ハロウィンSS

「トリック、オア、トリート!」

「茜、可愛いよ」

「は、早くお菓子ください!じゃないと、いたずら、しちゃいますよ……?」


 ハロウィン。大樹が家に帰ると茜が黒いとんがり帽子と黒いマントをつけていた。

 右手には風船の黒いスティックが握られており、どうやらそれは杖らしい。


 26になってもあまり成長した様子のない茜は魔女の仮装をしたらしい。

 成長していないと言ってもただ背が伸びないだけで大人の雰囲気は醸し出しているのでちゃんと魔女の仮装が仕事している。


 大樹はカバンを開けて中身を漁る。

 そしてお菓子を取り出して茜に手渡した。


「大樹君高校生の時から思ってましたが、茎わかめ大好きですよね」

「まあな。一口で食べれてかつかさばらない。それに美味しい」

「高校一年生の時のハロウィンで美羽さんに茎わかめを渡した時はびっくりしましたよ」

「エクレアを学校に持ってきてた茜には言われたくないな」


 なんだかんだで付き合った時から十年ほど経っても互いの思い出は記憶に残っているもので、二人で茎わかめを齧りながら思い出話に花を咲かせていた。




「じゃあ、俺からも。トリック、オア、トリート。お菓子くれないとイタズラするぞ」

「えぇ〜。私今お菓子持ってないですよ〜。一体どんなイタズラされちゃうんでしょうか」

「お菓子箱あるよね?」

「そんなものはないです」

「イタズラするけど」

「大樹君にイタズラされるならやぶさかでもないです」


 茜はどうやらイタズラを所望しているらしい。お菓子箱がないという白々しい発言をして、むしろ期待するかのような眼差しをむけてきた。




 イタズラとして寝る時にベッドに押し倒すだけ押し倒して何もしなかったら翌日から一週間本気で拗ねられたのはまた別のお話。



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