人の話は、良く聞くものです」
と、村中を、聞いて回っていると言う、これは、いわゆる、耳年増、姦しいか、いや、単純に、田舎の性なのか、どちらにして、じゃあ、と、私は聞いてみた
「実際に、見つからなかった人は、生存している可能性が、あると言う訳だな」
まあ、そうなりますね、と、そんな事を言っている
「でも、余りにも悲惨で、こん土地からは、離れたくなったかもしれませんよ」
しかし、学校の生徒さえ顔を合わせないと言うのに、なぜ近所の・・まあ、ご近所づきあい第一とか言って居たな・・こいつの場合、好奇心としか言いようがなさそうにないが
しかし、熱心に、ページを見て、何か、見せびらかしか、悦か、それとも、これから、その分厚い紙をもって、何か、教義が、始まるのかとも、思ったが、首を傾げた
「どうしたんだ」
先ほどから何か、小言で、つぶやいていると思ったら、「おかしいな、おかしいな」と近づくと聞こえた、そのフクロウのように、目が、まん丸で、見ている彼女に、そう尋ねると
「いえ」
彼女は、写真を、めくり、最後に、指さして言った
「・・・人数を、全て、調べてみたんですが、一人、多いんです。それと、この人誰なんでしょう、調べて集めた中に、写真の特徴も無いし、今一つ分かりかねます」
写真の中で、一人だけ、目をつぶっていない、男を、さして、彼女はそういって、首を傾げた
ナぞ
続けるように、彼女は言う
「それに、奇妙なことが、もう一つあります。この写真は、一体、誰が、撮ったんでしょうか」
私は言う
「そりゃ、皆で集まった時に」
妹が続ける
「見てください、このメンバー、丁度、この時期に、無くなった人の顔ぶれですし、それに、背後の紙に、この年の同窓会の名前が、書かれてあります、丁度今から五十年前
そうなると、この中の、誰かが、この写真をもって、現像したことになりますが、しかし、この日、静さん以外は、みな、お亡くなりになっています。それに、静さんも、命からがら、助けられた時には、全身傷だらけですし、入院から出ても、あの通り、まともに喋れません
おかしいです、おかしいと思いませんか、じゃあ、誰が」
私は、思い付きで
「写真屋は」
と、そう言うが、彼女は首を振った
「この頃の現像写真の紙を、何枚も見せてもらいましたが、そのすべてが、今は無き喜三写真館の物ですが、これには、枠が付いていますし、多分ですが、紙質が違います。喜三写真館で、無いとは言い切れませんが、枠の付いた写真を、見たことも、資料も、拝見した記憶がない事から考えて、外部の場所へ、もしくは、自分で、現像した可能性が、非常に強いかと思われ」
首をかしげる、じゃあ、一体、その時、ぎょっとする目で、こちらを見ている、あの丸い目で、一人だけ、目のあいている、人がこちらを見ている気がする
「こいつは誰だ」
妹も、そう思うのだろう、この人が、写真を・・・しかし、だとしたら、誰なのだろうか・・・
病院
「馬入 竜馬さんと、皐さんですね、はい、面会大丈夫ですよ」
我々は、久しぶりに、外出する、まるで、ろうそくか、吸血鬼のように、肌の白い妹を連れて、病院に、面会をしていた
もちろん、それは、静さんであるし、正直、大丈夫かと、心配をしたが、大丈夫そうであった
しかし、それは、扉を開けた瞬間起こった
「ぎゃああーあーあーあー」
いきなり甲高い声が上がり
パジャマを着て、プロレス観戦をしていた老婆が、叫んだ
如何やら、kiss柄の名札に、そう書かれているから
彼女が如何やら
「静」さんなのだろう
余りの大声に、わらわらと、足音が聞こえる
私は、とっさに、写真を出すが、取り押さえるように、叫ぶ彼女と自分たち
何があったかと聞かれても、入室しただけであるし
同席していた係の人も、何かしたというシーンを見てはいない
一応、監視カメラや、彼女に外的何かないかと確認したが
身体に異常はなく、ただ、彼女が自分を抱きしめて、そのあとが、青あざのようにうっ血していた
我々が、室内に、入る前は、穏やかであったが
「こんなこと、一度もないんだけどね」
申し訳なさそうに、言われ、すごすごと、直ぐに退散した
一応、写真を見せると、彼女が
「よく似てますね、お父さんですか・・でも、白黒だから・・お爺さん」
私は、それを言われた時、立ち止まった、まさかな
家の祖父は、婿入りで、両親が、無くなった時、田舎に、お爺さんの家を、書類から発見したのだ
そして、つい最近、あの家に、引っ越したと言う訳なのだ・・
じゃあ・・
そういわれて、改めて、私は、妹を見ると、確かに、目のあたりが、似ているような気がする
しかし、祖父は、もう死んでいるから、もう、聞きようがない・・・
どうしたものか、同じ地区の静さんには、聞く事が出来ない
「なあ、何か、知らないか」
妹は、ちょっと立ち止まると、黙々と先に歩き始めた、私は、仕方なくそのあとを追うことにした
「どっどうしたんだ」
両人息も絶えだえ、汗まみれに、なりながら、玄関の中に入る
そのまま靴を脱いで、濡れた足で先に進む
ちゃぶ台の上、お勝手の横の茶の間に、いつの間にか、青いファイルを、開く
「やっぱり」
開口一番、唇を開き、こう言った。そのとがらせた口物とはまるでフクロウのくちばしの様であった
「兄さんは、部落差別ってしっていますか」
私は、ぼんやりと、地図を見ながら、何のことだろうと、紙を眺めていた
解決
「ここの地区は、馬や牛と言うような動物の名前が、付く苗字が、多く居ます、自分たちの苗字も、結構多いです、あと三軒ぐらいで、そういう場合、大抵、それは、身分として、一番下
つまり、獣をさばいたり、川を汚したり、そういう職種を、一つの地区にまとめて、一つの差別としたんです、これは、所謂、ルールを、厳しくするため、苦しい地域に良く見られる生存戦略ですが、
そうですか、分かります。そうだったんですか」
私は、頭に?が浮かぶ
「どういう事だ」
一応、聞きに行きましょう、彼女はそういうと、また帽子をかぶって、表に出た
そのまま、今度は、近場なのか、自転車には乗らず、そのまま、村中の一軒に入る
そこは、赤い大きな屋根で、所謂、平屋建てと言うようなものだが、屋根に、窓がないだけで、屋根裏はある、それなりに大きな建物だ、これも、夏は涼しく、通気性良しの従来の日本に適した建築物であろうか
中に入ると、よく来たね、と言う掛け声とともに、お茶とお菓子を、わんこそばのように出されるにいたる
「それで何ですが、部落差別なのですが」
一瞬目つきが、鋭くなる
「まあ、時代も変わっているけど、まだ、いまだに、固執している人もいるから・・あんまり大きく言わないほうが」
多々羅 清二さんが、そう言いながら、お茶を注いtだ
「実は、この写真なんですが」
それを見て、目を見開く
「これは、何の写真ですか」
私は、話を省きながら
「いえ、見つけたんですが、如何やら、この日は、あの洪水の日だったようなのです」
災害に、今ほど、口酸っぱく言われず、非難も整備が整って居な時代
彼らは、逃げ遅れたのだ
「はあ、そんな写真が、しかし、それが、何かあったんですか」
困惑した表情の中、何と切り出そうかと考えていると
「実は、その、ここの地区の人に話を伺ったのですが、どうしてか一人この写真に、多く映って居まして、静さん以外に同クラスの人って、この地区に、居ましたか、と言う事を、聞きたくて」
ああ、その為にわざわざ、しかし、スクラップ人帳完成したら見せてほしいね。
などと言われていたが、こいつは、口外していたのか、大丈夫か頭
我が妹ながら・・
「ああ、そういえば、そうだよ、今まで、何で忘れて・・ああ、そうだ、あれが」
どうしたんですか、先を聞きたそうに妹が、座っていた
「ああ、実は、馬入のおじさんが、昔、息子が、死んでから、かなり落ち込んだのだろう、めっきりふさぎ込んで、息子の存在と言うものを、全て、消しにかかったんだ
それこそ、酷く変わってしまって、その変わりようから
親たちもみな、そういうものだから、何か言えば、殺されんかねないと・・だからか、だから今まで、思い出さないように、まあ、しかし、皐ちゃんが、卒業文集で、調べていても、見つからないわけだよ、前にも話したけど、何でもそのころは、学校でも、差別部落の子供は、卒業文集に、載せてもらえなかったと母親に、聞いたことがある」
そうか、あいつが、一人、納得していたと言う事は、そういう事か
つまり、あの災害の時、生き残ったのは
「つまり、この地区には、あの当時、二人同学年の子供がいたんだ」
お礼を言って、家に帰る、だいぶ日が落ち始めた
ちゃぶ台の上、二人で、座布団を、引いて、向かい合っている
その前の青いスクラップを前に、彼女が口を、開いた
「つまり、ここら辺は、差別部落として、差別区とされていた
多々羅も、製鉄所として、川を汚すので、嫌われたし
その名残として、ここら辺を流れる、あの川は、黒い川
つまりは、砂に砂鉄が、多いという意味だそうです
しかし、湧水も冷たいここは、鉄を冷やすに、丁度良く、刃物も盛んだったそうですが、今では、機械産業に押され、この有様です、服も刃物も、その人に本来合わせるべきだと私は、一人そう思いますね、最近の人は、どうにも、小さな箱に、閉じこもりたがりますが
体に合ったものを作るのは、機械ではなく愛だと・・」
「何の話だ」
私は突っ込みも、そこそこに
しかし、お邪魔して、話しましたが
結局、もしあの人が、もしですよ、家のおじいちゃんだとして、今では、家も、焼けてしまっていますし、写真嫌いの様でしたから、一枚も残っていないどころか、記憶に、少なくとも私はありませんが」
自分も見た事が無い
「しかし、どうして、写真を、撮って、あんな場所に、隠していたんでしょうか
おじさんは、世間に虐められても、それでも、やはり、クラスの人間を、憎めず、ああして、思い出として、残したのだろう、って、言ってましたけど」
その時、私は、何か、すべての謎が、解けたような気がしたが、彼女のフクロウのような丸い目玉を
いや、瞼、眼球皮膚か、顔だろうか、どちらにしても、なぜ、あの写真で、どうして、一人だけ、目が、開いていなのか、その答えが、出ていないことに、気が付いた
「お兄さん、今日も又、一連の流れで、カレー、ほうれん草のお浸し、冷ややっこですか、出来れば、湯豆腐のほうが、今日は冷えますし」
家の中、静かな回答を、重ねるうちに、些細なことは、徐々に、先の雪解けのように、川原には、何も残っていないように、徐々に消えて、砂の中に、おち蒸発したようである
家の祖父のように。
ー不要ー
「しかし兄さん」
深夜寝ていると、そんな声がした
「ここら辺は、盆地です、しかし、どうして、遺体の中には、見つからない人が居たのでしょうか
多少水の流れや、泥が、大量に流れ込んでも、本流の川とは違い
あくまでも、コップの水があふれただけのようなものです
コップの中の流れはない
それなのに、どうして、みな、小時間で、切り傷だらけになったのでしょうか
それも、自然現象は、計りしれず強いという話で方は付くのでしょうか
静さんだけが、生き残ったのは、偶然でしょうか、まさか、生き残っていたからこそ・・・
写真も、この時代なら、普通にカラーが浸透しています、まさか・・白黒の意味って」
私は、もう寝なさい、とそういうと、暗い中、小さな、寝息が、隣で聞こえた
外は、まだ、春になり切っていない
そんな、崩れた冬空のような春の出先のことである
はしした イタチ @zzed9
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