第2話 新しい推しとの出会い
流れるタイムラインの中には、多種多様なアイドルが写っている。
あ、この子顔がタイプ。でも声が好きじゃない。この子は笑った顔が好き。でも性格が違う。
推し活はやめられない。やめられるわけがない。生産性も何もない。推したところで何も変わらない。現実は変わらず悲惨なまま続いていく。
好きという気持ちが無駄に消費されるだけのこの行動を、私はいつまで続けるの?なんて、そんなクソみたいな言葉はいらない。分かってる。自分が1番痛いほど分かっている。
それでも、逃げ続けたい。だって画面越しじゃない誰か一人に好きを預ける好意はとても怖い。
いつか私は一人で静かに終わりたい。だから、その日が来るのを願いながら。
雑にスクロールを続ける指が止まった。アイドルが大量に写っているタイムラインに、一風変わった写真が写る。
__辛い現実に疲れたお前らを、俺らが幸せな仮想世界に連れてってやる。
くだらないキャッチコピーと、水色のごちゃごちゃした背景の中に写る人。
黒髪の中に水色と白のメッシュ。近未来をモチーフにしたキラキラした衣装を身に纏った彼。
ああ、ヴィジュアル系か。道理でメイクが濃いわけだ。アイドルばかりを見ていた目には違和感が生じた。
ヴィジュアル系、V系は確か独自のルールが凄くて、覚えるのが大変なイメージがあった。まあ、国民的アイドルの推しから離れたんだ、違うのに目を向けるのも気分転換になるかもしれない。
仮想世界....アドミニストレータ?へえ...この人ボーカルなんだ。
【スイ】と書かれたアカウント名の横には、ペンギンの絵文字が付いていた。メンバーカラーは水色、え、今のV系ってメンカラとかあるの?
私の知っていたV系とは少し違った、アイドル寄りの彼に興味が湧いて、アカウント名の近くにあるリンクをタップする。
歌ってみた、動画?あ、この曲知ってる、あ、声たっかい。
メンバーとのわちゃわちゃ動画、あ、背低いんだ。かわいい。すごい他メンバーさんとの身長差がある。
へえ、歌ってみた声と普段の声のギャップがある、声低めなんだ。ていうかなんかぼけーっとしてる。
あ、あんまり話入らないと思ったら急にテンション上がりだしてる。変なの。かわいい。
仮想世界アドミニストレータのMVもある、....ふうん、こんな感じか。他に無いかな、ええと。
次々に表示される新しい世界に、取り憑かれたかのように画面を見ていた私を現実に押し返すように、ぱっと表示される、充電の残量を知らせる通知。
気付けばもう日を回っていた。明日も仕事だしとりあえず寝ないと。
私は今日見つけたそのスイさんを、取り急ぎフォローしてから眠りについた。
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