学生トーク「ささくれ編」

山田 武

学生トーク「ささくれ編」



「──ささくれ、についてどう思う?」


「…………ささくれって、なんだ?」


 いつものように話題を振られたのはいいのだが、今回は俺の方に問題があったようだ。

 しかし学生としてこれまで生きてきた中、ささくれという単語を聞いたことが無い。


「あー……えっと、指の周りの皮膚が剥がれちゃうことってあるだろう?」


「ああ、それはあるけど…………えっ、まさかそれが?」


「そう、それがささくれ。言葉は知らなくても、多分ほとんどの奴が経験したことのある現象だと思うぞ」


「へぇ、これささくれって言うんだ」


「……って、今あるのかよ」


 まあ、知らなくても世の中やっていけるわけだし、ささくれを知らなくても少なくとも俺は生きてこれた。


 問題はこれについて、いったい俺たちはどういった会話をすればいいのか。

 いつものようにスマホを……という流れをアイツがなぜか止める。


「いや、今回は俺がやる。なんか、お前の反応を見ていた方がいい」


「……別にそんなことないと思うけど、まあ面倒だしよろしく」


「おう! ……えっと、ささくれっと」


 休み時間で調べられることは限られているのだが、いったい何を調べるのか?

 その言葉の由来? それとも他にどんな意味があるのか?


「──それで、何が分かったんだ?」


「…………そもそも取るのって、菌とかが入るからやらない方がいいらしい。やるなら根こそぎがいいんだとか」


「……そういうの!?」


 まさかコイツ、いきなり治し方とかそういうのを調べたのだろうか?

 いやまあ、ありがたいっちゃありがたい情報だけれども!


「あとささくれって二種類あって、指と爪らしい。爪の方は横に出来るヤツ、でもこれはいわゆる小爪って言う爪の一種なんだと」


「そっちの感じが最初に来ると思ってたよ。でもさっきの情報の続きが凄く気になる」


 これまでささくれについてまったく知らないでいた俺なので、対策なんてものも当然把握していない。


 ……今までは適当に引き千切っていたりしていたが、どうやらそれは不味いようだ。


「他にも──」


「そういうの良いから、とりあえず治し方についていろいろと調べてくれ! いろんなサイトを見れば、それっぽいのもあるかも!」


「いや、ネットってそうやって情報を錯綜させると何が正しいか分からなくなるんじゃないか?」


「何もしないでただ引き千切るよりマシ!」


「お、おう……すぐ調べる」


 そんなこんなで、今日は休み時間の度にささむけについて調べることに。

 ──みんなも、ささむけを適当に引き千切るのは止めような!


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