31歳、童貞。希望は、接吻

二十首連作部門

失恋は戦争である愚かにも真珠湾をば爆撃したり

一回も使わぬままにコンビニが潰れた私の心のように

4年前「生まれ変わったら死にたい」と記せし日記が我を慰む

人生でいちばんつらい瞬間をゲーテであれば何と語るか

そのことがタブーであるってことさえも匂わさせないぐらいのタブー

墓場まで持っていくから知りたいなら墓参りとかしてくださいね

誰かから頼られるってことをただ働きがいと見定めていた

デートとかキスは無理でも握手なら頼めば何とかなった気がする

もう二度と重なることのない針を残したままで時計は進む

こんにゃくが売ってる一番近い店求めて結局いつもの店へ

自宅から見えるあべのハルカスにバーカと告げてやりたくて、暮れ

新年度骨髄バンクに登録す　合法的に会社休みたし

責任感ゆわえて柱にくくりつけサンドバッグにしてやりたいが

世界からいなくなっても円滑に業務を回すためのお守り

大根をイチョウ切りした回数も500くらいになっただろうか

遅刻せる連絡はもう我に来ずバイトの子らの会話で知りぬ

女子だけのグループになる確率の計算で勝つ しかも暗算

一日の休日よりも一言のあの子の声で頑張れるのに

4万字悩んだ末のセクハラよ始末書なんて字数オーバー

玄関を照らす灯りの色形知らずに生きてた　電球切れるまで