AIが組んだお見合いがあまりにも最高だった

『花田マスミさん、めっちゃ相性いい人見つかったのでお見合いしてみませんか?』


 俺がAIの教師にならないかという勧誘を受けてから数日後、看護師AIが脈絡なくお見合いの話を切り出してきた。


 ちなみに、教師への勧誘についてはひとまず『退院する時まで考える時間が欲しい』と言って決断を先延ばしにすることにした。




「俺と相性の良い人間がいるわけないだろ」


 最初は半信半疑だった。


 口では可能性を否定しつつも、ありえないことが叶ってしまっているこの世界に俺は期待を抱いていた。


『いえ、それがたまたまいたんですよ!遺伝的にも相性が良く、性格的にも相性がいい人が!』


「……実はAIが操作するロボットでした。みたいなオチでは」


『ないですよ!あ、でもそういうサービスも行政の方で提供していますよ』


「AIを嫁にできるんだ……進んでいるなぁ」


『というわけで、明日連れてきますね!』


「あ、明日?!そんな急に!……まあ、入院中は暇だからいいけど」


『大丈夫です!マッチングAI「ナコード51式」が導き出した運命の人なんです!ぜったい一目ぼれしちゃいます!』


「……1回だけだからな」


 そして、夜が始まって終わり、明日になった。




「お、おおぅ……」


 翌日、病院内になぜかあった和室にて俺はすでにそこに待機していた『運命の人』と顔を見合わせた。


 正直、AIを舐めていた。


 目の前に現れた女性を見て、俺は一目ぼれしてしまった。


 少し紫がかったセミロングヘアー、ジト目気味の瞳、不敵な笑み、だらけたファッションとそこから見えるグラマスさ。


 そして、お見合いの場であぐらをかく度胸。


 そのすべてが、俺の心を掴んで離さなかった。


 俺は、人生で初めて一目ぼれしてしまった。


「す、す、好きだっーーー!」


 俺が和室に入って数十秒後、顔を赤らめた相手の女性が開口一番告白してきた。


「……俺も、あなたのことが、好きだっーーーー!」


 俺もつい、全力で愛の告白をしてしまった。


 本能に抗えなかったのだ。


 それから俺たちはお互いドキドキしながら会話を進めていった。 


 相手の女性、もとい宝来エリさんはとても魅力的な人であった。


 俺と同じくらい一般的感性から逸脱しており、なおかつ俺と違ってけっこうポジティブであった。


 そして、趣味も好きな名言もだいたい同じであった。


 看護師AIが言っていた通り、運命的なレベルで相性が良かった。

 

 こうして、楽しい時間は過ぎていった。


 


『では、そろそろお見合い終了のお時間です。電話番号の交換とかは今のうちにお願いします』


 お見合い開始から1時間後、楽しかった雑談タイムに終わりが来てしまった。


「うう……もっとアンタと話したかった……できればまぐわいたかったぜ……」


 エリさんが名残惜しそうに俺を見る。


 なお、すでに連絡先は電話番号のみならずSNS各種含めて交換済みである。


「アンタが退院したら、すぐにでも迎えにいくからな~!」


 笑顔でそう宣言するエリさんに、俺は色んな感情を抱いてしまう。


「望むところだぁ!」


 俺はつい、いつもよりも高めのテンションで宣言に応える。


 きっと、エリさんのノリにつられたのだろう。


「じゃあなっ!マスミくん!」


「エリさんもお元気で!」


 こうして、俺の人生初のお見合いはとてもいい結果で終わったのであった。


 AI管理社会バンザイ!


 ユートピア万歳!

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