2. みんなは俺の過去を知り得ない
「星川くんの余命だけ、確認してきてくれる?」
成田さんにそう言われたけど、どうせ助かったらしいし、もういい。
もう、人の余命なんて、見たくないんだ。
学校にさえも行きたくない。必ず、誰かには触れてしまう。
そろそろ俺がいじめられた理由を聞きたいって?
俺は…あの日、余命が見えると知る日までは、色々な人と話し、遊んで、楽しんでいた。
でも、余命が見えると知った後は、誰かと話すと必ず身体に手をかけられ、余命が見えてしまうって気づいたんだ。
それって、結局、みんなが知らない間に自分の運命を俺に見られてるってことになる。俺だって勝手に運命を知られるなんて嫌なんだ。
それに、俺自身も、人の運命は知りたくなかった。だから、誰とも話さなくなっていった。今は俺の第二の人生…いや、第一の人生だ。小学三年生までは、まだ完全な俺ではない、第ゼロの人生だった。
そして、周りの人たちからは、「洸樹が無視する!」そう言われて、色々なやり返しを受けていた。いじめと言っても王道だ。机に落書きされたり、物が隠されたり。こんなしょぼいいじめ、どーでもいいわ、って最初の方は思っていた。
でも。
そのいじめがどんどんとエスカレートしていった。
俺が耐え切れなくなったのは、小学五年生の、ある冬の日だった。
「大山、あんなやつと喋んなくていいんだよ」
夕方、昇降口を出て、いつものように一人で帰ろうとしていた。
でも、体育館裏から、そんな声が聞こえてきたんだ。これを言っているのは、俺をいじめてくるグループのリーダー、滝瀬だ。
「…だって、洸樹は大切な幼馴染だから」
大山、と呼ばれた大山奏は俺のたった一人の幼馴染だ。俺が周りと話さなくなっていった時も、奏一人だけは、俺の事情を全て聞いてくれて、分かったうえで話す時に俺の身体に触れないでいてくれた。
「それに、俺は洸樹のことを、友達として一番好きだk…あ゛ぁっ」
奏がうめき声をあげた瞬間、隠れていた俺は壁の影から飛び出した。
やっぱり、奏は腹を殴られていた。
「おぉ! さっきまで話してた人の張本人じゃん! 良かったなぁ、大山がこうやって言ってくれてたぞ! 洸樹が大事、だってよ! はは…」
「うあぁっ!」
渾身の力を込めて腹パンした後、頬を平手打ち。
「俺へのいじめならいくらでも受け付けるけどよ、奏に手ぇ出したら許さねぇよ」
それだけ言って、俺は奏の手を引いて歩き出した。
「奏、受験しよう」
「え?」
それから何日か経ったある日、周りに滝瀬たちがいないか確認してから、奏に切り出した。
「県立中。ここなら誰もほとんど来ない。滝瀬は根っからバカだから絶対ムリ。二人でここに行こう」
奏も滝瀬たちとはもう会いたくもないと言っていた。だから俺はインターネットで色々調べて、その結論にたどり着いた。
「…それ、いいかもな」
「でさ、二人で受かったら、卒業式は制服!ここ周りと違う色の制服だから、すごい学校なんだってすぐに分かる。滝瀬にだって、最後に見せつけられるよ」
「おぉ!いいじゃん、そうしよう!」
そう言って俺たちは同じ塾に入り、猛勉強をして、二人で合格し、中学校に通った後、県立高校に進学をできたわけだ。
だから、もう余命を見るなんて懲り懲りだ。人と話すのも懲り懲りだ。そのせいで誰かが死んでも、俺は知らない。俺は……俺は……君の運命は……知らない、知らないから。
そう自分に言い聞かせることで、最初の内は済んでいた。
ヨメヨメ!~余命を読め!力を合わせて人を助ける⁉~ こよい はるか @attihotti
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