大好きな君に捧げる洗脳ハーレム学園

アカアオ

大好きな君に捧げる洗脳ハーレム学園

 ある日突然、人間を好きなように操る力を手に入れた。

 いわゆる洗脳能力だ。


 どうして私にそんな力が宿ったのか?

 どんな仕組みで他人を意のままに操っているのか?


 そんな事は正直言ってどうでもいい。

 だってこんな非常識的な事、ただの女子高生が完璧に理解する事なんて不可能なんだから。


 高校生が持っているのは若さ。

 若さとはそれすなわち無知であり、行動力と夢にありふれた存在である。


 だからこそ私は、この洗脳能力を使って毎日を過ごす事にした。

 私の大好きな人が望む世界を作る為に。


 ◇


 「おはよう、米満よねみつ君!!」

 「今日も綺麗ね米満よねみつ君」

 「フンッ。朝から鼻伸ばしてんじゃ無いわよバカ」


 私には好きな人が居る。

 その人の名前は天井米満あまいよねみつ


 今クラス中の美女から言い寄られている彼の事だ。

 

 彼を好きになったのは図書館で初めて出会った日の事。

 同じライトノベルに手を伸ばしたのがきっかけだった。


 趣味が合うというのは不思議なもので、たったそれだけで心地いい空間が即座に出来上がる。

 私は放課後毎日彼と好きなライトノベルの事について語っている内に、彼の事も好きになってしまった。


 「あ、あのぉ……胸が当たってるんだけど」

 「あらら……でも、米満よねみつ君になら」

 「何ハレンチな事言ってるのよ!!この煩悩バカ!!」


 そんな大好きな米満くんが、クラスの女子たちとイチャイチャしている。


 それを私は遠くの席から見つめている。

 米満よねみつ君の顔だけをじっと見ていた。


 照れたり、鼻の下を伸ばしたり、自慢げだったり、誰かを本気で心配していたり。

 彼の顔色がコロコロと変わっていく。


 でも、全部全部楽しそうな顔だ。

 男子生徒も嫉妬を言わず、クラスの美女達とイチャイチャ出来るこの空間に、米満よねみつ君は満足しているのだ。


 「よかった」


 クスッと笑いながらそんな言葉が小さく漏れた。

 

 米満よねみつ君の笑顔が見れただけで報われた気分になる。

 この学校の関係者全員を洗脳した甲斐があったというものだ。


 「えっと……この次米満よねみつ君が喜びそうな展開はー」


 朝はクラスの女子と。

 昼は他の暮らすでボッチになっている女子と。

 掃除の時間に用務員のお姉さんと。


 今日の放課後、米満よねみつ君には補修があるからその時には女教師二人と。

 補修が終わった後は、米満よねみつ君が気に入ってそうな女の子二人とデートするのが良いだろう。


 もし、米満よねみつ君が図書館に来て私と話してくれるのなら、いつも通りの楽しい時間を過ごして、それとなく好みの異性のタイプを聞いてみよう。


 学校の男達からは嫉妬心を抜いておこう。

 外敵ストレスのあるハーレムなんて米満よねみつ君は望んでない。


 悲劇による状況の起伏なんて小説の中にだけあればいいんだから。

 幸福な状態が永遠に続くだけ。

 現実に求められているのはそんなストーリー展開だ。


 「米満よねみつ君。私頑張るからね……君はそのまま、何も知らないまま、私の愛を受け取って」


 私にとって、愛するとはこういう事。

 好きな人が一番喜ぶ状況を作るために奔走することこそが愛なのだ。


 『もう私は貴方のママじゃ無いわ。私は真に見つけた運命の人と人生をやり直すんだから、貴方はもう関わってこないでね』


 恋人関係?

 結婚?


 そんな物でどうして愛を証明できるだろう。

 そんな名ばかりの特別な関係を結んだって、大好きな人を笑顔に出来る保証はない。


 『大丈夫……お父さん、もっと仕事増やして頑張るから。おまえが心配することは何も無いんだよ』


 好きな人を束縛する事を愛と言うのなんて3流も良い所だ。

 心の叫びを恥ずかし気も無くあらわにして、大切な人を縛って衰弱させて気を使わせる事の何処が愛と言うのか。


 私の愛は、令和の世の中で語られるお花畑な概念とは違う。


 大好きな人が喜ぶ環境を陰ながら用意し、大好きな人が笑顔になっているのを見てほほ笑むのが真実の愛なの。

 決して迷惑を掛けず、自分の気持ちも押し付けず、大好きな人が笑顔になれる毎日を作り出すのが真実の愛なの。


 「米満よねみつ君……大好きだよ。私、今度こそ間違えないからね」


 『貴方が変に関わるからあの人との関係もこじれちゃったじゃない!!言ったでしょ!!私の新しい人生に首を突っ込んでこないで!!」

 

 「だって今の私は真実の愛を知っているもの」


 『どうして俺の人生こうなったんだ……死にたい……でも死ねない……あの子を一人残すわけにはいかないんだ』


 「次こそは、大好きな人を笑顔にしてみせる」

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