第6話 ここ、さすがに寒いです!
そんな物語をわたしの名まえで発表するわけにはいかない。だから、その物語は「くれなえ」に譲った。
もう一本は、現代のパリにアルセーヌ・ルパンがまだ生きているのではないか、という疑惑をめぐるミステリーだった。
しかも、「サ、サクレクール……」と言って気絶する日本人というのが、そのルパンの設定を使って、一世を、いや、この半世紀の日本を風靡する作品を創り上げた日本人のマンガ家かも知れない、という雰囲気を匂わせる作品になっていた。
しかも。
二万字とかあるんですけど!
これも、わたしには書けない。
「だから、今回は、両方ともくれなえさんで発表してください」
と、深夜一時ごろにメッセージを送った。
そして、次の日、昼。
一人であの定食屋に行ったわたしは、その大容量ファイルをやり取りできるSNSに着信があるのに気づいた。
発信したのは朝の九時台。
「くれなえ」からだった。
「『アルセーヌの透明な影』を、ささっちゃんさんのスタイルに書き直してみました。(笑っている女の子の絵文字) だから、こっちをささっちゃんさんのところで公開してください」
「ここ、さすがに寒いです!(震えている女の子の絵文字)」
そして、あの眼鏡っ子スタンプ。
はいいいいっ?
いま、あのときの被災地にいるんだよね?
……何やってるの……?
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