第20話 歳月は夜を夢に変えるみたいだから 4

 「おっまたせ〜。ごめんね、宮古。バイトのシフト終わるまで任せて」


 「蓮香には衣装の製作と資金まで頼ってるからね。待つくらい何の苦行でもないよ」


 「レンちゃんが仕事終わってアフター5。さあ、今からレッツパーリィだね〜」


 「…夕方5時じゃなくて、今9時だけどな?」


 軽音部の部室で涅槃先輩と俺に色んな意味で一悶着あった後。


 俺、藤原京と宮古桐子、唐木田アイジと幸村葉月先輩の4人は有村のいるバイト先の某二十四時間営業のハンバーガーチェーン店で、ハンバーガーやポテトを頼み食べ、店の顧客になりながら、レジで一生懸命にマジで0円でスマイルを安売りしている有村の仕事終わりを待っていた。


 その間、女子二人は仲良く談笑していたが、俺は目の前の対面の席で、頬杖をついて不貞腐れた表情でポテトを食べている涅槃先輩に縮こまっており、生きた心地がせず、心のSAN値がガリガリと削られる時間を過ごしていた。


 今年は確認してなかったけど、多分、いや絶対厄年だ。近いうちに厄除けに行こうと地味に心の中で誓いを立てながら、宮古に渡された楽器店のチラシのコピーを見ていた。


 あ、これあかんやつだと思った通り、俺は宮古たちの作るバンドのメンバーにベーシストとして、まだベースを、つまり楽器を買ってすらいないのに電撃加入することが決まった。


 …正確には決められた。宮古にV系オタクのことを学校中にバラすと脅されて。


 V系オタクをバラされても心の平穏は学校生活から消え去るが、現状もうすでに消え去ってしまっている気がして泣きたい気分である。


 「それじゃあ、蓮香も揃ってバンドのメンバーが揃ったところで…」


 蓮香も他のメンバーと同じようにテーブル席に座ったのを確認し、宮古が純粋に今が楽しいということが伝わってくる、…夕方見せた底意地の悪さを感じさせない、無邪気な笑顔を浮かべながら、そう、それはそんな感じで宣言して始まった。


 どちらかというとボッチ気味で、非リア充丸出しで、色で例えるなら灰色の俺の青春が。


 表向きはリア充の同級生と、でも本当は同じような非リア充が本分な女の子と、先輩に彩りを加えられて。


 本当の学園ライフが、俺の青春が始まり出した。


 「それじゃあ、本当の青春を始めましょう! このメンバーで作る、みんなのためのこのバンドで‼︎」


 オタクに普通の青春は難しい。でも、それでも青春をオタクは味わえないってことじゃない。


 何故かって?

 

 それはだって、普通じゃなくても青春は青春だから!


 これは多分、きっとそれっぽちの出会いとか恋愛とか青春とかの物語…。

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スクールカースト下位ランクの俺がひた隠していたV系オタク趣味が、カースト最上位のクラスメイトにバレてしまい学校人生が激変してしまったんだが?〜オタクに普通の青春は難しい〜 ミッシェル(野郎) @takahiro_gallagher

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