第12話 世界で僕らだけ
「これで、全員が集まったわけだが……、結局何をする為に集まったんだ?」
そうだ。真人の至極真っ当な疑問に、そう言えばそうだな、と反射的に僕も首を傾げていた。
そもそも、今の仲間集めみたいなことになったのも、きっかけは姫花の訪問だった。
姫花が僕達に会いに来た理由を訊ねていたら、姫花のことを心配していた莉奈が仲間に加わって、姫花が世界を疑うきっかけを聞いていたら、同じことを考えている人が他にもいると話を聞いたのだ。
せっかく、世界を疑う理由を話すのなら、その理由で既に集まっていたメンバーを収集して話そう、というのがこの集まりであり、姫花達の紹介あっての集合だった。
「……そうだね。僕も今、実は目的を決めずに、ただ同じ考えの人に会いたいと集まっただけなことに気づいたよ」
全員集まってから気づくにしては、遅すぎる話だけれど。
何の為に集まるか、ということよりも、同士を集めることが目的になっていたのだから、仕方がない。
「そもそも、その同じ考えの人ってやつも、今のところ曖昧過ぎる。姫花達の四人は、既にそういう話をして集まっていたのかもしれないが……」
「うん。僕と真人は、まだ皆のことを何も知らないからね」
「世界をおかしいと思ってる。これを前提に、そう思うようになった根拠でも、一人ずつ話していくか? 俺達は、お互いのことをまだ何も知らな過ぎる」
仕切り上手な真人が、率先して会話の流れを作ってくれて助かった。
「あー、だからつまり……まずはどうして、
真人の言う通りだ。
『世界がおかしい』
この言葉だけが、今の僕らを繋ぐ合言葉のようなものだけれど、それぞれが何を示しているのかを知らなければ話し合いにもならない。
それに、根拠がないのなら、姫花達のやったような仲間集めなんてものに、わざわざ反応したりしないだろう。
「そうだね。どうしてこの世界がおかしいのか、どこがおかしいのか。僕達が、同じ事に疑問を持っているという確証はないからね。皆の意見を教えて欲しいな」
真人に賛同するように発した僕の言葉を、戸惑う莉奈が遮った。
「それはそうなんだけど……、そんなこと急に言われても出てこないって」
それもそうか、と、僕は姫花に昨日話していたことを話してもいいかと了承を得ると、簡単にかいつまんで姫花がこの世界を疑うきっかけになったという理由を話して貰うことにした。
「…………と、いう訳で、私の日記から消えている人がいる、っていうのが、この世界を疑うきっかけなの……。その、信じてもらえるか、わからないけど……」
「信じるよ。昨日も言ったけれど、僕らも記憶から『消えてしまった人』がいることを知っているんだ」
「……ありがとう。でも、知っているって、どういうこと?」
「そうだね。それじゃあ、それを話す前に、姫花の話をふまえて、まずは僕の推測から話そうか」
もちろん、ただの思いつきで言ったわけではない。
ただ、この流れなら、僕から繋げるのが一番わかりやすいのではないかと思っただけだ。
カラオケでもそうであるように、結局全員が順番に歌うのだとしても、最初に歌うのにはまた違った勇気が必要になる。
そして、最初の人が上手すぎても下手すぎても、その後の人のモチベーションに関わってしまうこともある。
正直なところ、器用に空気を読んでくれる真人の方が、会話をいい流れに出来るかもしれない。だけど、真人がこのことを考えたきっかけは僕なのだから、方向性は僕自身が示した方がいいような気がしたのだ。
「そうだね。僕がおかしいと思っているのは、姫花と同じで記憶についてだったんだ」
「恭哉の記憶にも抜けがあるの? あれ、でも忘れちゃってるんなら、その事すら普通は気づけないはずで……。んん?」
「莉奈は、親の記憶があるかい?」
「親?」
「父や母、僕達をこの世に生み出した存在のことさ」
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